第5話 悩める男子小学生は読み違える。



 僕の名前は伊集院マナブ、名門私立小学校に通うエリート小学生だ。


 突然だが、僕には気になるヤツがいる。同じクラスの西川ほのか。どうにかして気を引きたいんだけど、いい考えが浮かばない。だからこうして早朝から物陰から西川の様子をうかがっている。……のだけれど。


 僕の視線の先、校門の少し外側に西川がいて、その西川の前には。



「あ、お兄さん、わざわざ会いに来てくれたんですか? ……嬉しい」


「……(結衣の)忘れ物を届けにきただけだから」


(――誰だあの男! なんで高校生がウチの学校に? そしてなぜ西川と会話しているんだ!? ……は! ……もしかして、犯罪!?)


「てか相変わらずすげー学校だなぁ」


「そうですか?」


「……特に警備がね。さっきから警備員さんがずっと俺のこと見てるし。……確実に不審者と疑われてるよな」


「……」


 その瞬間、西川が不意にその男の腕をぐいと引きよせ、頭を傾けて、


「……えと、これなら身内に、見え……ますか?」


「――ッ! ちょ、西川さん!? 余計に状況がいかがわしく……、いえ、違うんです警備員さん、俺はれっきとした父兄で……ッ!」


(……いや、よくみると、べたべたしてるのは西川から!? それにしても、くっつき過ぎじゃないか?!)


「ほら、早く離れてっ」


「……やです」


「うおいッ!?」


「……ふふッ」


(…………)


 でも、……あんなに嬉しそうに笑ってる西川、初めて見た。

 


 去っていく高校生の背中を、西川が見送る中。


(……西川、ああ見えてべたべたするのが好きだったのか。……なるほど)


 ――よし。なら、僕も。


「西川―!」


 スッ。


「何してたんだよー!?」


 スッ。


「てか今のだれー?」


 スッ。



「……あ、伊集院くん? ただの結衣ちゃんのお兄さんだよ?」



 ――全然触れられないッ! ナニコレ。

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