第17話 謎の石像

 コウモリ傘の少女との戦いの翌日。

 目が覚めると、何故か朝には覚えのない良い香りがして……顔に何かサラサラしたものが当たっているのが分かった。

 気になってゆっくりと目を開けると、大きなあおい瞳と目が合う。それはハルの顔だった。



「雪理、おっはよー!」

「うわ! うるさい!」



 その大声に驚いて一気に起き上がる。



「はぁ……起きるの早いね」

「雪理が遅いんだよ〜」



 時計を見ると11時を過ぎていた。



「たしかに遅いか」

「ねぇねぇ、今日は何する?」



 ハルが期待に満ちた表情でこちらを見つめてくる。



「昨日は戦いがあったし、ラスボス帝国の活動も今日は無いみたいだしさ……今日は家でゆっくりするよ」

「そっかー。ボクは元気なのになー」



 特にガッカリするような様子もなく、彼は部屋を出ていった。

 それを確認した後。ベッドの上でスマホをいじり、ニュースサイトを開く。



「ふあー」



 あくびをしながら記事を流し読みをしていると妙な記事が目に止まる。

 中央都市第8区内で謎の石像が出現相次ぐと、そこには書かれていた。



「石像?」



 しかも、どの石像も忠実に人間を再現していて、まるでさっきまで普通にそこを歩いていたかのようなリアルさらしい。

 発見された石像は回収されて現在調査中みたいだ。



「これも帰還者絡みだったりして……これだけじゃ分からないな」



 サイトを閉じてベッドから出る。

 とりあえず何か食べようと1階に向かうことにした。





 ハルは居住区に帰り、僕は特に何をするでもなく時刻は17時を過ぎていた。

 リビングのソファーで横になってぼーっとしてると、インターホンの音が聞こえた。



「誰だろ……」



 今は伯母さんが買い物に出ているので自分が出るしかない。

 眠気の中、ゆっくりとソファーから立ち上がる。

 玄関のカメラを確認すると、ライダースーツ姿のアリスさんが立っていた。

 インターホンのマイクをONに切り替え。



「アリスさん?」

「あ、面野さんね! 今日は個人的な頼みがあって……話だけでも聞いてほしいんだけど」

「はぁ……聞きましょうか」



 彼女を家の中へ入れ、リビングでお互いに向き合う形でソファーに座る。



「お茶とか出します?」

「いえ、お構いなく」

「それで、話って何です?」



 彼女はスマホを取り出すとその画面をこちらに見せる。

 その内容には見覚えがあった。



「このニュース知ってる?」

「はい、謎の石像のやつですよね」

「そうそう。それでね、まず言っちゃうとこの事件に帰還者が関わってて……」



 まさかとは思ったけど本当にそうだったとは……。



「それでこの情報を何で教えたのかというと……」

「いうと?」



 彼女はいきなり頭を大きく下げ。



「これの犯人を捕らえるのを手伝ってくれないかしら!」

「ええ!? 色々と関わってしまってるとはいえ、僕は素人ですよ」



 今までは偶然協力する形になっていたとはいえ、アリスさん側から頼まれるとは思いもしなかった。



「正直まだ力も安定して扱えてないですし、他の機関の職員を頼った方がいいのでは?」

「それが出来てれば良かったんだけどね……最近、各地で紋魔の怪異やそれに類する現象の対応で人手がね」

「足りてないと?」

「そうなのよ! 今回の相手は1人だと危険な相手だっていうのに誰も寄越してくれないから……」



 ガックシとした感じで彼女は事情を語る。



「1人で危険な相手とは?」

「今回捕まえる相手なんだけど、名前は 古水土こすいど なお ってやつでね。石化能力を持ってるのよ」

「石化……イメージは分かります。ゲームとかの知識ですが」

「多分そういうののイメージ通りって感じで合ってるわ」



 手元のスマホを操作した彼女は再び画面を見せた。

 そこには石像……いや、本物の人が石化したものが写っていた。



「これはうちで回収したものなんだけど、一応完全に回復させることはできてるわ」

「治すことは出来るんですね」

「でも時間がかかるから、戦闘中だとヤバイかもって感じなのよ」



 再度、彼女はこちらの機嫌を伺うように頭を下げた。



「というわけで……何か報酬は考えるから、どうか協力してくれないかしら!」

「まあ、放っておくわけにはいきませんでしょうし、手伝いますよ」

「ありがとう! 面野さん!」



 こうして石化事件の解決に協力することになってしまった。

 ドクナさん達にも連絡を入れようか……治癒魔法が使えるドクナさんであれば石化への対処手段もありそうだし……。

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