第41話 妻との初夜

 役所に突き出しても、貴族はなおも因縁をつけてきた。


「自分は犯人を逮捕するため、潜入捜査をしていたのだ」と。


 だが、監禁されていた人たちが、ヤンキー貴族が率先して被害を出していたと証言する。


「こんなヤツらの言葉と、貴族であるオレたちの言葉と、どっちを信じるんだよ!?」

「被害者の言葉に決まっているでしょう!」


 とんでもない大物が、取り調べの場に現れた。


 アンファンの領主、ドリスさん夫妻である。


「ド、ドリス様!」


 貴族でさえ頭の上がらない人のようで、その場全員がひざまずき、頭を垂れる。


「すごい人だったんですね、ドリスさんって」

「いえ。夫が王の弟というだけです」


 夫妻は王族と関係が深く、ワントープより力関係は上だという。


 今回の件で、ワントープの領主はドリスさんに説教を食らっていた。家族に関して、監督が行き届いていないと。


「あなたがたに落ち度がなくても、悪い心というのは環境によって芽生えます。悪事のほうが儲かるという感情は、なかなかのことでは抜けません」


 ヤンキー貴族たちは、それぞれ別の場所へ流刑に。


 ワントープの領主は責任を取らされ、領地の半分を民間業者に譲渡させた。事実上の没落である。


 漁業組合の不当な借金も、ドリスさんはチャラにした。


「えげつないな」

「どのみち、貴族は民間企業の隆盛で衰退するのです。予定が早まったに過ぎません」


 それだけ、民間の技術は進んでいるわけか。


「クニミツさんは、王都へ行きませんか?」


 王都か。それは面白そうだな。


「できれば、クニミツさんに王都へ向かってほしいのです。いよいよ魔王復活の兆しが本格的になってまいりまして」

「大変だな。王様も」

「はい。お願いできませんでしょうか?」

「わかった。やってみる」


 オレたちで王都を守れるかわからない。


 準備してから、向かうとしよう。


 領地に帰ってきた。


「おかえりモジャ!」

「ただいま、ウニボー。すぐにメシの支度をする」


 ウニボーたち仲間に食事を作って、振る舞う。久しぶりのような気分だ。


 食後、風呂に入ってゆっくりする。


「ん、モモコ?」


 バスタオル一枚のモモコが、入ってきた。


「お前、さっき入ったばかりじゃないか」

「もういっぺん、入ってみたくなった」



 モモコが、バスタオルを開く。

 その下は、前に見せてくれた布面積の少ないビキニである。



「ちゃんと見せていなかったから、バッチリ見て欲しい」

「お、ちょ、待ってくれ」


 オレは、身体をよじって後退りをする。


「クニミツ、逃げないで」

「逃げますよっ」

「隠さなくてもわかってる。クニミツがどうなっているか」


 こわばった身体をリラックスさせ、オレはモモコを湯へ招き入れた。


 モモコも、なんだか覚悟を決めたような顔になっている。ため息ばかり漏らす。


「あの、クニミツ?」

「なんだ?」

「もう危ない戦い方は、しないでほしい」

「わかってる」


 モモコが、握ってきた。どことは言わないが。


「いくら頑丈な身体を手に入れたっていっても、人間族のままだし」

「うん」

「ヤバい作戦を思いついたら、ひとまず相談だけでもしてほしい」

「わかった。そうするよ」


 オレは、されるがままになる。


「こっち見て」

「ムリだ。お前こそ下ばっかり見るな」

「さっきより固くなってきたね」

「よせ。もういいから」

「よくない」


 強めの語気を孕ませて、モモコはオレに抱きついてきた。


「私、クニミツがいなくなるんじゃないかって思ったら、身体が熱くなってきて。自分で想像していた以上に、クニミツが大切になってたんだなって」

「うん。心配させて悪かった」

「だから、今晩、お願い」

「お前、まだ一〇代だろ?」

「女神様に年齢だけ上げてもらっているから、平気」


 風呂から上がって、同じベッドに。


 しゅるしゅる、と、ヒモが解ける音がする。


 お互い裸は見慣れているはずなのに、その日はずっと恥ずかしがっていた。

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