第30話
俺たちは刈谷先輩に連れられて向かった先は体育館だった。俺と晃は目を合わせて、逃亡することを決意した。刈谷先輩は女バスとの交流会と嘘をついて男バスの練習に誘い出したのだ。
「おいおい、勘違いするなよ。場所は体育館だが交流会なのは間違いないからな」
「先輩、さすがに嘘はやめてくださいよ。見渡す限り、暑苦しい男しかいないじゃないですか?」
「俺は、可愛い先輩にお世話されるために……」
俺たちがわがままを言ってごねていると、後ろから女の人の声がした。体操服を着たショートカットの女の人だった。俺たちよりかは、年上だった。
「おうおう、刈谷ー!これが期待の一年か?私のお眼鏡にかなうかなー?」
「あぁ。間違いないよ。今回は負けないからな」
彼女は多分だが、女バスのキャプテンなんだろう。体つきから、運動ができるのはわかる。後、気になるのは勝負するなどといっているところである。俺が想像していたのはおしゃべり会みたいなもので……。
「交流会の内容は男女混合の部長戦だ」
「毎年恒例なんだよ。1、2、3年で代表だけが出席して、ガチンコ勝負。負けたほうの部長が相手チーム全員にジュースを奢るっていうね?」
そういって、先輩たちは火花を散らしている。しかし、名目上はそうなっているが一応交流会であることは間違いないだろう。代表といっているが、上手い人が選ばれるのなら、間違いなく沙和ちゃんは入っているだろう。
そんなことを思っていたら、女バスの集団の中に沙和ちゃんがいることを確認した。
「そうだ?沙和にかっこいいところを見せられるチャンスだとは思うのだが?」
刈谷先輩は俺の心を見透かしたように笑いながら問いかけてくる。俺の答えなど分かっているはずなのに。
「お前はうちの沙和を狙っているのか?沙和はなー。可愛いからなー」
そういって、女バスのキャプテンは笑った。俺は彼女に大きく賛同していると、沙和ちゃんがこちらに向かってきた。おそらく、俺には気づいていないらしい。まちと呼ばれている、女バスのキャプテンのもとに向かった。
「まちー!今年こそは女バスの勝利だよー!」
「おお、沙和は気合が入っているねー。今年は一緒のチームだからねー」
そういって、手を握り合って跳ねている。こういうJKのじゃれあいはなんと尊いのだろうか?いつまでも見てられる。そんなことを思っていると晃も同じ気持ちだったのか、見つめていた。
そんなことをしていると、まちさんから俺たちの紹介が入った。
「あ!あと、この二人も参加するみたいだから」
「ほほう?今年の一年はどんな奴なのかにゃッ?」
沙和ちゃんは俺のことを見るなり、後ろに飛んだ。後ずさったのだ。その謎の行動にみんなが俺のほうを見る。
「翔だったのかー。期待の一年生っていうのは……あはは」
「彼が夏目翔くんかー」
彼女たちは目を合わせる。何かのコンタクトが行われているようだったが、何かはわからなかった。
「大変だったんだよー夏目君。沙和ったら、帰ってくるなり、ずっとうわの空だし、あとおっきい体の抱き心地がッ
「おいこら、まちーー?」
目をぐるぐるに回して、顔を真っ赤にした沙和ちゃんがまちさんの首根っこをつかんだ。
「う、うわ!ご、ごめん。つ、つい……あはは」
「じゃ、じゃあね。負けないから」
それだけ言って、沙和ちゃんは行ってしまった。俺は晃のほうを見ると彼はもうそこにはいなかった。女バスのほうに向かって突撃していた。
「ちなみに翔は俺のチームだからな♡」
刈谷先輩はにこやかに笑った。しかし、そんなことはどうでもいいくらいに沙和ちゃんがかわいかった。
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