第2話 女子小学生相手にドキドキするわけない。
――妹の友達(小5)が、どうやら清楚系ビッチみたいだ。
『……ん、ふふ。緊張してるんですか? ……お兄さん、可愛い♡』
先日、耳が弱いという弱点がバレてからというもの、こうして家にやってきては隙を見て耳元を攻めてくる。今も、リビングのソファの隅に追いつめられて密着されている真っ最中だ。
「すすす、するわけないだろ。だってキミは小学生だし」
「ふぅん……」
すっ、と細くて小さな白い手が躊躇なく伸び、俺の大胸筋あたりに触れる。
「ファ!?」
……さすさす。
「ちょッ!」
「……あ♡ ……ドキドキ、してますよ?」
「!」
「……しかも、そーとー速いですねぇ。……『トクン、トクン』」
「や、やめろって!」
もはや懇願だが、西川さんは畳みかけるように耳元に唇を近づけてきて。
『……嘘をつくなんて、悪いお兄さんですね♡……ほのかが、お仕置きしちゃいますよ?』
「……ッ」
正直、ほどよい重さの前髪も、自然に上向いたまつ毛も。小学生と思えないほど色気に満ちたシャンプーの香りも、全部。
なんだこの子! なんか、いろいろとヤヴァイ!
◇◇◇
「……はぁ、はぁ。 しょ、小学生のくせに、高校生をからかうのは……はあんッ!」
言い切るよりも先に、ふー、と注ぎ込まれた西川さんの熱い吐息に、変な声が出た。全身を真っ赤にする俺に、
「……でもぉ、お兄さん、毎回気持ちよさそうな顔……してるよね……? ほのか、わかってますよ? ……ホントは嬉しいんですよねぇ?」
「嬉しくないし!」
「ふふ、……我慢しちゃって、……お兄さんって、『エッチですね……?』(
「……」
ぴと、と俺の胸に側頭部を当て。
「……あー♡ またドキドキしてますねぇー。……ホントもう、『ムッツリお兄さん♡』(囁き)」
――うおおおお! もう埒が明かない! 何なのこのJS! 童貞の心を弄びやがって!
「あれぇ? ……おかしいですねぇ、小学生には、興奮しないんじゃなかったんですかぁ? ……くすくす」
目を細め、顔の下半分を両手で隠しながら、俺のことをあざ笑う小5女子。俺は大きなため息をついてから、
「……そろそろ、おふざけはやめにしてくれない?」
「……なんのことですか?」
「……決まってるでしょ、いつも急にからかってくるこの一連の……」
「ビクトリィ――――ッ!!
「……」
俺の話を豪快に遮り、妹の結衣がリビングで一人満足そうに微笑む。
「あれ? どしたのおにぃ? おにぃも便秘ー? ビタミンいる?」
「……結衣を見てると、何だか心を洗われる気がするな。そうだよなぁ……小5ってやっぱ、こうじゃなきゃ」
「キモ。ねー、ほのかァ。なんかウチのおにぃキモくない?」
「えッ?」
次の瞬間、俺は信じられない光景を目撃した。
「……そんなことないよ? わたしは一人っ子だからよくわからないけど」
気恥ずかしそうに頬を染めた西川さんが、俺と結衣を交互に眺めて、ほほ笑む。
「……でも本当に仲が良さそうで、羨ましいなって思いますッ」
せ、清楚ーッ!(ドン引き)
……えと、同一人物だよね?
あとどうやら、清楚系ビッチは結衣には秘密みたいだ。
「えー要らない要らない。欲しいなら、あげるよー?」
「……ダメだよ結衣、そんなこと言っちゃ。……ね、お兄さん?」
「…………」
「何変な顔してんの、おにぃ。……ほのかー、部屋いこ?」
「あ、うん」
「……」
すれ違いざま。
『……だって、……お兄さんはもう、ほのかの、……だよね?』(囁き)
「!」
赤面して振り返ると、清楚な笑顔が返ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます