アナザー1-2 「彼女なら大丈夫だろ?」
「スカートの中に入れて膝枕……?」
「ああ」
正月明け最初の講義が終わって学食で昼飯にすることになった俺は、友達の秀人(ひでと)に正月の出来事を話した。
「……それなんてギャルゲ?」
「ゲームじゃねえ。残念ながらな」
「はあ?んなわけねえだろ」
そう言って秀人はラーメンをすすった。
「幼馴染の女なんて暴力か悪口かサイフにされるだけじゃねえか」
「わかる。俺の小遣いの半分はアイツに持ってかれた……」
心当たりしかない俺は箸の先を秀人に向けて頷いた。
「だろ?それが急に膝枕?しかもスカートの中?夢でも見たんじゃねえのか?」
「と思うよなあ」
夢で片づけられればそれに越したことはない。
……ないんだが、どうにもあの感触が頭や頬、手に残ってて薄気味悪い。
なんならあの柔らかそうな白の逆三角形も目に焼き付いてて寝る寸前に蘇ってくる始末。
「むう……」
寝れないほどじゃないが、蘇ってくるときにはあの聞いたこともない声も出てきて精神的にもなかなかにダメージを負っていた。
ちなみに千聖とは正月以降顔を合わせていない。
理由はカンタンで俺が家を出て大学近くのアパートに住んでるから。
実家からそんなに距離は離れてないものの、何かするには親の目があってほしくない。
そんな理由で一人暮らしをしている。
それにほかにも理由がある。
「なんの話?」
聞こえてきた声につられて顔を上げると、人懐っこい女子の顔があった。
「莉佐?」
「なんか面白そうな話してそうだから来ちゃった」
「へへっ」と八重歯が覗く笑顔がかわいい。
「お前サボって単位落とすなよ?」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと計算してるから」
そう言って莉佐は秀人の肩を叩いた。
「あ。まだいる?ちょうどいいからご飯取ってきたいんだけど」
莉佐は手をポンと叩いた。
「行ってくれば?まだいるし」
「ラッキー!じゃあ、行ってくるね」
俺の言葉を聞いた莉佐はそう言い残して食券の販売機に向かった。
「あんなかわいい彼女がいてスカートの中に突っ込ませる幼馴染までいるのか……この世は残酷だな」
秀人はそう呟いて外に目をやった。
「お前だって人のこと言えねえだろ。ロリコンカテキョ」
「ロリコンじゃねえ。年下が好みなだけ。手は出してねえよ」
「どーだか。香織ちゃんと京香ちゃんだっけ?姉妹まとめて相手してるんだろ?」
「勉強をな。それ以上はなんもしてねえ。ってかしてるヒマねえよ」
秀人は伸びかかってるラーメンをすすった。
「なんで?」
「2人ともバカすぎて。あ~……そういやすぐテストって言ってたな。チッ!余計なこと思い出させやがって!」
「思い出せてよかったじゃねえか」
「他人事だと思って……」
秀人は頭を抱えた。ホントにキツいらしい。
が、ここだけの話、姉妹はわざと低い点を取ってるらしい。姉の香織ちゃん曰く、「そうでもしないと女の子をとっかえひっかえしそうなので」らしい。
やる気になればテストはちゃんとできるとのことで、試しに解かせたところちゃんと満点を取ってたからマジで怖い。
妹も姉と同様。テストの内容も動機も含めて。
ただ妹は中学生なんだよなあ。
高校生の姉と同じ発想の妹……。
ちょっと背筋に冷えた何かが伝う気がした。
「よいしょ~」
サンドイッチが乗ったトレイがテーブルに滑り込んできたと思ったら莉佐が俺の隣に座った。
「あれ?秀人くんまだ食べてるの?伸びてない?」
肩が触れそうな距離で莉佐が俺に聞いてきた。
「ああ。理不尽な現実を突きつけられててそれどころじゃないらしい」
「ふうん?ま、いっか。いただきまーす」
ガッチガチに固そうなフランスパンに野菜を挟みこんだサンドイッチにかぶりついた。
「んふ~」
口いっぱいに頬張って頑張って咀嚼してるだけ。なのにかわいい。
知り合ったのは高校だけど、進学先をどうするとかいろいろ話をしてるうちに親密になって付き合うようになったが、今でもこんなかわいい子が俺の彼女だという実感がない。
手を莉佐の頭に置いた。
「ん?」
リスみたいに頬袋をパンパンにした莉佐がこっちに目を向けた。
ポンポンと軽く叩いてから撫でてみる。
「んふ」
撫でただけなのに気持ちよさそうに目をつぶる莉佐。くそかわいい。
「おい。蒼(あお)。俺がいること忘れてないか?」
「忘れてない。ちゃんと気配があるのはわかってる」
「だったらイチャイチャすんな。彼女がいない俺にあてつけてるようにしか見えねえ」
俺と莉佐は目を見合わせて笑った。
「あてつけてるようにってか、あてつけてるんだよ。早くあの姉妹の想いに応えてあげたら?」
「は?」
莉佐の言葉に目を点にしてる秀人。
「なんだって?ちょっとよく聞こえなかったんだけど?」
「聞こえなかった?香織ちゃんと京香ちゃん。秀人くんのこと好きなんだよ。聞いてないの?」
「は?聞いてない。聞いてないぞ」
「んん?おかしいな。言ったって聞いたけど……」
莉佐はスマホを出してなにやらポチポチ打ちはじめた。
「おい。アイツらに聞くのはやめろ。あとで俺が聞く」
「そう?じゃあ2人にエールだけ送っとくね」
「そうしてくれ」
莉佐の好奇心に負けた秀人はため息を吐きながら伸びたラーメンをすすった。
「だたいま~」
講義が終わって一緒にアパートに帰ると、莉佐がそう言って中に入っていった。
「おかえり~ってお前んちじゃねえけどな」
「半分合ってるからいいの!とう!」
莉佐は上着を脱ぎ捨てて1Kの部屋に置かれたベッドに飛び込んだ。
スプリングで跳ねた反動でピンクの何かが見えた気がするが、目をそらして見えなかったことにする。
「そういえばさ」
「ん?」
逸らしていた目を莉佐の方に戻すと、莉佐は身体を起こして太ももを叩いた。
「してみる?膝枕」
「は?」
「や。近寄ったときにちょっとだけ聞こえたからさ。膝枕がなんとか~って」
「あ~……」
どこから聞いてたんだろう?
近づいたときっていう言葉を信じるならほとんど聞いてないと思うけど、千聖の生足で膝枕、それもスカートの中でなんて話を聞かれたとしたら怖さしかない。
「どうしたの?やんない?」
「どうぞどうぞ」とペシペシ叩く莉佐の太もも。短いスカートとニーハイの間にできた絶対領域が俺の目をくぎ付けにさせる。
「いいの?」
「いいから聞いてるんだって」
「じゃあ、失礼して」
苦笑する莉佐に断りを入れて俺は莉佐の太ももに頭を乗せた。
「おお……」
なにが「おお……」だ。
そうツッコミを入れたくなるが、そんな声が出てしまうくらい莉佐の太ももは気持ちいい。
何より仰向けで見える景色が最高。
手を伸ばすと届きそうな距離に丸いお山が2つ視界を塞いでる。
「んっ」
ぴくんと莉佐が反応した。
聞いたことのない少し高くなった声。
「かわいい、な」
「や。恥ずかし……」
顔を真っ赤にして声が漏れないようにしてるのがこれまたかわいい。
もっと見たくなった俺は無意識で伸ばしていた手に力を入れる。するとまた莉佐の身体が反応する。
「ちょっ!膝枕だけ……っ!んっ!」
ぴくんぴくん反応する莉佐の身体で遊んでるうちに頭の下がもぞもぞ動いてるのが気になった。
手はそのままに、顔だけ横にずらす。
たったそれだけなのに、莉佐の身体は反応してしまうらしい。
「んっ!ちょっ!」
ニーハイの黒が太ももの白に代わり、俺の興味はそのさらに奥へと向けられる。
赤いスカートで作られた黒い三角。白一色だった千聖とは違い、なんだか吸い込まれるような錯覚に陥る。
スカートを少しめくってみる。白い太ももがあらわになったけど、その奥はまだ黒で染められたまま見えない。
「あっ!ちょっ!」
けど、甘い莉佐の匂いが濃く感じる。
さらに奥へと頭を突っ込んだ俺はその深みへと落ちていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます