第13話

沙和ちゃんと別れてから、バスケ部の体験に行った。晃もバスケ部に入りたいらしく、体験に来ていた。


入りたい一年生の中で練習試合をしたのだが、全然やる気が出ない。周りがあまり上手くないからというのもあるが、根本的に何か目標がないと頑張ることが出来ない人間だからな。


俺たちの試合を見ていた二年生の先輩が隣の人になかなかの声量で話しかける。


「お、女バスが来たぞ。男バスは女バスと付き合うのが一番の成功例だからなぁ。まじで可愛い子多いし」

「マジでそれな」


そんな声が聞こえる。もしかして沙和ちゃんがいるかもしれない。試合そっちのけで見てみるとやはりいた。


バスケを始めたのだって、沙和ちゃんがやっていたからって理由だし。髪くくってるじゃん。可愛すぎるだろ……。


そんなことを思って見ていると、沙和ちゃんと目が合った。心臓がはねるのを感じる。最高すぎる……。


沙和ちゃんは何かを警戒するように周りをキョロキョロするとニコッと笑ってから小さく手を振ってくれた。


……見ていてくれ、沙和ちゃん。


「パス、俺に出せ!」


叫ぶ。俺の威圧に仲間は無意識にパスを出す。リズム良くボールを地面につく。長く息をついてから、一気にスピードをあげる。


敵をすり抜けるようにドリブルを開始する。翔の息をつく暇も与えないドリブル。


そしてすぐにゴール下にたどり着き、レイアップ。ボールは吸い込まれるように輪へと入っていった。


「あ、あいつ……上手いぞ。将来、うちの七番を背負う男になるかもな」

「……俺、スタメン取られるわ」


先輩たちがそんなことを言っていたがそんなことはどうだっていい。沙和ちゃんが見てくれていたがどうかが心配だ。


俺は女バスのほうを見ると、沙和ちゃんはこっちを向いてガッツポーズをした。可愛く笑って。


爽やかに沙和ちゃんに笑いかけようとしたが、ボールがきたのですぐにディフェンスへと移らなければならなかった。


「俺の幸せの時間を邪魔するなぁー!」


その後、俺を中心にボールが周り、晃と俺のチームは圧倒し勝利した。気がついたときには女バスの練習が始まっており、残念ながら話すことは出来なかった。


呆れて帰ろうと思ったら、三年生の先輩が話しかけてきた。俺より身長は高くて、イケメンの先輩だ。背番号は四番。多分、キャプテン。


「お前は、どこの部活に入ろうと思っているんだ。バスケ部に入る気は無いのか?」

「入る気は無いと言ったら嘘になります。でも俺は頑張って女バスのマネージャー募集に応募しようと思います」


俺が至って真面目な回答をすると、イケメンの先輩は大きな声を出して笑った。


「アッハッハッハッハッ!お前、気に入った!俺は刈谷蒼介かりやそうすけ。いつでもお前を待っておくぞ」

「そっすか。分かりました」

「おう!期待してるぞぉ…」


そういって俺の背中をバンバンと叩いた。期待されても困る。俺は逃げるようにバスケ部を出た。

女バスの練習がちょうど終わったので待っておこうか迷ったが、沙和ちゃんがチームメイトと帰るのなら迷惑をかけてはいけないと思い、一人で帰ることにした。


俺はスタスタと校門の方に歩いていくと、金髪の女の子こと、中尾さんが一人で本を読んで歩いていた。


「中尾さん!」

「あっ、夏目くん。部活は終わったんですか?一緒に帰りましょうか」


そう言って、本をカバンにしまう中尾さん。太陽が沈もうとしている夕焼けの中、女子と二人で帰るという青春を翔はしていた。


♣♣

星が欲しい(ダジャレ)




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