第12話「アイス」
美世「アイス食べたいー」
理子「我慢しな」
美世「暑すぎてこのままだと私が溶けてしまうよ。ドロドロになってしまいますよ」
理子「大丈夫だよ。美世の存在はこの暑さ程度じゃ溶けたりしない」
美世「えー。ドロドロなんですけど……」
理子「美世は美世だから」
美世「理子。私が消えてなくなるよ……!」
理子「大丈夫。アイスだって、固体から液体に変化するだけで、その存在の本質は変わらない」
美世「え!? それは変わるよ! 本質、全然違うよ!」
理子「どう違うの?」
美世「それは……アイスは固まってるからアイスなわけじゃん。溶けたらアイスじゃなくてただの甘い水じゃん。それって本質的にもう別の存在じゃないの? 甘い水はアイスではなくない?」
理子「でもだ、アイスという存在を構成している要素は液体でも固体でも変わらないよね? 液体をまた凍らせれて固めれば、またアイスに戻るわけでしょ?」
美世「うーん……それは、どうだろう……」
理子「美世は見かけだけの変化に惑わされているのです」
美世「でもでも。私はアイスを食べたいの!」
理子「そういう話じゃない」
美世「アイスはアイスだよ! 理子は溶けたアイスがアイスだと本気で思うわけ?」
理子「え?」
美世「溶けた甘い水を見て、『これはアイスです、つめたくてひんやりしたアイスです、味わえます』といえるのですか?」
理子「……言える!」
美世「いま、間があった!」
理子「……私だってアイス食べたいけど我慢してるの。暑いけど、我慢してるの」
美世「なんだー。私と一緒じゃん!」
理子「それはそうだよ」
美世「じゃあ、今日は寄り道して、アイスの日にしよう」
理子「寄り道は校則違反です!」
美世「えーっ」
理子「我慢するからアイスはおいしいのです」
理子のMO「美世にはそう言ったけど見栄です。すみませんでした。私も食べたい!」
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