第23話
俺が沙和ちゃんの尊さに浸っていると、玄関のチャイムがなった。沙和ちゃんが宅急便を頼んだのかと思い、インターホンに向かっていく。
そこには、金髪の美少女が玄関の先にたっていた。目を軽く泳がせながら、髪の毛の先を指先でいじる。
「中尾さん?」
「あ!夏目くんですか?あの……一緒に登校しませんか?」
インターホン越しに聞こえる声。一緒に登校ってこんなことがあっていいのか。これってもしかして……。
「俺の夢を叶えてくれるんですね、中尾さん!」
「うへぇっ!?夢って……分かりませんけど、多分、そうです」
前から夢だったんだよ!学校に友達と一緒に登校すること。
待ち合わせとかしたことなかったからな。沙和ちゃんの事を毎日、家の前で待ってたからだけど。
「ちょっと待っててください、すぐに行きます」
俺が急いでリュックを取りに行くと、髪の毛をセットしている沙和ちゃんに止められる。
そして急いで、用意をし始めた俺に髪の毛を巻きながら質問する。
「さっきのチャイムなんだったの?宅急便?受け取ってくれた?」
「いや?普通に俺の友達が迎えにきたから」
俺がそう言うと、沙和ちゃんは俺にそっぽを向きながら、つぶやくように、且つ俺に聞こえる大きさで言うのだった。
「……ともだちぃ?ふーん。なんか今日、翔、かっこいいね」
「え、あ、ありがとう。んじゃ、行ってきます」
それだけ言うと、興味もなさそうに鏡の自分と対面している沙和ちゃんから離れる。早く行かないといけない。
玄関先で待たせるなんて。いくら春になったといえど、まだ寒い。
俺はまだ硬いローファーを足に馴染ませると、同時に玄関を開けた。そこにはやはり金髪の少女が風に髪をなびかせているわけで。
外は寒いと言うのに、若干の火照りを帯びている中尾さん。カイロでも持っているのだろうか。
「おはよう。中尾さん」
「夏目くん、おはようございます。では行きましょうか」
その言葉に頷くと、俺は玄関からもう一度言うのだった。その返事は帰ってくることは無かったけれど。
「行ってきます!」
◆
一方、沙和ちゃんはまだまだ髪を巻き続けていた。精神を落ち着かせるためと言ってもいい。一度は口に出そうかと思ってやめた……
『待って、私も一緒に……』
という言葉を頭からかき消すために。別に特別な気持ちなんてないけど、何故か少しモヤモヤする。
少しだけため息をつくと、少し鼻につく匂いがして気がつく。何かが焦げている!?
「やばぁっいぃ、!」
なんという失態……。髪の毛が焦げていた。
「なんなのよ、もう……」
◆◆
星が欲しい。って久しぶりの投稿で言ってみました。すみません。
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