第31話

対戦相手に沙和ちゃんがいるということを知った俺は俄然、モチベーションが上がってきた。それに加えて、晃も対戦相手らしい。多少のアップを行ってから試合がスタートする。スタメンには沙和ちゃんがいなかったが、晃とまちさんがいた。


沙和ちゃんは女バスの人と一緒にチームを応援している。俺の仲間は刈谷さんがいる。アップの時点でうまいと思っていたが、やはり強豪なだけあってスピードが速い。しかし、追いつけないというほどではない。むしろ……


「ナイス、翔!」

「ナイスパスです。刈谷さん」


俺のほうが上手い。自画自賛ではあるが、それができるくらいに練習してきた。ゴールを決めた時に沙和ちゃんのほうを見たが、悔しそうな顔をしていた。沙和ちゃんは相手にゴールを決められたとしか思っていないのだろうか?


◆◆

「沙和……さすがにさ……」

「何も言わないで。言おうとしてることは分かってるから」


正直予想外だった。ここまで翔が上手くなっているなんて。前は一瞬見ただけで、まぐれだと思っていたが、やはり上手い。それに……。


私の周りにいる女の子はみんな翔に釘づけになっていた。彼を見る目がまさにメスの顔というか、なんというか。翔の友達もかっこいいのだが、やはり私は翔のほうがかっこいいと思ってしまう。これは完全に自分の気持ちが乗ってしまっている。


「うちの晃君もまけてないよ?」


晃とは翔の友達のことだろう。彼も群を抜いて上手い。今年の一年はバケモノのようだ。男バスは強くなる。そう思った。


「でもやっぱり、翔君だよね……」

「イケメン過ぎる……」

「待って!?こっち向いてた?」


このままでは、翔がモテてしまう。外せ……。そんなことを思ってしまった。年上として大人げない。しかし、そんな私の願いはむなしく翔のシュートはゴールに吸い込まれていった。


その時に私は悔しい顔をしてしまった。普通、知っている後輩が決めたら笑ってあげるのに……。それに運悪く、翔に見られてしまっていたようだった。絶対、感じ悪かったよね……。最悪。


そんなことを思っていると、交代の時間がやってきたようだ。翔は下がるのかと思ったが、連続で出場らしい。晃という友達もそのままでるらしく元気いっぱいだなあと思った。


何も考えず、コート上に立っていると挑発するように翔が声をかけてきた。


「沙和ちゃん、本気で行くから」

「かかってきなさい」


私は笑って見せたが、自信はなかった。けど、いつも通りのプレーをすれば大丈夫。逆にかっこいいと思わせてやるんだから。


コート上で不気味に二人は笑っていたという。


◆◆

星が欲しい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る