第24話

俺のことをチラチラと見てくる。まだ慣れていないのがばれているのか……。まぁはっきり言って、まだ俺は都会の雰囲気に慣れない。


今でも高いビルを眺めてしまう。でも田舎者って、バレてもいいかって最近は思い始めた。


「まじで都会って凄いですよね。こんなに家がいっぱいあって。みんな家族で、おじいちゃんおばあちゃんじゃないですし」

「普通じゃないんですか?」


驚いた顔をして、疑問を返す中尾さん。ずっとここに住んでいたのならそうなのだろう。


「いや、俺の住んでた島はすれ違う人は定年迎えてる人しかいなかったです、ほとんど」


俺がそんなことを言っていると、あっという間に学校に着いてしまった。俺がそのまま入ろうとすると、中尾さんが立ち止まった。


「じゃあ夏目くんが先に行って下さい」

「え?なんでですか?」

「え……だって、とにかくです!」


そう言って動かない中尾さん。仕方が無いので俺は行くことにした。俺が中尾さんに手を振ると、俺にしか見えないくらいの小さな動きで、手を振り返してきた。


なんか友達っぽいっ!


俺はそんなことを思いながら、教室へと入っていった。俺の席には何故か眼鏡をかけたイケメン青年が座っていた。


「晃……。そこをどいてくれないと俺が座れない」

「絶対に嫌だ!好きな人がいるって言ってたのに、中尾さんに早速、手を出してるやつの席なんてない」

「よぉーし、じゃあお前の上から座るからな」


俺は晃がいるのだが上から座ってやった。じたばたしてもがいているが逃がさない。ついには抵抗をやめて、体を俺に預けてきた。


「なんかお前、いい匂いするな。これは……女の匂いなのか!」

「違うわっ!何も根拠に」

「こいつやばい!高校生じゃないぞぉ!」


そんなことを騒ぎ立てる晃。俺の青春をなんとしてでも潰したいらしい。だが、そんな思惑は予想外の展開で裏切られる。


「あそこデキてるんじゃない?メガネ系イケメンとSっぽい男子って必然的に推せる」

「てぇてぇよねぇ……」


そんなことを言いながら、尊まれる視線を送られている。そのことに気づいたのか、俺の事を抱き上げて、自分の席へとそそくさと移動していく晃。


「なんか、悪かったな。俺ら、そんなんじゃないよな?」

「え、俺とは遊びだったの?」


俺は一応、丁寧に振られたボケをしっかり回収しただけだが、晃は焦りに焦っている。首をブンブン横に振っていた。


「お前ってもしかして……」


そう晃が言いかけた時に、クラスメイトの女の子1が俺の事を呼んでいた。


「夏目くんー!3年生の先輩が呼んでる!」

「おっけー。今行く!」


俺がそう言って行こうとすると、晃がつぶやくのだった。


「お前はやっぱり女たらしだよ。許せん」

「俺は好きな人がいるからな。たらしてなどいない」

「もう……○ね!」


公共の電波に載せられない言葉を俺に向かって吐いた晃。俺は本当に一途なのに。それよりなんだろうか。


先輩なんて俺が知っているのは一人しかいない。それは沙和ちゃんだけである。楽しみだなぁ。俺はルンルン気分で廊下へと向かった。


◆◆

星が欲しい


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