第50話 例のダンジョン

 オレたちは、例のダンジョンへ飛んだ。ウニボーにポータルを開けてもらおうとしたら、レティ姫が開けてくれた。


「ワントープくらい、ブクマするっしょ。ガキの頃に連れてこられたときに、とっくにブクマしたわー」

「たしかに。ボクもだわ」

「ノームだもんね。ファストトラベル魔法とか余裕っしょ?」

「まあ余裕よね」


 レティ姫とピエラが、魔術トークで話し合っている。専門用語が多すぎて、理解できないが。


「へえ、ここがクニミツの領土なんだ。キレイじゃん」


 オレの領土に到着して、レティ姫があちこちを見て回った。


「これがあんたらの【かまど】と【作業台】かー。ウチらが使う【錬金釜】とは、ちょい違うね」


 さすが魔術大国の姫様である。家に置いてある家具を、【かまど】と

【作業台】だと一発で見抜いた。

「見なよ、アニエス! スケルトンがいる! ウケる!」


 レティ姫が指をさす先で、ガイコツ夫婦が畑を耕している。


「ボクの召還獣として、普段はここでお仕事させているわ」

「へえー。ネクロマンサーでもないのに、スケルトンって使役できるんだ」

「自分の意思で、こっち側に従っているのよ」

「興味深いね。まだまだ知らない魔法がいっぱいあるじゃん。おもしろー」


 姫がスケルトンたちにあいさつを終えて、いよいよダンジョンへ。


「うわー!」


 冒険者だろうか、数名の戦士がダンジョンの入口に吐き出された。


「さすがに四〇分越えはムリかー」

 

 頭をかきながら、冒険者たちはダンジョンを去っていく。


「あのダンジョン、ワタシは潜ったことがないんだ。どこまで強くなるのか」


 そう話すルイ同様、実はオレたちもあのダンジョンに潜るのは初めてだ。


 ただのメイドだった少女が、モモコと肩を並べるくらいになったほどである。かなりの効果が期待できそうだが。


「おっ、なんだこれは」


 だだっ広い部屋に、魔物が無限湧きする。ノームの亡霊が、魔物を大量に召喚しているのか。


「人数に乗じて、大量に湧くみたいなんだよね。三〇分耐えたら、ボスが出るの」


 レベルに合わせて、だんだん敵も強くなっていく。

 オレたちクラスになると、初めから敵が強かった。


 ボスが現れる前に死ぬと、ダンジョンから追い出されるらしい。

 さっきの冒険者たちみたいに。


 ローグライクのサバイバルゲームみたいな構成なんだな、このダンジョンは。そりゃあ、強くなるわけだ。


「おっ。おっ! あおっ!」


 油断していると、負けそうになるな。


「ボスが現れたぞ!」


 中央に現れたのは、ガイコツ型のノームだった。ボロを着ている。


「あのボスを倒して、レベルをひたすら上げました」


 ダンジョンを出ると復活するので、レベル上げは楽だったらしい。


「ワタシがやってもいいか? 強さが頭打ちしている気がしてならない」

「どうぞどうぞ」


 先陣を、ルイに譲る。


 相手はそれなりに強いが、抵抗もできずに破壊された。攻撃力もたいしてなく、頑丈なだけという印象である。


 ルイくらいになると、楽勝か。


「どうだ?」

「すごいな。かなりの経験値が体内に入り込んだ気がする」


 自分の身体を擦りながら、強くなったのを実感しているようだ。


「悪名高い、ノームだったわ。当時は強さもえげつなかったのよ」


 身内の面汚しだったと言わんばかりに、ピエラはボスを罵倒する。


「これなら、数周回っただけでかなりのレベルに到達しそうだな」

「気が遠くなるくらい周回しました」


 当時を語るアニエスは、目にハイライトがなくなっていく。


「ですが、『じゅう』という武器の再現はできませんでした」


 やはり銃は、この世界にはないんだな。


 飛び道具なら、魔法が発達している。剣から衝撃波まで出せる世界だ。銃を作ってまで、有利に立つ必要はない。


 それでも、オレたちは銃にこだわった。


 ためしに、目の前で作って見せる。ちょうど銃の調節も必要だったし。大砲から、水鉄砲までを開発した。


「なるほど。大筒状の杖を、振り回している構図なのですね? 難しいわけです」


 触っただけで、アニエスが銃の仕組みを言い当てる。


 この世界における銃の構造なんて、初めて知った。


「モモコ、お前知ってたか?」


 ブンブンと、モモコは首を振る。

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