第8話「マラソン」

理子「42.195キロって果てしない……」

美世「何? マラソン?」

理子「人間はなぜ走るのか」

美世「いきなり難しいっ!」

理子「しかもなぜ限界に挑み続けるのか。限界を更新し続けなければならないのか。私はマラソンという競技が理解できない」

美世「そこに《道》があるから!」

理子「(呆れて)美世。走ったことないでしょ?」

美世「ないけど……。理子は?」

理子「ない」

美世「走ってみたいとは思わない?」

理子「思わないな」

美世「うーん。私も無理かな」

理子「体育で1000メートルとか、地獄でしかないからね」

美世「あれは地獄だよね。私も苦手。そう考えると、マラソン走れる人ってすごいよね」

理子「新聞によると……マラソンの語源は、ギリシャのマラトンって地名で。マラトンからアテネまでが約40キロ。そこをギリシャ軍の兵士が勝利の報告ために走りぬけて、息絶えたという故事に由来するらしい」

美世「なんか壮大というか、死んじゃうの?」

理子「走ることは、命がけだった時代もあるんだね」

美世「そっか! 走ることは人生をかけること。だから人は走る。走ることが現代では挑戦になっているんだよ!」

理子「まあ、その線で考えると、人間の進歩主義思想がマラソンという競技の背景には隠れているのかもしれない……。そもそも、スポーツってみんなそうなのか」

美世「理子。難しく考えなくても、理子だって、勉強頑張るじゃん。常に、学年トップ目指してる。それと同じじゃない?」

理子「最善を尽くして自己ベスト更新……」

美世「意外と、マラソンって、理子に向いてるのかもよ」

理子「え?」

美世「今度、走ってみたら? ハマるかも!」

理子「いや。それだけは遠慮しとく」

美世「なんで? じゃあうちら二人で走る?」

理子「どうしてそうなる!」

美世「挑戦は道連れ的な!」

理子「それを言うなら、旅は道連れ、ね!」


理子のMO「それから私は美世と一緒に走るようになるのだが、それはまだ先の話」

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