第8話 清楚系ビッチな妹友に忘れ物を届けた結果。

 


――清楚系ビッチな妹友に、


『先日家に来た時に忘れ物をしたから、持ってきてほしい』


 と、頼まれたのだが。




『……2分遅刻です。お仕置きですよ?』


 例のごとく耳元で囁かれるが、それどころじゃない。


「ッ、今回ばかりは、ほ、他に言うべきことはないのかい!?」


「ありがとう、じゃなくて? 何ですか?」


「……何ですかじゃない! キミのせいで俺は大変だったんだからな! よりにもよって、その、ぱぱ」


「ぱ?」


「――パンツを持ってこさせるなんてッ!!」


「……」


「……、何かの間違いでは?」


「自分で中身を確認してみるといい!」


 リュックから巾着式のビニール袋を取り出し、西川さんに突きつける。


 ピラ。


 パッ。


 純白の……リボン付きショーツ!



「――ッ!」



 ◇◇◇



「こ、困るんだよ、こういう悪戯はホントに。俺、カバンに入れたまま学校に行ってさ、友達に見つかって大変なことになったんだからな!」


 言いながら悪夢のような記憶が再生され、俺は全身に熱がこもる。


「……じゃあ、……これ、見つかったんですか? ……大勢に」


「……そうだよ! 咄嗟に『妹の』って言い訳したけど、それでも変態呼ばわりされたんだぞ! 条件を呑んだら、こういうおふざけは、止めてくれるんじゃ……な……え?」


「……ッ」


 見るとその大きな目に涙を一杯に貯め、フルフルと涙をこぼさんとしている。


「え、ちょ、西川さん?」


「……ぅ、……ッ」


 ……そして。


「……あ、ちょ、ちょ、まっ!」


 がんばり虚しく、涙がほろりと一筋。その瞬間、限界まで目が潤み、


「……ッ」


 両手で顔を覆い、うずくまってしまう。


(――どどど、どうしよう!? JSを泣かせちゃったんですけど!?)



 ◇◇◇

 


 ――ひとしきりテンパった俺は、冷静になっていた。


(……や、待て。おかしいおかしい。そもそも、パンツを仕込んだのは西川さんの方だ。なのに、なぜに号泣? ……このJS、何か裏が?)



「……えーと、そんなに泣くなら、なんでわざわざ……」


「……、……だって、……今回は、ほんと、に……、入ってると思わなくて……」


「…………え?」


「お、俺を、からかったんじゃなかったの!?」


 コク、コク。


「…………」


 ということは、つまり。


(西川さんが間違って頼んだ忘れ物パンツをあろうことか学校に持ち込んで大衆の視線に晒したあげくそのことを本人に明け透けもなく伝えて泣かせたのが俺……)



「……どうしよ、……恥ずかしくて……もう、外歩けない……ずずッ」


「……だ、大丈夫さ、ほら、俺のクラスメイトなんてたかが知れて……」


「そういう問題じゃない……ッ」


「う……」


 多少大人びていて忘れていたが、この子はまだ小学生だ。ことさら自意識に関しては多感になってくる時期だし、そんな時期の女の子を相手に、自分がしたことはあまりにも酷だ。



「…………」


 ――、


「あの、西川さんッ」


「……本当に悪かった。この通りだ。許してくれとは言えないが、俺にできることだったら何でもするから」


「――じゃあ、お嫁にもらってくれる?」


「……え?」



 ◇◇◇



「いや……あの、そこまでは……」


「……うぅ、……わたし、もう、恥ずかしくて生きていけない……ッ」


 うずくまったままの嗚咽に焦った俺は、



「じゃあ、……こういうのはどうかな?」


「その、一緒にどこかにお出かけするとか?」


「……二人で?」


「え、いや、結衣も一緒……」


「――二人で?」


「…………じゃあ、二人で」


「なら、いいですッ♡」


 さっきまでと一転、さっと涙を拭い、満面の笑みで顔を上げる西川さん。


 ……あれ? 切り替え早くない?


「……ふふ、お兄さんと、デートっ」


「ぬぉ!?」



 ――まさか、謀られた!?



「ちなみに今の、録音してますッ」


「ファッ!?」


『楽しみですね、でぇと♡』(囁き)



 ――俺の初めてのデートの相手が、小学生になってしまった件。









 ◆◆◆






「……っ、///」


(勢いでやってしまったものの後から恥ずかしくなり、パンツを手にしたまま悶える清楚系JSの音)

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