第43話 強敵、竜人族の黒騎士

 森に入ると、えげつない数の魔物たちが王都へ向かっていた。


 木々をへし折りながら、イモムシのような巨大生物がのっしのっしと這いずっている。あそこから、モンスターが湧いているのか。


「クニミツ、モモコ、ザコは任せてっ!」


 帽子を頭で押さえつつ、ピエラが先行した。

 ザコの魔物たちを、雷魔法で黒焦げにしていく。

 森に雷を落とすと、草木に燃え移ってしまう。だから地面に電流を放って、体内から破壊するのか。見事だな。


「アイシクル・レイ!」


 指から冷凍光線を浴びせ、ピエラがモンスター共を凍らせる。


 水鉄砲を見せただけで、あんな術を思いつくのか。つくづくピエラは天才だ。


「この火炎放射器だが、森で放つと大惨事だな」

「心配ない! 氷結ブレスにもなるぜ!」


 ルイに使用方法を教える。


「そうか。世話になる! ブレスを喰らえ!」


 氷結ブレスを、ルイが魔物たちにぶちまけた。


「クニミツ


 オレたちの仕事は、イモムシ戦車の始末である。


「デカいのを一発、お見舞してやるぜ!」


 オレは、ランチャーを構えた。


 イモムシ戦車の口の中に、どデカいロケットを撃ち込む。


 ロケットを食った大型イモムシが、足を止めて身体をのけぞらせた。


「もう一発くらいな!」


 さらに連発して、悲鳴を上げさせる。口が開いたところに、さらにロケットを食わせてやった。


 イモムシ戦車が、連結部分も含めて爆発した。 


「ぬう!」


 黒い騎士が、イモムシ戦車の頭から出てくる。全身黒尽くめのヨロイで、やたらデカいグレートソードを持っていた。その姿は、二足歩行のドラゴンを思わせる。


「よし、やったるぜ!」


 オレは、黒い騎士にランチャーを放つ。


「ふお!」


 敵が顔面に、ランチャーを受けた。


 欠けた走行のパーツから、火花が散っている。こいつは……。


「なにあのデザイン!」


 モモコが、すっかり大興奮している。


 わからなくもない。オレも内心では、驚いているからである。


 あれは、どう見てもロボットだ。もしくは、金属生命体か。


 顔の大きさからして、人間がカブトをつけている風ではない。あれが顔なのだ。


「うわあ、懐古趣味と中二病をうまいことかけ合わせた、かっこいいヤロウが現れたな!」


 デザインにどことなく漂う、九〇年代臭が凄まじい。こんなの当時にはいっぱいいたなーと。


「でも敵っぽい。残念」


 仕方ない。参考にだけしよう。 


「わが同胞スキュラを倒したのは、貴様らか!」


 野太いおっさんの声で、騎士がオレたちに凄む。


 どうやら黒騎士は、スキュラの仲間だったらしい。【世界の裏側】の住人確定だな。


「このアビスナイト・ヴリトラが、王都ともども貴様らに引導を渡してくれよう!」


 ヴリトラと名乗る騎士が、オレたちに襲いかかる。


「モモコ、油断するな!」

「わかってる」


 オレが正面で騎士と対峙している間、モモコには背後から銃を撃ち込んでもらう。ザコ相手に使うマシンガンではない。二丁のレーザー砲である。いきなり全力モードだ。


 だがオレの剣も、モモコの銃撃も、ヴリトラの硬い装甲に阻まれる。


「加勢する!」

「ザコは全滅したわ!」


 ルイとピエラが、増援に加わった。


「お前は、ヴリトラ!?」


 黒騎士ヴリトラを、ルイは知っているようである。


「なんと、ワシ以外に竜人族ドラゴニックが!」

「ブラックドラゴン族、我々が壊滅させたはずでは!?」

「あんなショボい侵攻で、誇り高きブラックドラゴンが死ぬかよ! 魔王より賜ったこのボディのおかげで、生きながらえておるわい!」


 ヴリトラが、剣を振るう。


「王都とともに果てるがよい! 【オーラ・スマッシュ】!」


 特大のオーラ・スマッシュをヴリトラが放った。


 オレたちは、一斉に跳ぶ。


 森があっという間に、はげ山へと変わった。山すら切り捨てるほどの威力かよ!


「まだまだ……ぬお!」


 紫色の閃光が、ヴリトラを切り裂く。


「おのれ、貴様は!」


 閃光の正体は、女性のニンジャだった。


 顔の下半分は紫の頭巾で覆われている。


 それでも、オレにはわかった。


 あいつは、モモコそっくりだと。

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