第40話 水鉄砲で、海賊狩り

 外へ出ると、女性が海賊らしきヤツラに連れて行かれていたではないか。娘を捕らえた男性が、組合長か。


「借金のカタに、娘を連れ去ったみてえだな」

「ひどい」


 モモコは憤る。


「あんたなら、そう思うだろうな」


 中年ハンターは、なりゆきを見守るだけ。


「だが、やめときな。ヤツラは強いモンスターを引き連れている。うかつに手を出せねえぜ」


 ハンターは、オレたちに忠告して去っていった。


 しかし、オレたちの考えは決まっている。


 準備をするために、一旦領地へ。ウニボーの毛玉を持っていれば、いつでもここへ帰ることができる。


「女性が海賊に捕まってるってなると、他にも人質がいるかも」

「だな。ヘタに大火力の銃や魔法は撃てない」

「バックに【世界の裏側】から来たモンスターがいるってのも、気になるね」


 人間の敵が相手だが、骨の折れる仕事になるかも知れん。


「おっ、早かったな」


 ルイが、水着姿でシャワーへ向かうところだった。着ているのは、オレンジのビキニである。モモコとは違い、完全スポーツタイプだ。これはこれで、競泳水着のような趣がある。見る人が見れば、性癖が歪みそうだ。


「ワントープ騎士団に頼まれてな。跡継ぎの子どもたちを、トレーニングがてら海で遊ばせていたんだ」


 こんな水着姿の少女に手ほどきしてもらったら、おそらく訓練どころではなかっただろう。


「女子は筋がよかったな。男子は、情けなかったぞ。ジロジロ見られて大変だった」

「だ、だろうな。オレだって同じ考えだ」

「そうなのか?」


 無自覚エロスとは、罪だなあ。


「聞きたいんだが、騎士団は海賊討伐とか、考えているのか?」

「海賊の話を聞いたのか? 魔物に関してだが、もう問題がないようだ」


 ルイから話を聞いて、オレたちは勝利を確信した。


「ただいま。いやー、いいものが採れたわ」


 ピエラも、水着姿で帰ってくる。紫のワンピースで、フリル付きだ。ただの飾りではなく、アイテム探知のセンサーが付いている。いかにも合理主義なピエラらしい水着だ。


 ルイと一緒に、シャワーへ向かう。


「ボク、泳ぐなんて久しぶりだったわ」


 海底まで潜って、珍しい錬金アイテムを探していたらしい。


「で、どんなアイテムを手に入れたんだ?」

「これよ」


 手に入れたアイテムを、ピエラがオレたちに見せてくれる。


「海底火山の力が詰まった、魔法石よ。水に濡れても燃えるの」


 熱湯を発射できる魔法石らしい。いちいち炎属性と氷属性の魔法石を調節しなくても、この石だけでお湯が使えるようになる。


「すげえ。いいんじゃないか?」

「欲しいなら。分けてあげるわ。ギルドにはおろしてあるし、両親のお店にも渡したから」


 他にいいアイテムがあったので、これくらいなら分けてくれるらしい。


「ありがとう。使わせてもらう。ゆっくり休んでくれ」

「ええ。どこへ行くの?」

「海賊退治だ」


 領地の留守をルイたちに任せて、オレたちは海賊の集まるという賭場へと向かった。 


「こんにちはー」


 オレたちは、賭場に乗り込む。銃を構えて、弾を撃ち込んだ。


「ひいいい! 熱いいいい!」


 水鉄砲の先から、熱湯を放つ。飛距離を調節して、人質には当たらないようにする。


 足に浴びせるだけでも、海賊たちは悶絶した。海底火山の熱を利用しているのだ。相当熱いのだろう。


 氷魔法で大気を凍らせて窒息という手が、おそらく一番効率的で手っ取り早い。だが、そんなケレン味のない戦略の何が楽しいのか。


 激熱水鉄砲だけで、海賊は一気に壊滅した。


「て、てめえよくも!」


 後は、海賊の頭領だけだ。横には、例の貴族ヤンキーたちも。


「このままで済むと思うなよ! オレ様にはな【世界の裏側】からのモンスターがいるんだ!」

「そのモンスターなら、オレたちが倒した」

「なあ!? バカな! スキュラ様がそんな簡単に!?」

「ああ、このアイテムの持ち主か」


 オレは、ドロップアイテムであるスキュラのしっぽを頭目に見せた。


「全員、熱湯な」


 コイツラには、さらに大量の激熱水鉄砲を食らわせる。

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