第3話『君』という存在を知れたら
嫌われる攻防戦は未だ続いてるのか分からないような当たり障りのない毎日。大学もそろそろ長い長い休日が始まろうとしてたある日。
待ち合わせをしていたコンビニの入り口に君はいた。
汗ばむ季節に綺麗めなモノトーンコーデに身を包み、ポケットに手を突っ込みながら壁にもたれている。でもいつもと違った。薄い唇で器用に挟みながら伏し目がちに、紫煙をくゆらせていた。煙草を吸う行為は、まるで絵に描いたような情景で声をかけるのを躊躇う。意を決して声をかける。
[煙草吸うんだね。]
声をかけるとニヤッと笑いながら視線を合わせて来た。その真顔から笑顔に変わる君は眩しかった。
『煙草嫌いでしょ?違った?』
君の薄い唇と煙草が私に軽口を叩く。
まだ攻防戦は続いていたことにショックを受ける私と違う一面の君を見てもまだ好きだと思い知らされる私。一字一句間違えたら終わる恋を続ける私は悪ですか?。
[別に嫌いじゃないよ。親も吸ってたし、私も興味はあったけど吸ってないだけだし。]
可愛げないことしか言わない私に君は煙草を差し出す。嫌なニヤつき方をしながらその仕草に揺らぎがない。
『一緒に吸う方を選ぶってこと?好きすぎでしょ?俺のこと』
返事の代わりにその煙草を手に取る。紙煙草の質感に指がしっくりくるような気がする。君とならこういうのも悪くないと口にする煙草の煙はくらり揺れながら、昼下がりの空に消えていった。この苦味、いがらっぽさを忘れてはいけない気がする。
『結構吸えるじゃん、でもまた失敗しちゃった。ダメだね俺は。』
灰を落とし、また吸う、ただその行為も気が気じゃない。今、間違った行動を取れば終わりを告げる。でも優しい君は煙草を持ってない手で私に触れるんだね。振り切れないまた波に溺れてく。なんでそんなに優しいのか分からない、初めて君のことを怖いと思った。もっと酷く振ってよ、優しさの意味なんて知らなくていい。
そんな煙草も終わりを告げ、しっかり消火をしてからコンビニに入る。自動ドアが開くと少し肌寒いほどの冷房に包まれて、店内に歩みを進める。2人して飲み物のショーケースの前で選んでいると君はまた手を繋いできた。そんな少しのことで心臓がうるさくなる。君はコーヒーを私は紅茶を選び、買ってくるねって言いながら君はレジに向かっていった。握られていた手は行き場をなくし、少し熱を帯びている。
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