第17話 乱れ撃ち

 オレたちは、敵が落としたアイテムを回収する。


 手甲は使えそうだ。これは、オレがもらっておく。


「今のは、なんだ? 弓か? 小石サイズのファイアーボールか?」


 銃撃を見たことがないのだろう。ルイが真っ青な顔になっている。


「あれは銃という武器だモジャ。オイラも初めて見たときは、鳥肌モジャ」


 猫型精霊が、身を震わせた。


「弱い魔力石の指輪しか、出なかった」


 モモコが、ドロップ品に不満を漏らす。


「そうそう。オイラには【アイテム掘り】のスキルがあるモジャ。


 ウニボーが、敵の死体をモシャモシャと食べ始めた。血液などは出ない、レイティングに配慮した上品な食い方である。


「出たモジャ」

「おお、ちょっといい感じの魔剣が手に入ったぞ」


 龍の巻き付いた、両刃のナイフだ。修学旅行の土産屋などで見かけるキーホルダーの、実用品版といえるか。


「短剣じゃんっ。武器レベルも低っく。ああでもっ、このフォルムはそそるかも?」


 オレが手甲、モモコは迷った挙げ句、結局魔剣を手に取った。まあ、今後使う武具の素材にはなるだろう。


 新武装を手に、先へ急ぐ。


「あんたの装備は、それでいいか?」

「大丈夫だ」


 新しくなったプレートメイルを、ルイは着込んでいた。オレたちが自分たちの装備品とにらめっこを続けていたのは、ルイの着替えを待っていたからである。


 ルイは、身長がオレと同じくらい高い。一七九はあるのではないか。バスケ部の女子くらいはタッパがある。エルフのドリスさんほどスラリと尖っておらず、体型がムチッとしていてラインが丸っこい。全体的に、グラマラスである。こんな人が魔物に捕まったら、『くっころ』必至だ。


 とにかく、先へ進む。


「ゾンビが山盛りで出てきた!」


 百匹はいるだろうゾンビが、襲いかかってきた。顔が人間ではないから、グールかもしれない。


「撃ち尽くせ! 【乱れ撃ち】!」


 正面の敵集団に、集中砲火を続けた。


 面白いくらいに、ゾンビたちが溶けていく。


「リロード!」


 尖った岩に隠れて、モモコがマガジンを交換した。


「こっちもだ!」


 リボルバーなので、オレのほうが弾切れが早い。ザコ相手なら、モモコの方が早いか。


「【オーラ・スマッシュ】!」


 ルイが、前方のゾンビに向かって、剣を横方向へ凪ぐ。


 オレンジ色に光る衝撃波が、ゾンビの胴体を焼き払った。


「うわ、すご」


 あっという間にゾンビが全滅し、道が拓ける。


「この聖剣【ナイトメア・スレイヤー】に、セットされている技だ。遠隔攻撃は、キミたちだけの技ではない」


 悪夢を断つ剣か。


「くう、私も銃に二つ名が欲しい。クロス・ストリングス、デュアルヘッド・シャーク、う~ん」


 対抗しているが、モモコも武器に名前をつけ始める。ろくな名前が出ないようだ。モモコよ、勝負するとことはそこじゃない。


 両側に崖を挟んだ、細い道を通る。崖の下は霧が立ち込めていて、底が見えない。水の音がするから川のような気がするが。


 カーブを抜けて襲ってくるオーガどもを、銃で撃った。


 撃たれた反動で、オーガの一体が崖の下へ落ちていく。


「しまった。アイテムが」

「大丈夫モジャ。倒した地点にドロップするモジャ」


 とはいえ、落としたのは金だけ。アイテムはゲットできなかった。死体がなくなったため、ウニボーに追加で探してもらうこともできない。


「ここは地上とは違う世界モジャ。崖の下に落ちたら、どこへ行くかわからないモジャ」


 なら、落ちないほうがいいな。


「アイテムが、あまりいいものを落とさなくなった」


 ある程度装備品が完成し、ほかは換金するものしか出なくなっていた。


「じゃあ、【アイテム制御】をするモジャ」


 レア以下のアイテムを、表示しなくできるらしい。落ちたアイテムはスキルの効果により、勝手に金か素材、ポーション系に変わるという。


 崖を抜けると、広い陸地に着く。


 五二体のオーガ、一〇匹のデカいクモ、二〇〇体のゾンビ、七〇体のグールが集まってきた。


「魔術師タイプが出たよ! あいつだけ、レベル一〇だって!」


 魔物の大群の後ろに、ツインテールのような角を持った魔女がいる。

 洋ゲーの敵みたいな造形で、女性キャラなのに萌えない。


 このバタ臭さも、オレはキライじゃないぜ。


 まあ、倒すけどな!

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