第7話「ビタミン」

美世「あー。人に見せられない、見られたくない、見てほしくないよぉ」

理子「なんだ、その三重苦」

美世「深刻な問題なのです」

理子「あ。新しい絵出来上がった? 美術部の展示会もうすぐだよね?」

美世「それもあるんだけど」

理子「え? ほかにあるの?」

美世「お肌の調子悪いのよお」

理子「は? お肌?」

美世「そう。お肌。カサカサって……」

理子「乾燥?」

美世「なんだろうろう。とにかく、つるつるになりたい!」

理子「美世、ちゃんと保湿してる?」

美世「え?」

理子「保湿だよ。クリーム塗ったりとか。なんか、やってなさそう」

美世「クリームぐらい。お手入れしています!」

理子「じゃあ、なぜにカサカサ?」

美世「わからん!」

理子「じゃあ。そういう時期なんだ。諦めろ」

美世「お肌と青春の曲がり角、的な?」

理子「クリームが通用しない時期ってこと」

美世「はあ……。最悪。人に見られたくない」

理子「誰も見てない」

美世「そうかな?」

理子「逆に誰が見る?」

美世「えー。それは。私のこと気になってる男子とか」

理子「そんな存在、いないだろ」

美世「ああっ、悲しい事実!」

理子「そんなにお肌で男子から注目されたいなら、ビタミン摂取は?」

美世「美肌にビタミン的な?」

理子「ありきたりだけど。足りてないんじゃない?」

美世「うーん。そいうの、めんどくさーい」

理子「そこを面倒くさがってどうする。矛盾だな」

美世「矛盾するのが乙女心じゃん」

理子「あのね、大体、大事なことって面倒くさいものなんだから」

美世「どういうこと?」

理子「逆に言うと、面倒くさいことの中には大事なことが含まれているのだ」

美世「ん? だから……?」

理子「普段の努力を怠らないってこと」

美世「美肌って難しい!」

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