第6話 清楚系ビッチな妹友は手段を選ばない。




 ――俺には清楚系ビッチの妹友いもともがいる。



 先日三つ条件を呑む代わりに、からかいを止めてもらう約束を交わしたはず。なのだが。




『……おにぃさぁん? ……相変わらずお耳、弱いんですねぇ?』


「ブフォッ、……それ、耳元で急にささやく必要ある!?」


『だって、こっちの方が、イイ……でしょ?』


「よくない!」


『えー♡ お兄さんの意地っ張り』


「……だ、第一、話が違うじゃないか!」


「なんのこと?」


「とぼけるな! 忘れたとは言わせないよ、こないだの約束! あれはもう破棄したってこと?」


 キョトンと一瞬間が開いて、西川さんは清楚な笑みを浮かべる。


「破棄なんてしてません。……ただ、」


「ただ?」


「――からかうのは終わりにして、……本格的に誘惑しようかと思って」


「       」


 言葉を失う俺に、西川さんは茶目っ気たっぷりに上目遣いで、



『覚悟しておいてくださいね、お兄さん?』


『これからは、お兄さんに手出しをさせるために、なんでもするつもりだから。……手段問わず♡』


「……ッ!」


 うおおおおお、ダメじゃん! よくわからんが、むしろ悪化してんじゃん! 


 ――やっぱり清楚系ビッチって!



 頭を抱える俺の目前、西川さんが一歩こちらに進み出る。何をされるのか不安で、ドキドキしながら身構えていると、


「……だから、その……えと」


「?」


「……クッキーを作ったので、……その、よかったら、食べてくれますか?」



「……へ?」


「しゅ、手段は選べませんからねッ///」




 ――せ、攻め方が可愛いッ!? 



(その後、大変美味しく頂きました)


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