第4話

 「確か……ここから2日くらいかかるみたいです」

「結構遠いんだな……」

「そうですね……」

「ところで……君はどうして冒険者になりたいと思ったんだい?」

「えっ!?どうして……って言われましても……」

「まあ……言いたくないのであれば言わなくても構わないよ。ただの興味本位みたいなものだしね」

「えっと……実はですね……」

イーリンは語り始めた。

「私には……お兄ちゃんがいたんです。でも……5年前に突然行方不明になってしまったんです」

「お兄さんが……」

「はい……。私は必死になって探したんですが……結局見つからずじまいでした」

「なるほど……」

「でも……ある時、お姉ちゃんが言ったんです。『あなたはお兄さんの分まで生きなさい』って……」

「良いお姉さんじゃないか」

「はい!本当に自慢のお姉ちゃんです!!それで……その時に思ったんです。私も強くなって、いつかお兄ちゃんを探すんだって!!」

「それで……冒険者に?」

「はい!!最初は反対されたのですが……私があまりにもしつこいので折れてくれたんですよ!!」

「そうだったのか……。君の気持ちはよく分かったよ。俺も協力するから一緒に頑張ろうな!!」

「はい!!」

「それにしても……君たちは仲が良いんだね」

「えっ!?そ……そんなことないですよ!!」

彼女は顔を真っ赤にして否定した。

「いやいや……。とても仲が良さそうに見えるよ」

「うぅ……」

彼女は恥ずかしそうに俯いてしまった。

「あっ、もうすぐ着きますよ!」

彼女は窓の外を見て叫んだ。

「おっ、本当だ……」

俺たちは目的地に到着した。

「それじゃあ行こうか!」

「はい!」

俺たちは森の中へと入って行った。

「これは……なかなか大変な依頼になりそうだな……」

俺は目の前に現れた魔物を見ながら呟いた。

「グォオオオ!!!」

そこには……巨大な魔物の姿があった。

「これが……オークカイザー……」

俺は冷や汗を流しながら剣を構えた。

「グルルルルッ……」

オークカイザーはその巨体を揺らしながらこちらに向かってきた。

「くっ!速いな……」

俺は何とか攻撃を避けた。

「危なかったな……」

「そうですね……。このままではやられてしまうかもしれません……」

「よし!ここは連携して戦おうか!まずは俺が攻撃を仕掛けるから、君は隙をついて攻撃をしてくれ」

「わ、分かりました……」

「いくぞっ!!」

俺は勢いよく走り出した。

「ハァアアッ!!」

「グアオッ!?」

俺の攻撃によって怯んでいるうちに、彼女が後ろから飛び出してきた。

「やぁああ!!」

彼女の渾身の一撃が決まった。

「やったか!?」

「いや……まだだ!!」

「えっ!?」

「ブモオォ!!」

「きゃああ!!」

俺は彼女を庇いながら吹き飛ばされてしまった。

「ぐはぁ……」

「大丈夫ですか!?」

「ああ……。なんとかね……」

「良かったです……」

俺たちは立ち上がって構え直した。

「さて……どうしたものか……」

「何か作戦があるんですか?」

「一応考えてはあるんだけどね……」

「なら大丈夫じゃないですか!」

「はははっ、そうだといいけどね……。とりあえず……作戦通りにやってみようか」

「はい!」

俺たちは再びオークカイザーに立ち向かっていった。

「よし……今だ!」

「了解です!」

彼女はオークカイザーの後ろに回り込んだ。

「グガァ?」

オークカイザーは彼女に気づいて振り返った。

「喰らえっ!!」

その瞬間を狙って、俺は全力の一撃を放った。

「これで終わりだーっ!!!」

「グギャアアーッ!!」

オークカイザーは断末魔の叫び声を上げて倒れた。

「ふぅ……。やっと終わったね」

「はい……。お疲れ様でした」

「それにしても……強いな……。一体どうやって倒したんだ?」

「それはですね……。まず、オークカイザーが振り向いたタイミングで後ろに回ってもらいました。そして、その後すぐに私の魔法で目くらましをしてもらったんです」

「なるほど……。そういうことだったのか……」

「それから、私が囮になって注意を引きつけた後、あなたの剣技でトドメを刺すという感じで倒しました」

「完璧だな……」

「いえ……それほどでもないですよ」

俺たちは勝利に喜びながらも帰路についた。

「さすがに……今回は死ぬかと思ったよ……」

「私もです……」

俺たちはベッドの上で休憩していた。

「まさかあんなに強いとは思わなかった……」

「そうですね……」

俺たちは大きなため息をついた。

「でも……あなたがいてくれて本当に助かりました」

「そうかい?役に立てたのなら嬉しいよ……」

「あの……一つ聞いてもいいでしょうか?」

「ん?」

「どうして……私を助けてくれたのですか?」

「えっと……それは……」

俺は答えを言い淀んだ。

「どうしてなんでしょうか……。自分にもわからないんです……。ただ……放っておけなかったというのもあるのですが……」

「なるほど……」

「あなたはどうして冒険者になったのですか?」

「えっ!?」

「あっ、言いたくなければいいんですよ!?」

彼女は慌てて言った。

「いや……別に隠すことではないんだ……。少し長くなるかもしれないが……話そうか……」

「はい……」

「俺には……姉がいたんだ……。とても優しい人だった……」

「そうだったんですか……」

「だけど……ある時、彼女は突然姿を消した……」

「いなくなった……?」

「ああ……。それ以来、俺は必死に探したよ……。でも、見つからなかった……」

「それで……冒険者に?」

「そうだな……。もし、どこかにいるとしたら危険な場所だろうと思ってな……」

俺は遠くを見つめながら呟いた。

「そう……だったんですね……」

彼女は暗い表情を浮かべた。

「あっ、ごめん……。こんな話をするつもりじゃなかったんだけどな……」

俺は苦笑いをした。

「いえ……。気にしないでください」

「ありがとう……。それにしても……君の方はなぜ冒険者を?」

「私は……家族のために頑張っているだけです」

「そうなんだな……。偉いな……」

俺は素直に感心した。

「そんなことないですよ……」

「そういえば……君の名前はなんて言うんだい?」

「私の名前ですか……?」

「ああ」

「えっと……ルミアと言います」

「よろしくな、ルミア」

俺は手を差し出した。

「はい!こちらこそお願いします!」

彼女もその手を握り返した。

「ところで……ルミアはこれからどうするんだ?」

「えっ!?」

「ずっとこの宿で暮らすつもりなのかなって思ってさ……」

「そ、それは……」

彼女は言葉に詰まってしまった。

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