第3話 清楚系ビッチな妹友と交渉してみた。



 ――例のごとく、家に遊びに来ている妹の友達(小5)に迫られている俺。




「うおい西川さん、これ以上やるつもりなら、今日は力づくで引きはがすけどいい?」


「……いいですよ?」


「え?」


『……力づくでほのかのこと、引きはがしてください。メチャクチャに。……本能の赴くままに』(囁き)


「……へ、変な言い方すな。……よし、こうなったら、奥の手だ」


「奥の手?」


「どうしてもやめてくれないなら、妹を呼ぶ! 今日は土曜だし、なんなら上の階から両親を呼んだっていいんだ。――それでもいいのかい?!」


「はい。構いませんけど?」


「……え、も、もれなくキミの本性がバレることになるってこと、分かってる?」


「お兄さんこそ、ご自分の立場、わかってるの?」


「……どういう?」


「仮に結衣ちゃんが来て、お父様とお母様が来たとして、わたしが泣きながら『お、お兄さんが、力づくで……』って言ったら、どうなると思いますか……?」


 コイツ……。 


「わかってますよね? ……わたし、これでも有名子役なんですよ?」


 ついで言うとただの役者ではない。月9から配信ドラマ、映画から朝ドラに至るまで、お茶の間みんながその顔を知っている、国民的子役だ。そんな子役が、俺の家族の前で迫真の演技。


 そんなものを見せられた日には、果たして俺の家族は、俺と国民的美少女の子役、どっちを信じるのか。いざ、脳内裁判!



 妹(脳内)『おにぃ、ロリコン!』


 父(脳内)『アウトー』


 母(脳内)『勇弥ーゆうやー、自首しよっか?』




 ……あれ? 社会的抹殺じゃね?



◇◇◇



「……じゃあ、どうすればいい? どうしたらお終いにしてくれる?」



 残された可能性は二つ。本人から妥協を引き出すか、こないだみたいに妹、結衣が戻ってくるのを待つか。けど、結衣のトイレの長さときたら異常だ。最近お通じが絶不調らしく、今日もまだ帰ってこない。


「……ふふ」


「条件があります。何も聞かずにんでくれると約束してくれるなら、やめてあげてもいいですよ?」


「内容は?」


「なにも聞かないって言いましたけど?」


「……」


「……あ、それとも、『……やっぱり、お耳の方が、よかったですかぁ?(ささやき)』」


「ふぐゥ!」


「……ふふ、お兄さん、可愛ぃ」


 正直、こっちにリスクしかないそんな条件、普通呑むわけがない。……しかし。


「?」


 西川さんが振り返る。その周囲のキラキラが、俺には見えた。


 ……くそぅ、何だって見た目はこんな可愛いんだ。国民的清楚さも相まって、このままでは変な扉が開く!



「……わかったよ。呑む! 呑めばいいんだろ?」


「お利口なお兄さんですね」


 JSの密着から、ようやく解放される。俺が一息ついたのもつかの間、


「では条件ですが、一つ目の条件は……」


「――ちょっとまって条件いくつもあんの?」


「三つです」


「――三つ!?」


「呑むと言ったのは、……お兄さんの方ですよ?」

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