第17話

まだ子供編です。これが終わったらまた戻りますね。ではどうぞ。


♣♣

ある日の事だった。いつも通り、翔がバスケの練習をするために公園へと向かうと、そこには沙和ちゃんがいた。それも前に揉めた男二人組と一緒に。


翔が目を凝らしてよく見てみると、2VS1の戦いをしていた。当然、戦況は押されているらしく、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべてパスを回して、さわちゃんが疲れるのを狙っているらしい。


「卑怯だぞ!正々堂々と戦え」

「正々堂々と戦ってるけど?それとも取れない言い訳かな?」


そんなことを言って煽る二人組。翔が周りを見てみると泣いている小さな女の子がいる。翔と同い年くらいで、その手にはバスケットボールが握られており、そのことから大体のことが理解出来た。


「僕も混ぜて」


翔がそういうと、パス回しをしていた手は止まり驚きの表情を浮かべ、沙和ちゃんは汗を拭う。


「あぁ?おっ!この前の雑魚ガキじゃん」

「お友達の女の子が困ってるから颯爽に登場ってか。それ、バスケが上手いやつがやることだぜ」


そんなことを言って笑った。とりあえず歓迎されているということにした翔は黙ってさわちゃんの横に立つ。


「さわちゃん、僕に任せて」

「で、でも……しょうは」


さわちゃんが喋り終わる前に、男がドリブルを開始する。2人組になったということで、パスは出しにくくなっただろう。


さわちゃんがドリブルで抜かれて、シュートを打つ姿勢に入る。男は油断して一瞬だけスピードを緩める。その瞬間を狙った。


「うわっ、まじか」


ボールをはじき飛ばし、攻撃に転ずる。ドリブルなんて練習する暇なんてなかったから、素人に毛が生えたレベル。


すぐに取られてしまうので、唯一練習したシュートをスリーポイントを放つ。練習でも入ったことがないシュート。


でもさわちゃんにカッコつけたいという気持ちから、まぐれのシュートがゴールに入った。


「す、すごいっ!すごいよ!しょう!」


そう言ってさわちゃんは翔の手を取ってピョンピョンと跳ねる。男二人組は一回り下の男の子に負けたのがショックだったのか、立ち尽くしてる。


「あれだけイキってて、年下にボコられるとかだっさ!ココはあの子の場所だから、他のところに行ってくれるかな」


いつもは冷静なさわちゃんが煽り口調で、男たちに言い放つ。男二人組は周りの視線が痛かったのか、何も言わずにここから立ち去ったのだった。


「しょうくん!かっこいいぃー!教えてよ、バスケットボール!」


さっきまで座っていた女の子が、立ち上がって翔に近づいてくる。翔は努力が報われた気がした。


女の子の友達なんて居なかったからと、いうのもあるかもしれないが、それよりもさわちゃんにいい所を見せられたと言うことが嬉しかった。


だけどさわちゃんは軽く、女の子のことを威圧する。


「少女ちゃん?この男の子は私と遊ぶからダメなの」

「占領しちゃダメなんだよ?さっきお姉ちゃんが言ってたでしょ」


そんなふうに論破されて、何も言えなくなったさわちゃんに思わず……。


「くくくっアッハッハッハッハッ!」


翔は爆笑してしまったのだった。


♣♣

星が欲しい(定期)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る