第16話
これは翔と沙和がまだ小さかった頃のお話です。
♣
翔とさわちゃんは公園で暑い夏を過ごしていた。翔はゲーム小僧なので、常に家にひきこもっているのだが、いつも翔の家にさわちゃんが訪ねてきて連れ出すのだった。
公園のベンチで座っていると、唐突に翔の腕をさわちゃんは掴む。そしてため息をつく。
「そんなもやしっ子だから虐められるんだよ。腕だってこんなに細いし」
「そんなこと言ったってさ……」
翔がいつも通り弱音を吐いていると、さわちゃんは立ち上がって細い翔の腕を掴んで言う。
「バスケしよ!」
空いている腕でバスケットボールを持ってそう言う。ほらほらと勧めてくるさわちゃんに対して、嫌がる翔という構図。
「僕、運動できないし嫌だよぉぉお」
「そんな事言わないの!やらなきゃ一生出来ないよ」
そんなことを言うさわちゃんだが、一向に動こうとしない翔を見て機転を利かすのだった。
「じゃあお姉ちゃんだけバスケしに行こっー!男の子たちと遊ぼぉー!」
「ヤダヤダ!僕も行く。一緒に遊ぼ」
どこかへと行こうとするさわちゃんに抱きつく翔。高校生になった今の翔ではこんなことは出来ないから、この部分は劣化したのかもしれない。
「うん。じゃあ練習しよっか。お姉ちゃんが特訓をつけてあげる」
「しんどいのは嫌だよ」
「お姉ちゃんが怖い人に襲われてたら、助けてくれるんでしょ」
そう言って、ボールを地面につきながら行ってしまう。それについて行くようにして翔はパタパタと走る。
やはりさわちゃんは運動神経がよく動きはキレキレだ。一方、もやしっ子こと、翔は運動神経は皆無でさわちゃんにいとも簡単に抜かれてしまう。
「翔は下手くそだなー!」
そう言って声を上げてさわちゃんは笑った。翔は笑われることを、嫌だと思ってなかった。
下手くそなのは事実なので、諦めていてさわちゃんと遊んでいるということ自体が楽しかったから。
そんな時、この幸せな空間を潰す2人組が現れる。さわちゃんと同じ歳位の男二人。
「そこどけ!そこは俺たちが使うんだ!」
そう言ってゴール下を陣取る。それに抗議の声を上げたのはさわちゃん。
「ここは私たちが最初に使ってたの。他の所を使ってくれない?」
さわちゃんが優しく言うと、そんなことに聞く耳を持たない二人はさわちゃんの言葉を汚い声で笑い飛ばす。
「いや、ここが一番新しいゴールだからよ。下手くそは良いゴールじゃなくてもいいしな」
「言えてる!アッハッハッハッハッ」
さわちゃんは悔しそうな顔をしていた。それをただ見ることしか出来ない翔。
「じゃあ俺たちと2VS2して勝った方が使うってことでいいじゃないか」
「そ、そんなの……」
「え、負けるのが怖いの?」
「やる、やろ、翔!」
挑発に乗ってしまったさわちゃんと無理やり巻き込まれてしまった翔。この2VS2は言わなくてもわかると思うがぼろ負けした。
「危なかったな。あの女、馬鹿みたいに上手かった。横に雑魚がいなかったら負けてたかもな」
「それなぁ」
そんなことを言って、勝った二人組はバスケコートを使い始めた。さわちゃんは悔しそうにしながら、コートをどいた。
「ごめん、さわちゃん。僕が弱いから」
「違うよ。お姉ちゃんが弱かっただけ。しょうは何も悪くないよ」
そんなことをさわちゃんが言うが、翔が足を引っ張っていたのは本人も認識している。そこから翔の個人的バスケ特訓が始まるのだった。
♣♣
子供編続けて欲しいって声が多かったら続けます。
星が欲しい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます