第11話「メモ」

美世「理子ってさ、いつも勉強しているけど、メモとか全然とらないよね?」

理子「うん」

美世「いつもすごいなーって」

理子「え。急にどうしたの?」

美世「私、最近、メモ帳買ったんだ」

理子「へえー」

美世「いろいろその日あったことをメモしようと思いまして」

理子「それはいいね!」

美世「理子もやろうよ」

理子「私はいい。大体覚えてるから」

美世「でも、全部は覚えてないでしょ?」

理子「一字一句は無理だけど、大体覚えてる」

美世「記憶を過信してはなりません」

理子「大事なこと以外は忘れても困らないし」

美世「それはそうかもしれないけど」

理子「逆に大事なことは忘れなくない?」

美世「私はそれが不安なの。例えば、今日のお昼は?」

理子「え?」

美世「今日のお昼! 何食べた?」

理子「ゼリー」

美世「昨日のお昼は?」

理子「ゼリー」

美世「おとといは?」

理子「ゼリー」

美世「じゃあ、おとといの晩御飯!」

理子「あー。うー。それは、なんだっけ……」

美世「ほら。メモとらないと忘れる」

理子「そんないちいち覚えてられないよ……」

美世「だからメモ」

理子「それに、忘れるってことは大したことではないってことなんじゃない?」

美世「いや。大したことだよ。人間の三大欲求。衣食住の《食》だよ!? 《食》!」

理子「私、食に興味ないから」

美世「それは理子さん。意外と日々を丁寧に生きてない証拠ですな」

理子「答えられなかったことは、反省します。美世は?」

美世「今日のお昼が、おにぎりで昨日のお昼も、おとといのお昼もおにぎり!」

理子「一緒に食べたからね。おとといの晩御飯は?」

美世「ん? 忘れた!」

理子「美世。自分だって忘れてるんじゃん」

美世「だからメモするんだった!」

理子「メモすること自体忘れらダメじゃん」

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