第16話 銃の試し打ちに

「どうするモジャ? オイラたちだけで行ってもいいモジャ。足止めくらいはできるモジャ。無理する必要はないモジャ」


 オレとモモコは、同時にうなずいた。


「結論は出ている。もちろん行くさ。なあ、モモコ」

「クニミツの言う通り。私たちならできるよね」


 銃を撃つ、最高の口実だしな。


 自分たちの家に、ルイを案内する。


「ここが、キミたちの家か。愛の巣というより、ラボって感じだな……」


 唖然とした顔になりながら、ルイが家の外や中を眺めている。


「準備するから、お茶でも飲んで待っていてくれ」

「ここのお茶は、おいしいモジャ」


 ウニボーに催促されて、ルイがお茶を飲む。


「ん? うまいっ」


 ルイが目を見開いた。


「緑色のお茶だから、薬草の苦味が来ると思っていた。甘いなぁ。お茶菓子もソイソースが効いている」

「せんべいだ。飲み物は緑茶っていうんだ。紅茶と茶葉は変わらない」


 オレと湯呑を交互に見ながら、またルイが目を丸くする。


「不思議な味だな。うまい」


 ルイたちがお茶を楽しんでいる間、オレたちは装備の確認をした。 


「でもいいのか? 銃って言っても、初期装備だ」


 銃と言っても、さして殺傷能力は高くない。ガチで自己満足の世界だ。こちらの世界にある魔法などの方が、案外強いかもしれない。だが、そこは戦闘力でカバーする。


「モンスターも射撃武器を、ドロップするようになったっぽい。弾もマガジンも共通」


 武器の手入れをしながら、モモコが教えてくれる。


 だったら、その都度強い武器に変換すればいいか。


「クニミツは、どういうファイトスタイルにする? あんた大剣じゃん」


 オレが背負っている大きな剣は、両手持ちだ。盾を構えることができない。


「スイッチする。近接は大剣で殴って、中遠距離で盾を構えつつ撃つ」


 オレは五角形の盾【ヒーターシールド】で、上半身を覆う。


 リロードも、盾を構えながら可能だからな。


「お前は?」

「魔法使っていた当時と、変わらない。中距離で、かく乱役」

「よし。行くぞ」


 ダンジョンは、すぐ近くにあるという。


「ていうか、うちの側じゃないか!」


 目的のダンジョンは、オレたちの家の近くにあった。採掘や採集をしていた洞窟ではないか。


「世界の裏側は、どこのダンジョンからでも出入りできるモジャ」


 奥地を封じる結界が、だんだんと弱まってきているそうだ。だから、ドリスさんの息子が弱っているらしい。


「どうして、こんな敵地のど真ん中に?」

「相手も余裕がないからモジャ。早く復活させたいモジャ」


 だから、ウチの近くから襲いかかろうとしていたようだ。


 ダンジョンの行き止まりまでたどり着く。


「今から、裏側への道を開けるモジャ。う~ん、モジャモジャ……」


 ウニボーが、呪文を唱え始めた。


 ルイが、盾を前方に構えて、剣を抜く。ショートソードだが、聖剣らしい。刀身に祝福の言葉が刻まれていて、柄の装飾も美しかった。


「うらやま」


 この事態に、モモコはルイの剣に見とれている。


「気になるか?」

「聖剣とか魔剣とか、そそるっ」

「ドロップできたらいいよな。あるいは、自分で作ってみるか」

「ひとまずこの世界の美的センスを知りつつ、自作する」


 それでこそ、中二病だ。


「いいモジャ」


 世界の裏側への、道ができる。


「わたしが先行する。二人は――」


 ルイの言葉を待たず、オレたちは突撃した。


「突っ込むぞ、モモコ」

「クニミツの方こそ、遅れないで」


 敵発見。先日のオーガだ。


「くらえ!」


 オレはリボルバーをぶっぱなす。ドシンという思い感触がオレの骨に響く。これでこそ重火器だ!


 眉間を撃ち抜かれ、オーガが足から崩れ落ちる。


 二撃目で、オレは心臓を撃ち抜く。トドメを刺すことも忘れない。


 モモコは殺傷能力の低いオートマチックを連射した。

 相手をハチの巣にする。


 敵は、穴だらけになっていた。もう生きてはいまい。

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