第12話
「夏目翔だ。よろしく」
中尾さんに挨拶した後、すぐに担任の先生が入ってきて入学式のホームルームが終わった。最初なので顔合わせのみらしい。
教科書が配り終わると、各自解散とのことだ。クラブ体験とかはこの後にあるらしいので、残る子は残ってって、感じだ。
どのクラブの体験に行くか迷っていると後ろから小さい声で晃が話しかけてきた。
「どういうことだよ、翔……。なんであの金髪美少女ちゃんと知り合いなんだよぉ」
羨ましそうに言う晃。そんなことを言われても……。俺の肩をシャープペンシルの裏で突いてくる。
「同じマンションに住んでるだけだよ。会ったのだって今日で二回目だし。そ、それより可愛い女の子探しに行こ?な?」
俺がそう言うと、表情を180度変えた晃は明るい顔になった。そしてリュックを手に取ると、すくっと立ち上がって元気満々に、
「そうだな!先輩もいることだし、見に行くか。可愛い子いるかなぁ……」
そういうと晃は俺の手をとって教室から連れ出した。
引きずられていく俺に、スマホから目を上げた中尾さんは小さく手を振って、「またあした。」と口パクで伝えてきた。俺も引きずられながら、手を振っておいた。
♣♣
「高校三年生って迫力あるな……。お前の横じゃないとビビってたぜ、俺」
そう言って若干、背伸び気味の晃。普通に晃も高校一年生にしては高い方だが、高校三年生に比べれば低い。俺は178cmくらいあるので、低いとまではいかない。というか高いくらいである。
「えぐ、銀髪の子とかいるじゃん。やっぱ偏差値高いと髪を染めたりするの自由になるからなぁ。俺、あの銀髪の子、推しだわ」
「俺は……あの子かな」
茶髪のツインテールの女の子を指さす。目がクリっとしていて、少し大人びた感じ。ス〇バとかで長い注文してそうな人だ。
「声かけにいこーぜ。翔、お前がいけ。茶髪の子かわいーじゃん」
そう言って、背中をグイグイ押してくる晃。さすがに高校三年生相手は普通に怖い。男子生徒もいるし。
田舎者がそんな度胸のあることを出来るわけない。晃の方を振り向いて抗議しよう、そう決めて後ろを向くと、知ってる顔がいた。
「翔、私の友達をナンパしよーとしてたのかな?」
眉毛をピクピクさせて、俺の方を不気味な笑顔でお出迎えしてくれるのは俺の同居人。そして俺の好きな人。
「沙和ちゃん!」
「少年、ちょっと翔、借りていいかな?」
そういうと俺について来いと言わんばかりの視線を送る沙和ちゃんと、縦に頷く晃。晃はなんか沙和ちゃんを恐れているような気がした。
俺は親ガモについて行くようにして沙和ちゃんの後につづく。屋上のドアの前の非常階段の踊り場のところまで来ると、沙和ちゃんは立ち止まって俺の方を振り返った。
「何、私の友達に手を出そうとしてるの」
「いや、違うくて。誰が可愛いかって聞かれたから答えたまでで」
手振り身振りを使って、沙和ちゃんの誤解を解こうと努力する。沙和ちゃんはまだ不機嫌そうな顔だ。そしてつぶやくようにして言うのだった。
「……どっち」
「ん、なんか言った?」
「茶髪の子と私ならどっちの方が可愛いの」
なんて言うのだった。これは嫉妬とか言うやつなのか。いや違うな。普通に女子のマウントとやらの取り合いだろう。まぁ俺は考える暇もなく答えるけど。
「そんなの沙和ちゃんに決まってる」
「そ、そっか。へぇー」
「んじゃ、俺は行くね」
「言っとくけど、さっきの質問には別に深い意味は無いから」
それだけ言うと、沙和ちゃんは走ってどこかへといってしまった。晃とも別れてしまったし、どうしようか。とりあえず、教室に戻るか。俺は教室へと歩みを進めた。
一方、沙和ちゃんはと言うと……。
茶髪の女の子を含めた女の子のグループと話していた。茶髪の女の子はさっきのことについて話していた。
「さっきのイケメンの1年生の子、私の事指さしてたけど脈アリじゃない?狙っちゃおっかなぁ」
「……いやぁ、あの子はやめた方がいいと思うよぉ?」
沙和は明らかな動揺を見せて言う。
「ん?あ、そういや、沙和。あの子と知り合いだったよね。何、何?もしかして好きだったりする?茨の女王にそんなことあるわけ…へ?」
茶髪の女の子は沙和の顔を見て話すのを止めてしまう。何故かって、沙和がやばいくらいの乙女の顔をしていたからであろう。
「な、ないからっ///そんなの…あるわけない」
この時にいた女子全員が思った。尊すぎると。
♣♣
星が欲しい。
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