第5話

 壷の言葉は、サチの心に重く響いた。

 そうだ、自分は、独りぼっちだ。

 ととさまもかかさまも、もうここにはいない。

 サチの目から、再び涙が溢れ出す。


「あれあれ。もしや、ここに来る人間たちが怖がっとる泣き虫わらしは、あんたじゃったんか?」


 言いながら、湯呑がぴょんとサチの膝の上に飛び乗る。

 ぽたりと流れ落ちたサチの涙が、丁度ちょうど湯呑の中へと落ちた。


「サチ。おめぇさん、そげに泣くためにここに残ったのけ?」


 団扇がサチに優しい風を送りながら、穏やかに話しかける。


「ううん」

「なら、なんで残った?迎えのもんが、来たはずじゃろうに」


 団扇の優しい風に、熱を出したサチを心配して、一晩中風を送り続けてくれた、ととさまとかかさまの優しい笑顔が思い浮かんだ。


 なぜ、自分はここに残ったのか。


 記憶の中で優しく笑いかける両親の笑顔に。

 サチはとても大事なことを思い出した。

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