第4話

「なんじゃい、新入りかえ?」

「いんや、こいつはわしらとは違うようじゃの。まぁよい。こっちゃさ、来い」


 赤い鼻緒の下駄の後をついてたどり着いたのは、月明かりに照らされた、真夜中の縁側。

 そこでは、サチの記憶の中で、ととさまとかかさまが熱を出したサチに風を送ってくれた団扇うちわや、見覚えのある湯呑ゆのみ、大きなつぼなどがたくさん集まり、賑やかな会話を交わし合っていて、下駄の姿はその中に吸い込まれるようにして見えなくなってしまった。

 慌てて、柱の影に隠れたサチだったが、あの団扇がサチの姿に気づいて声を上げた。


「あんれまぁ!おめぇさん、サチじゃねぇかっ?!」

「こりゃ可愛らしいお客さんじゃの。どれ、こっちゃさ、来い」


 大きな壺が、サチを招く。

 恐る恐る側へと寄ったサチは、団扇の隣にちょこんと座ると、小さな声で尋ねた。


「なんで、お話できるの?」

「あたしらは、随分と長いことここに居るからねぇ。付喪神つくもがみになったのさ」

「つくもがみ?」

「ほうじゃ。おらたちみたいに長いことおるもんにはな、魂が宿るんじゃ。おらたちはみんな、大事に使うてもろたからのぅ、ここの人間達に。じゃけぇ、こうして付喪神となることができたんじゃ。みんな、ここの人間達には、感謝しとるんじゃよ」


 そう言いながら、近くの棚から飛び出してきたのは、古びたけん玉。


「だからの、皆でこの家を、ここの人間を、守っておるんじゃ」


 そう言った壺が、今度はサチに尋ねる。


「お前さんは、なんでまたこげなところに、独りで残っておるんじゃ?」

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