アフター49 「朝食後のデザート」
どこにも行くところがない、なんて言いつつも、ご飯を食べてすぐに部屋に戻る気はなかった。
なんせ夜はずっとベッドで――いや、この話はやめておこう。スッキリとした朝が、悶々とした朝になっちゃう。
「外出てみたい」
「外?寒いぞ」
「大丈夫!すぐ戻るから!」
創司くんの手を引いて外に出てみると、一面の銀世界が広がっていた。
「わあ!」
イルミネーションで煌々と照らされていた通りは朝の陽の光に変わって目がくらむほど真っ白。
無数の足跡の中に残された新雪を踏むとガリッとした感触があった。新雪の感触より近くの凍った足跡の感触でちょっと残念。
「はしゃいで転ぶなよ」
「うん!」
さらに外に出てすぐのところに大きな人型が残されていた。
「やっぱいるもんだな」
「ね」
――涼もやるんだろ?
みたいな目を創司くんが向けてきたので、私も人型の隣に背中から倒れる。
ばふっ!と音がした後に舞った雪がキラキラと視界を覆いつくす。
しばらくそのままの体勢で空を眺める。
朝になって雪が止んで一気に現実に引き戻されたような気分だったけど、こうして青い空だけを見ていると、幻想的だった夜の残滓を感じられる。
両手を伸ばしてみる。青い空は澄み切っていて、いくら伸ばしても届きそうにない。
「ん。創司くん」
「はいはい」
創司くんの顔が出てきて私の手を引っ張った。
空はいくら手を伸ばしても届かないけど、創司くんは簡単に手を取ってくれる。
「わ」
反動をつけて引っ張られた私はそのまま起き上がった。
「満足?」
「うん。あ、ちゃんといい感じにできたね」
できるだけきれいに残したいと思って、創司くんに起こしてもらったけど、思ったよりキレイに私の上半身が降り積もった雪に残った。
「んじゃあ、部屋に戻ってとりあえず朝風呂にするか」
「ん」
創司くんに雪を払ってもらって私たちはホテルの中に戻った。
で、部屋に戻ってすぐに私たちは温泉に浸かる。
「ふぃ~……やっぱ冷えてるね」
「雪が降った後だからな」
頭はキンキンに冷えた空気に冷やされて、身体は肩までお湯に浸かってぽっかぽか。このまま寝たら気持ちいいだろうなあ、と思うくらいには気持ちいい。
目を閉じると、温泉が出てくる音に混じってちゃぷちゃぷと聞こえてくる音がすぐ近くで聞こえてくる。
「ん……昨日からずっとやってるけど、楽しい?」
「楽しいっていうか、飽きない?」
お湯の中でふよふよと揺らされて、たまに敏感なところに触れられて声が出そうになるけど、なんとかガマン。
「涼だって零奈とか花音にやってんだろ?」
「そうだけど」
零奈ちんはこんな風に遊ばれるほど柔らかくないし、花音はそもそも浮いてすらいない。いや、ある。あるんだよ?あるんだけど……って話。決して高校時代の私みたいなぺったんじゃない。浮かないけど。
ん~……なんていうか、手のひらに収まってちょっと余るくらい?先っぽを手の真ん中にするといい感じに吸い付くんだよね。
「で、ムニムニと」
「そうそう」
創司くんが私の胸でやってみてるけど、さすがにお湯の浮力を感じる大きさだと余る、を通り越して零れ落ちそう。
「難しいな」
「花音サイズじゃないとダメかな。ん~順番ですぐだと乃愛もできそうかな?」
「乃愛か……アイツくすぐったがりだからなあ」
そうだっけ?
