「呪う」の語源は述べるの意の「宣る」に反復・継続の語を加えたものだ。
願いを口に出すことと、継続、反復。由来に照らし合わせると、本作の呪いはとても呪術的だ。
とはいえ、祟り殺したりとは少し違う。
本作の呪術は通勤や通学、育児、社会性を担保するためだけの交際や学校生活などつまらない日常の全てを自動化する機関。再現性がないから呪術とされるだけで、とても日常的でSF的なものだ。
ふたりの呪術師たちも閑古鳥がなく個人事務所のように淡々と日常的に業務をこなす。
現代の呪術師らしい適切な距離感のふたりの関係性もとてもいい。
しかし、呪いは呪いだ。
少しの悩みと鬱屈を抱えた普通のひとに見える依頼人たちの闇が、ルーティンの自動化により浮き彫りになっていく。
呪術師たちはあえて彼らを貶めることはない。必要な注意は与えつつ、それでも手に負えない闇はどうしようもない。
ひとの望みがあるからこそ、呪いが生まれる。
一話完結の淡々とした日常に呪とホラーの本質がある良質な短編連載。
フィリップ・K・ディックのSFなどが好きなら是非。