第52話 魔王軍再び

 王都へ直接、魔王軍が攻めてきたらしい。


「ドルリーの王よ、おとなしくその血を魔王に捧げるがいい」


 黒騎士ヴリトラが先陣を切って、城に向かっている。


「そうはさせぬ!」


 騎士隊長ユーリングが、ヴリトラの前に立ちふさがった。


 アニエスが、ユーリングの加勢に入る。


 モモコそっくりのクノイチ・アニエスと、ユーリが連携を取ってヴリトラと渡り合っていた。あの二人、相当強い。


 どうする? ボスを倒してザコの意欲を削ぐが、街を襲っているザコを殲滅するのが先か。


「クニミツ、ザコは我々が!」


 ルイが、剣を抜く。


「ボクたちに任せなさい。スケロク、スケチヨ、出番よ!」


 ピエラが、二体のスケルトンを召喚した。


 妙に、装備品の色が変わっている。


「あれ、ボクが契約したのは二体だけよね? 二八三体もいるわ!」


 スケルトンの夫婦以外にも、やや細身のスケルトンが混じっている。なんだこいつらは?


「ピエラがレベルアップしたモジャ。そのおかげで、スケルトンが『リッチ』にランクアップしたモジャ」


 リッチとなったことで、スケルトン自体がアンデッドを呼び出せるようになったとか。


 そういえばダンジョンでレベルアップする際、スケルトンたちも助っ人で呼んだんだったな。


「あっしで一五一体、家内が一三二体を指揮しやす」


 アンデッドの上位種「リッチ」となったスケロクが、説明をする。


 このスケルトンたちは、今まで寺院で助けられなかった者たちの成れの果てらしい。武器も、今までオレたちが拾ってきたアイテムを装備している。


 オレたちのやってきたことは、ムダではなかったのだ。


 骨の色も白いものは一人もいない。それぞれカラーリングされていて、敵味方の見分けが付きやすくなっている。


集合アッセンブルっ!」


 スケロクが雄叫びを上げると、スケルトンたちは無言で手を上げた。


「野郎ども! ゆくぞ!」


 合図とともに、スケルトンたちが持ち場に散っていく。


 街を蹂躙しに来たモンスターたちが、スケルトンたちに圧倒されている。


 えげつない。質量ともに、魔物たちが相手になっていなかった。


「お話になりませんえ」


 全体攻撃魔法で、スケチヨが周囲の魔物を瞬殺する。


 これは、ルイたちの出番もなさそうだ。


「モモコ、オレたちは、ヴリトラに直接攻撃する!」


 オレとモモコが、ヴリトラと対峙する。


「ユーリ、アニエス。お前たちは、姫と王を保護してくれ」

「そうさせてもらう!」


 アニエスたちには、城に引っ込んでもらった。


「いつぞやの弱き者たちではないか。数を増やした程度で、我々を押さえられるとでも思ったか?」

「やってみなけりゃ、わからんさ」

「たしかに。では今度こそ始末してくれよう! あのクノイチのおらぬ貴様らなんぞ!」


 ヴリトラがまた、剣から衝撃波を放った。


「バカの一つ覚えってんだ。そういうのは!」


 オレは、グレートソードで打ち返す。


 衝撃波が、ヴリトラに襲いかかる。


「なんと!? ほほう、少しはやるようになったか?」


 手で受け止めただけで、ヴリトラは衝撃波を打ち消した。


「だが、その程度で勝ったと思われては困る!」


 お次は、接近戦で突撃してくる。


「クニミツ、任せて!」

「ホホウ、クノイチの血縁者か? よう似ておる。オーラはそちらの方が強いが」

「あっちが色違い」


 やはり、魔物は相手をオーラで見分けるようだ。


 巨漢のヴリトラに対し、モモコも負けない。逆手に持った剣を振り回し、ヴリトラの巨大な鉄塊を受け流す。もう片方に持ったレーザー銃を、ヴリトラの首に撃ち込んだ。



「ちいい!」


 さしもヴリトラも、ノドを焼かれて後退する。


「人間ごときが!」

「その割には、押されているじゃないか」

「ここからが、本番よ!」


 ヴリトラが、剣を天へと突き出した。


「真のヴリトラの姿、とくと見るがよい!」


 なんと、ヴリトラが剣を自分の腹に突き刺す。


 まさか、自害する気か?

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