第14話 清楚系ビッチな妹友がお泊りにきた件。その①



 ――例の『よしよし』事件から2週間。なんとなく気恥ずかしくて、西川さんとの接触を避けていたのだが。



「あ、おにぃ、突然だけど今晩、ほのかーが泊まりにくることになったからよろしくー」


「なん……だと……ッ!」



 ――清楚系ビッチな妹友が、泊まりに来ることになった。


 ……しかも。



「……勇弥ゆうやー、今晩お母さん達、ちょっと出かけてくるから。結婚記念日だし」


「……はッ!? なんだよそれ! 今日は結衣の友達が泊まるんだろ!? さすがにマズいだろ、このネグレクト親!」


「何言ってんのよ、あんたがいるでしょ。それに日をまたぐ前にはちゃんと帰ってくるから」


「いや、だってそれじゃ……」


「何よ? もしかしてアンタ、手出しするつもりじゃ……」


「ないない!! んなわけないだろ!」


 ……なんて具合に、親もいないし。


(……ま、大丈夫か。結衣もいるし。部屋にこもってればやり過ごせるだろー)


 などと、楽観視していたのだが。



「……お邪魔します、お兄さん」


「どうも」


『お世話になります、……いろいろと♡』




 ◇◇◇



 ――久しぶりの西川さんは、やっぱり刺激が強い。


(なんだあれ、お風呂上りのパジャマか。可愛いだけじゃなく、ツヤツヤしてる、……じゃなくて。……そうそう、そのまま結衣の部屋に入って……) 


 バタン、と扉がしまる。思わずほっと息をついた。


 自分の部屋に入り、机に向かう。


(よーし、じゃあ心置きなく、勉強しよ……!)



 5分後。



『……お兄、さぁん♡……』


「んなッ!? に、西川さん!? どうして、結衣は!?」


「……寝ました」


「早ッ! まだ9時台だよ!?」



◇◇◇



「そんなことより……」


「……お兄さん、最近わたしのこと避けてますよね?」


 ……う。


「えと、……なんのことかな」


「とぼけなくてもいいです。わかってますから」


「…………」


「勝手にあんなことしたから、……嫌われちゃいましたよね?」


「……!」


 急にしおらしく、西川さんがしゅんとした表情を見せる。なんだか心がざわついて、俺は思わず、


「……嫌ってない」


「え?」


「嫌ってないから、別に」


「ホント、ですか?」


「うん」


 へなへなと西川さんが、その場に女の子座りで崩れ落ち、


『よかったぁ……』


 聞こえるか聞こえないかくらいの声でつぶやく。そのあまりに健気な様子に、


「……それは、……なに、より……」


 ――なんだか、顔が熱くなって仕方ないんだが。




 ◇◇◇



「……あのさ、西川さん、聞いてもいい?」


「……なんですか?」


「こ、この前、『俺がいい』って、……言ってくれたじゃん?」


「……はい。言いました」


「……、なんで、かな?」


「……」


「お兄さん……」


 顔を上げると、西川さんのはにかんだ顔。


「――はじめて会った時から、ずっと、そうでした」


「!」


「初めてって……、こないだ遊びにきてから……?」


 俺の問いに、首を左右へと揺らし。


「……もっとずっと、前です」


「え、どれくらい?」


「3年前……」


「……3年前ッ? アレ、そんなに前からだった??」


 西川さんは少しだけ不満げに頬を膨らませ、


『……やっぱり忘れてた。……お兄さんのばか……』


「う、すみません……!」

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