なんて思ったけど、よく考えたら乃愛はテストの罰ゲーム1回しか受けてないんだった。
ほかにも罰ゲーム付きのイベントは何度もやってるけど、乃愛だけは狙ったみたいにちょうど真ん中くらいの位置で飄々としてたな。
「もしかして乃愛って一番罰ゲーム受けてない……?」
「あ〜……かもな。試験は涼と霞ばっかだったし」
「むぅ……」
なんていうか、ズルい。
私と霞は散々いじられて、無理って言っても聞いてくれなくて、息をするのもいっぱいいっぱいだったのに。
「ひぁ!?」
そんなことを考えてると胸の先っぽに甘い刺激が走った。
下から持ち上げられてふよふよと揺らされてただけだったから、思わぬ刺激に声が出てしまった。
「な、なに!?」
身をよじって逃げようとするけど、創司くんの腕にガッチリ絞められて抜け出せない。
「んん!」
あとちょっと、ってところまで行ってもまた胸の先っぽをいじられて、力が抜けてしまう。
「ちょっ!ん!まっ!あっ!」
「つまんねえこと考えてるヒマがあるなら、どこに行くか考えろっての」
なんでわかるんだろ?
「どこって、んん!言われても……!あっ!」
あ〜……ダメ。双子みたいにずっとホテルで過ごすとかしたくない、って思ってたのに。
手のひらで転がされるような触り方で感じる甘い刺激が気持ち良くて、ずっと浸っていたくなる。
「だめぇ……」
「ぜんぜんダメって顔じゃないんだけど」
「双子と同じはしないって決めてるのにぃ……」
「じゃあ、やめる?」
先っぽに触れていた手がスッといなくなった。
「あっ……」
ずるい。
そう言われると、やめたくなくなるってわかってるでしょ。
「……」
私はお腹に回された創司くんの手を自分の胸に当てた。
顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。恥ずかしいけど、中途半端に止められるよりずっとマシ。
「正直だな」
創司くんの手に力が籠る。
ピリピリと甘い刺激が身体を駆け抜ける。
「んぁ」
もう朝だってなんてことすっかり頭から抜けていて。
私が満足したのは、お風呂とベッドを数回往復した後だった。
「んんっ!あー!あー!げふっ!ごふっ!」
「やりすぎだっての。ほれ」
時計の針がてっぺんを回って少し。
やりすぎ、って言われたけど、なにをやり過ぎたのかわからないくらい、あっという間に時間が過ぎていた。
カラカラで少し痛みを感じるくらい叫んだらしい。カラオケでもこんなに叫ぶことなんてないのに。
「んんっ!ありがと」
水が入ったコップを創司くんから受け取って一気に飲み干した。
「ぷはぁ〜……あ〜……もう1杯」
「あいよ」
すぐに渡されたもう1杯もすぐに飲み干してしまった。
「満足したようで」
「ん」
温泉なのか、運動をしたからなのかわからないけど、ぽっかぽかにあったまった。
シャワーを出して汗(とほかの液体も)を流す。
「パンツは履け……そうか」
「ん。大丈夫」
先に部屋の中に戻った創司くんが私のバックの中から下着と服を出してくれる。
プライバシーが〜とか言われそうだけど、創司くん曰く、「こっちに剥き出しの背中と尻を向けられたらまた始まるぞ」とのこと。
別にいいんだけどね?いいんだけど、それだと双子と一緒になるから自重するためなんだって。
わかるような、わからないような……、って感じだけど、やってくれるなら任せてしまう。
「ほれ。上下セットでいいんだろ?」
「うん。ありがと」
この辺、フツーの男子だったら恥ずかしがったり、気を利かせて〜みたいな雰囲気を出してくるんだろうけど、創司くんはなんていうか……無?自然に?
女子会のときに誰かに下着を取ってもらうのとおんなじ雰囲気でぽいーって感じで渡してくるから私もそのまま受け取ってしまう。
――これ、絶対双子もやってるんだろうなぁ。
って、まあ、すぐにわかっちゃうんだけどね。双子っていうより霞だろうけど。
「んしょっと!」
パンツを履いて、服を着る。今度はちゃんとした服。
「とりあえず昼にするか。もういい時間……すぎてんな」
「え?そんなわけ――」
時計を見たら14時を過ぎていた。
「ランチ、って時間じゃなくなっちゃったね」
「誰かさんがハッスルし過ぎたせいだな」
「う……」
ごもっともな指摘に私は小さくなるしかない。
「冗談だ。テキトーにぶらついて入ったことない店にするか」
「そうだね」
私たちはホテルを出て街に繰り出した。
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