第14話

中尾さんの小さめの歩幅に合わせるように、歩くスピードを落とす。家帰るのが遅くなりそうだが、どうせまだ沙和ちゃんは帰ってこないだろうしいいだろう。


「夏目くんはバスケ部に入るんですか?」

「なんで知ってるの!?」


そういうと右手で右目の隠した。そして中尾さんはキメ顔をすると、つぶやくように言い放った。


「ふふふ…私には心が読める力があるのです」

「ま、まさか超能力の使い手!?」

「な、わけないです。普通にバスケ部のキャプテンさんと話しているところを見ただけです」


そう言ってクスリと笑ってみせる中尾さん。無邪気な笑顔はいとも簡単に男の子の心を揺さぶるのだ。特に童貞の男子は……。


俺には沙和ちゃんという心に決めた人がいるんだ。揺らぐ訳にはいかぬ。


「まぁ、バスケ部もまだ悩んでるんだけどね。で、中尾さんは何部に入るの?」

「私は料理部でしょうか?人数がいないとかで廃部になるらしいんですけど……」


そう言って小さくため息をつく。料理部か。どんなものか興味があるけど、センスないからなぁ。才能は開花させるものだけど……うん。


「それは大変だな。何か手伝うことがあったらいつでも言ってくれ」

「ありがとうございます」


そんなことを言いながら帰っていた。意外と静かな中尾さんも話してみると面白く、会話が弾んだ。そんな中、雰囲気が穏やかではない人が一人いた。


「え、待って。あれって沙和の想い人じゃね?」


女バスのチームメイトが指を指す。女バスの間ではすぐに広がってしまった……。女子は恋愛の話などには目がないのだ。


別に良いんだけど……というか!別にあんなガキは好きじゃないし、私は大人の紳士な人がいいって言うか……。え、あれって本当に翔なの?


「女の子とふたりで帰って……?」


私は言葉を失った。入学式一日目で女の子と一緒に帰るってどういう神経してるの?チャラ男なの?


「うわぁーっ!沙和がうだうだしてたらあの金髪美人ちゃんに取られちゃうよ?」

「ていうかもう、取られちゃってるかもねぇ」


女バスの子達が私のことを虐める。いいもん。翔が別の女の子を好きだったって。そんなの知らない。私には関係ないよ。だってただの弟だし。どうだっていい。そう思っているのに!


「翔はあんな女の子になびかない子だもん」


私の口から出た言葉は真逆だった。なんでこんなことを言ってしまったのか。なんか萌えキャラみたいになってるし……。


「「可愛いかよ!」」


女バスの子たちは、そういうと私に抱きついてきた。百合漫画が好きな人にとっては最高の光景だろう。

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