僕だって叫びたい
みゐ
僕だって叫びたい
ねぇ、お母さん。何で僕は産まれたの?何でこんな不自由ばかりの世界に産まれたの。神様はどこで何を間違えたの。どうして、僕はこんなに歪なの。
産まれる前のお腹にいた頃のことなんてうろ覚えだし、神様だって本当にいると思ってないけれど。もし神様が間違えたのなら、僕はその神様とともに死んでしまいたい。
神様が示す、産まれたときの様々なことに関する分かれ道があるとして、人は皆その道をたどってから産まれていくと思う。『性別はどちらか』の二択から始まって、『兄弟は何人か』『体格はどのタイプがいいか』『両親はどんな人物がいいか』とか、どんどん道が続いて、最終的に一番合う家庭が見つかるような。
一つ目の『性別はどちらか』から、僕は間違えたのだと思う。女と男の道がある中で、多分その間の茂みにズカズカ入ったのだろう。だから今、こんなに困っている。男にしては小さい体と、男でいたくない僕。自分の中にすごい矛盾がある時点でおかしいと思わない?そこで神様が修正してくれたら良かったのに。ちょっとつまんで正しい道に置くだけ。
二つ目、『兄弟は何人か』。これは正解した。二人と選んで、お姉ちゃんと弟がいる。二人といると退屈しないで楽しい上に、僕は真ん中っ子だから得している気がする。お姉ちゃんみたいにしっかりしてって言われることも、弟みたいにお下がりの物が多くることもない。
三つ目、『体格はどんなタイプか』。どんなタイプなんて聞き方は曖昧すぎると思うけれど、これは間違えたんだ。少し小柄で、男にしては弱々しい見た目。それは体格の選択を間違えたせいなのだろうし、女用の道を進んだのだと思う。
こんな感じで沢山の道を選んでは進んで、どれくらい歩くのかは忘れたけれど歩いているうちに周りから人がいなくなっていく。僕と同じ道を歩き続ける人はいなかったから、双子の兄弟はできなかったんだ。
ねぇ神様、なんで修正してくれなかったの?周りと違う僕を見ていて楽しかったの。実験を見ているような気分で、それは今も続いてるの。だからこんなに僕ばっかり苦しいの。お母さんもお父さんも僕をしっかり愛して、いつも見てくれているけれど、それだけじゃ苦しみって補えない。学校で仲間外れにされたり、性別でどこにも所属できなかったり、体が弱いせいで満足に運動もできない。こんなのつまらないよ。
今日も僕はちゃんと学校に行く。スニーカーを履いて家を出て、小さな道に出る。学校への通学路は決まっているけれど、僕はそんなの無視して分かれ道を毎日違うように進む。途中でクラスメイトを見かけたら違う道に進んで、猫が見えたらついて行く。あいにく今日も遅刻したけれど、遅刻したくらいで僕の評価は下がらない。もうとっくに下がりきっているから。
いつものことだけれど、教室に僕の机はない。ある日教室に入ったら、僕の机は行ったらいつの間にかなくなっていて、僕の名前も呼ばれなくなった。その代わりに教室の後ろに花が置かれるようになっていて、僕は花と同じくらいの価値しかないと見せられているようだった。だから花が置かれている机に座って、行儀が悪いけれど授業を受ける。僕の席がないんだからしょうがない。算数はとても簡単でつまらないし、図工で僕の材料はないけれど、一日中そこにいる。
学校が終わって帰るとき、朝見た猫をまた見かけた。猫はこっちをじーっと見つめて、近寄ってくる。けれど僕の横を通り過ぎてしまった。
家に帰ると、何やら業者さんが来ていた。おっきい黒い何かを家に運んでいる。お母さんは写真を持って、悲しそうにしている。
仏壇。いつだか行ったお祖父ちゃんの家にもあったけれど、今まで家にはなかった。そっか。いい加減この生活を抜け出さなきゃいけないんだ。もう認識してもらえないし、僕を見て笑ってくれないから、いかなきゃいけない。
さいごに気づいてモラエたらいいな。大キナ声ヲ出したらワかって、くれルかな。
神さま、ツギは道ヲ間違えテモ、ちゃんと、治しテネ。
僕だって叫びたい みゐ @tuki_bi-al
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