第56話 銃・最終形態

 ドルリー国の付近に、怪しげな空間が広がっていると、ギルドで情報を得た。


 女神のくれた通信と、まったく同じ位置だ。


「ウニボー、間違いないな」

「ここから、人間と魔族のものが混じったオーラを感じるモジャ。不気味モジャー」


 ウニボーが、震えている。それだけの敵が、この先にいるのか。


「祖父の鬼龍きりゅうが、あの世界の向こういる。クニミツは本当に、ついてきてくれる?」

「当たり前だ。オレが行かないでどうする?」


 モモコだけに、身内殺しの業なんて背負わせたくない。


「ありがとう。クニミツ。私が巻き込んだのに」

「オレが望んだんだ。地獄だろうと、ついていくぜ」


 各々の銃を、最終チェックする。


「杖の延長って聞いてから、弾数とか気にしなくてよくなったのはいい感じ」

「だな。ようやく、銃もサイバーパンクらしくなってきたしな」


 これまではデザイン的に、無骨な物が多かった。今ではグッと近未来的なフォルムになっている。


「別れのあいさつもせずに、出てきちまったな」


 今回、ルイとピエラは連れてきていない。


「まだ永遠の別れだと、決まったわけじゃない。笑って帰ってくれば、許してくれる」

「だといいがな」


 龍洞院りゅうどういんが敵である以上、無関係の二人には参加は控えてもらおう。


「行くぜ!」

「ちょっと待て。キミらだけで行く気か?」


 後ろから、声をかけられた。


 ルイの声に、オレは振り返る。ピエラもいた。


 何も言わないで、出てきたのに。


「ボクたちは戦わないなんて、言っていないわ。最後までついていくわよ」

「ピエラのいうとおりだ。わたしたちは一蓮托生。同じ釜の飯を食った仲間じゃないか」


 二人も、最終決戦に参加するという。


「身内だけの問題だぞ? 無関係だ」


 オレがいうと、ルイは首を振った。


「ワタシだって、同族を殺した。身内も同然さ」

「ボクだって、先祖にムリヤリ過去の罪を償わせているわ。似たようなことよ」


 話を聞く限り、二人に譲る気はない。


「それに一番無関係なのはクニミツ、キミだろ。モモコと結婚はしたが、誰とも血はつながっていない」

「ルイ、ピエラ。お前たち」

「さあ行こう。この先に、魔王を復活させようなどという主力がいるのだろう? 魔将だかなんだか知らんが、蹴散らしに行くぞ」


 ズカズカと、先陣を切る。


「お前が先頭かよ?」

「だってワタシは、壁役タンクだからな」


 もう、笑うしかない。


「仲間が一番、やる気勢じゃねえかよ」

「そりゃあそうよ。ボクたち、この世界で生きているのよ。そんな街をおびやかす存在は、この手で倒さないと」


 そうかもな。


「じゃあ、ご先祖様に結婚のごあいさつでもしに行くか!」

「結納品は、鉛玉でいいよね」


 うわ、発言がことごとく物騒だ。


 では、気を取り直して討伐に向かう。


 魔将・鬼龍の根城は、七〇年代の映画に出てきそうなマフィアの屋敷みたいだ。


「んだてめええ!」


 オレは、銀色の銃を魔族たちに向けて放った。


 銃が先端で形を変えて、特大のファイアーボールを撃ち出す。


 魔族は炎に包まれながら、天井まで吹っ飛んだ。


 それが口火となって、戦争が始まる。


 モモコも手持ちの黒いサイバー銃をマシンガンモードに変化さえ、一斉掃射した。


 ヨロイで身を固めた魔族が、蜂の巣になっていく。


 白い壁や柱に、血がこびりついた。


 大型の魔物が、壁を突き破って襲いかかる。


 銃のモードを切り替え、モモコは魔物の脳天を貫いた。ビームライフルか。それも、かなり高火力の。

 オレ、いらないかも?


「フォース・スマッシュ!」


 ルイも、剣を振り回す。剣から衝撃波を発し、縦一列にいた敵を真っ二つに。タンクとしての仕事も忘れない。オレたちが射撃しやすいように、シールドから魔術障壁を張って敵からの攻撃を防ぐ。


「行きなさい、スケルトンたち!」


 ピエラが、スケルトン共を喚び出した。


「スケロクの逝き様、とくと見せつけてやりまさあ。ピエラの姉御!」


 上位種リッチとなったスケルトン夫妻が、さらに子分のスケルトンを召喚する。もう一万を超える大軍団となっていた。物量で、魔族たちを押しのけていく。


「おおっと!?」

「クニミツ、後ろモジャ!」


 背後からも、大型魔獣が現れた。


 モモコがビームを撃っても、ピエラが冷凍レーザーを撃ち込んでも、硬い装甲にビクともしない。


「ヤロウ!」


 武器が変形するのは、モモコだけじゃねえっての。


 オレは、銀色の銃を突き出す。グレートソードの柄と融合させた。


「くらえ、チェインガン!」


 剣が縦に割れて、エネルギーを走らせる滑走路となる。


 さらに大型化したファイアーボールを放って、相手のノドを撃ち抜く。


 首から先をなくした魔獣が、崩れ落ちた。

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