第四章 王都で、相棒そっくりの女性と出会う

第42話 ゆうべは、おたのしみでしたね

「クニミツ」


 シーツから、一糸まとわぬ姿のモモコがモゾッと這い出してきた。


「いくら私が『避妊』の術を持ってるからってさ、ガッツキすぎ」

「すまん、モモコ。大変だったろ」

「いや、おちょくっただけ」


 指で、オレの腰あたりをツンツンとする。


「朝飯を作る。食ったら王都へ向かうぞ」

「OK。でも、今日は私が作るよ」

「ありがとう」


 モモコが魔法を使って、一瞬で普段着に着替えた。いつの間にエプロンなんて作ったのか?


「ゆうべは、おたのしみだったみたいモジャ」


 ウニボーが、オレの肩に乗ってクスクスと笑う。


「スキンシップは大切モジャ。絆が深まったんじゃないかモジャ?」

「ああ。とはいえ、三日くらいは自堕落な生活を送ってみたかったな」


 新婚生活って、感じがしない。王都に行ったら、観光もいいかも。トラブルがなければいいのだが。


 朝食は、簡単なものだ。

 凝った料理はポテサラくらいか。マヨネーズの酸味がバランスよくて、パンに合う。ボリュームも、腹にちょうどいい。


「みんな、今日から王都へ向かう。ついてきてくれるか?」


 食事を終えて、ちょっとした話し合いに。


「もちろんだ。王都は今、大変だそうだからな」

「ボクの作った錬成道具がどこまで通じるか、楽しみだね」


 ルイもピエラも、反対しない。


 準備をして、出発となった。


 事情に詳しそうなルイに、話を聞いてみる。


「王都は現在、隣国と少し揉めていてな。先日も小耳に挟んだんだが、王子が隣国の姫との結婚を渋っているらしい」

「そんなに王都は、めんどくさいことになっているのか」

「姫の何が問題なのか、わからんのだがな」


 聞くと、そのお姫様は美人で、性格もいいらしい。聖女と民衆から慕われているそうな。


「ところが、旅先で出会った東洋の少女に一目惚れしてしまったらしい」


 うわー。嫌な予感しかしねー。


「どうしたのクニミツ?」


 我関せずとばかりに、モモコは天然ぶりを発揮する。


「お前、なんかフラグ立てたか?」


 知らないところで、お尋ね者になってたりなんかしてねえよな?


「何も。クニミツと単独行動なんて、やったことないし」


 だよな。オレも、まるで見に覚えがない。


「でもね。二人のウワサは国中に広まっているの。世界を救っている英雄だわって」


 ピエラの情報は、初耳だ。


「実物を見たことがないから、ウワサに尾ひれがついてしまっているのよね。内容も東洋人の女、ってだけなのよ」


 すると、誰かがモモコになりすまして、何かをしている可能性もあるわけか。


「モモコとは、別人であってほしいよ」

「私もそう思う。なんか、気持ち悪い」


 モモコが身震いする。


「ところで、装備を新調していないが、いいのか?」

「ワントープで素材を最大限加工してきたから、平気。マイナーチャンジってやつ」


 ところどころ、見えないところを変えているらしい。


 考えていることは、オレと同じか。


「あんまジロジロ見んな。ハズい」

「いや、夫婦じゃん」

「それとこれとは別。仕事モードと家庭モードは、分けようよ。漫才師だって、ウチでラブラブだったとしてもあんまり表に出さないでしょ? 芸風でもない限り」

「どういう理屈やねんっ」


 オレは、モモコにツッコんだ。


 近くの街で馬車を借り、三日ほど進んだときである。


「王都の領域に入ったモジャ。空気がめちゃ変わったモジャね」


 オレにもわかった。【世界の裏側】の気配だ。


「うわあ!」


 冒険者が、森から飛び出してきた。同時に、屈強な武闘家が血まみれになって、森から吐き出される。あれはもう、助からない。


 オレは、慌てて馬車を止めた。


「何があった!?」

「化け物だ!」


 剣で森を指しながら、冒険者は半狂乱になって逃げ出す。


 こんな静かな森で、強めのモンスターかよ!


「マイナーチェンジした武器の性能を、試すか」

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