第51話 サービス精神旺盛すぎる姫

 この世界の銃が、魔法の杖扱いだったとは。めんどくさい工程を挟んで、魔法を撃ち出してんのな。


「変に銃を組み立てたところで、理屈がメチャクチャになりそうだな」


 その証拠に、ピエラは銃の内部構造を、瞬時に魔法技術に転用している。使い慣れている方を選んだ感じだ。


 その後もオレたちは、ダンジョンに何度も挑戦をした。


「初心者向けダンジョンって聞いていたのに、やたら歯ごたえのあるフロアになったな」

「やられっぱなしは、イヤだったんでしょうね」


 ピエラが、先祖の言葉を代弁する。


 だが、そのおかげでレベル不足が補えた感じがした。ケガの功名ってやつか。


 とはいえ、レベリングも楽ではない。周回していくうちに、レベルアップも頭打ちになってきた。


「ここらが限界か」


 半日でここまでレベルを上げられたら、上等である。


「ねえ、ちょっといいかしら?」

「どうぞ、ピエラ」

「スケルトンたちも、潜らせたいんだけど?」


 ピエラが言うには、スケルトンたちもレベルが上がるのかチェックしたいという。


「いいな。攻略させてみるか」


 そういえば、スケルトンが実戦で戦ったところを、見たことがなかったな。


「やってみるわね」


 オレたちも、ピエラについていく。


 ダンジョンに潜ってすぐ、ピエラがスケルトン二体を召喚した。


「んじゃ、行きますぜ」


 スケロクが、拳を胸の前で当てる。


「行きますえ」


 妻のスケチヨが、杖を振り回した。


 現れたのは、敵のスケルトンである。


「ザコは引っ込んでてくれや!」


 飛び蹴りの一撃で、スケロクはスケルトンの群れを破壊した。


 さすがに、なめ過ぎか。


 スケチヨは、次に出てきたスライムを、範囲攻撃魔法で焼く。


「もっと強いのは、いまへんのかえ?」


 スケルトン夫婦の要望に答えたのか、オーガや式神のキツネなどが現れた。


 それさえも、スケルトン夫婦は蹴散らしていく。


「いやあ、いい汗をかきやした」


 ダンジョンの外へ出て、スケロクが額を拭う。


 スケルトンのどこに汗腺があるのかわからないが。スケルトンなりのジョークなのか?




 いい狩り場を紹介してもらったお礼に、オレたちはレティ姫たちに料理を振る舞う。

 といっても何も用意していなかったから、バーベキューだが。



「あー、ステキ。こうやって立ち食いも悪くないね」


 大口を開けて、姫が肉にかぶりつく。


「貴族様に見合うメニューじゃなくて、すまない」

「いいのいいの。気を使わないでよ」


 窮屈なテーブルマナーなどは、正直姫の性に合わないという。


 この姫なら、そうだろうな。


「それより、男の意見が聞きたいな。男子ってさ、だいたいの場合かなりウブなわけ?」

「さあ」


 現場を見ていないので、オレはよくわからない。あの王子のことだから、チャラい姫より清楚なアニエスを選んがような気もする。


「心当たりは?」

「結構、サービスしていると思うけど?」


 姫はネグリジェ姿で相手宅の寝室に飛び込んだり、風呂に全裸で乱入したりと、積極的にアプローチをしていたらしい。


 だが、まったく相手にされていないとか。


「アタシって、そんなに魅力ないかな?」


 食事を終えて、姫様の悩み相談となった。


「そんなことはないだろ? 引いているだけじゃないのか?」

「引いてんの? 姫であるアタシが裸体を晒しているのに、ガッツかない?」

「たしかに、据え膳食わぬは、とはいうが。やりすぎだ」


 もっと三歩くらい引いてくれたほうが、男性としても接しやすいかなと。


「大丈夫。姫は魅力的」


 モモコが、助け舟を出してくれた。


 こういうときは回答ではなく、共感してくれる相手が必要だな。


「そうなん? よかった」

「女あまりとかも、あの王子ならありえない。案外一途だし」

「だよねえ。アンタにぞっこんだもんね」


 また、姫が意気消沈する。


「見た目はそうかもしれない。でも、中身はおそらく姫様の方がいい」

「どうだろうね?」

「自信を持って」

「やってみるけど……っ!」


 姫様の腰が、ピカピカ点滅していた。王族用の通信端末が、光っている。


「どうしたの……わかった。すぐに帰るよオヤジ!」


 どうやら、ドルリーの国王からのようだ。


「またヴリトラが現れたって。国の騎士だけじゃ、押さえられない!」

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