第22話
「どうやったら目玉焼きがそうなるのよ……。それはスクランブルエッグって言ってね?」
「そんなことを言われてもこうなったんだから仕方ないと思う」
ぐちゃぐちゃになってしまった卵を見つめて、俺はそう思った。そういや、料理なんてまともにしてこなかったな。
「まぁ、これから上手くなっていけばいいから。良かったら私が教えてあげようか?砂糖と塩も分からない女ですが……」
そう言って、沙和ちゃんは自傷気味に笑った。俺にとっては魅力的すぎる提案である。
合法的に沙和ちゃんと一緒にいられるし、料理まで上手くなれるという一石二鳥な提案。
「じゃあ愛情のこめ方でも教えてもらおうかな?沙和ちゃんのハンバーグ凄く美味しかったし、そのに秘密があると睨んだ……」
俺がそう言うと、頬を指でかきながら恥ずかしそうに照れながら沙和ちゃんは答える。
「そ、そう?美味しかったかぁ…っ///愛情を込めるにはその人が食べてくれた時の笑顔を思い浮かべてって……なわけないから!」
そう言って、勢いよくサラダを冷水につけた。水が自分に跳ねてきて、それを袖で拭っている。赤くなった顔がまた沙和ちゃんの可愛さを加速している。
「俺がそんなことしてたら妄想の沙和ちゃんに夢中になって料理が進まない」
「あぁ、もう!そんなお世辞はいいから……ていうかそんなことありえないし」
そんなくだらない会話をしていると、どこかから焦げたような匂いがしてきた。俺が沙和ちゃんの顔を覗いてみると、どんどん顔が青くなっていく。
「食パンがぁー!」
取り出した時には香ばしいを通り越した黒い何かが取り出されていた。沙和ちゃんは落ち込んで、背中をしゅん、と丸めていた。
◆◆
「ごめんなさい……やっちゃった」
ペコりと申し訳なさそうに頭を下げた。
「全然いいよ。俺は沙和ちゃんと一緒に食べれるだけで美味しいから。それにスプーンで焦げを落としたらさ、良くなったじゃん」
俺がそう言うと、沙和ちゃんはニコッと笑って見せた。やはり申し訳そうな顔より笑っている方が好きだ。
「まぁ、そうだね。でも私がこんなヘマをするとは……絶対に翔のせいだ!」
沙和ちゃんは食パンに、かぶりつきながらそう言った。
「そうだろうね。俺の笑顔のことでも妄想してたのかな?」
俺がそう言うと、沙和ちゃんは食パンを喉に詰まらせてむせてしまった。
「ゴホッゴホッ!は、はぁ!?ち、違うし。もう早く学校行こ……」
沙和ちゃんはコーヒーを飲んで席を立ってしまった。俺の作ったスクランブルエッグも食べてくれたらしい。
「まぁ、目玉焼きも美味しかったんじゃない?」
髪の毛の先をクルクルと指先で遊ばせながら、言ってくれたのだった。逃げるようにこの場を去った沙和ちゃんを見て翔はつぶやくのだった。
「尊すぎて死ぬ……」
◆◆
星が欲しい。
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