第16話 紋魔の門

 雪理達の戦闘からしばらくして。

 リターナー本部施設、紋魔もんま技術研究部門の地下研究区画の中心部。

 その広大な地下空間全体が赤白い光で照らされており、その光を放っているのは中央にある巨大な輪の形をした機械であった。

 その近くで手元の端末の画面を確認して険しい表情をしている大男、Drウァイパーが目の前の仮面の男にもその画面を見せ。



「また怪異が発生した報告が来たぞ、オデオカ。今回はすでに消滅が確認できていたからよかったものの……実験は慎重に行えとあれ程言ったというのに」

「申し訳ありません、ドクター。出力調整にミスがありまして……しかし、監視カメラの映像から異世界人と、面野 雪理の戦闘データが得られそうなのは思わぬ収穫でしたね」

「だとしてもだ。今回の実験の影響で各地に紋魔エネルギーの影響を受けた人、動物、物などが発生しているのだぞ。秘密裏に職員に対応はさせているが、情報の管理も難しくなってきている。これ以上の失敗は……」



 憤るDr.ウァイパーに対して、平然とした様子で振る舞いながらクレス・オデオカは片手間で各職員に指示を出している。



「ええ、ですがご安心を。門の調整はもう完璧ですので」

「ならいいが……この 紋魔の門 こそが、我が計画の要なのだ。その辺りは万全にな」



 そう言いながらウァイパーは、目の前の「紋魔の門」と呼んだ機械の輪をゆっくりと見上げる。



「ええ、あとはここから紋魔世界と接続、そこからエネルギーを充填し続ける動力源となる 小型紋魔コア の調整ですね」

「そうだったな。それの試運転用の機体は完成したのか?」

「アレであれば最終調整中です」

「そうか。ではな……くれぐれも余計な真似はするなよ、オデオカ」



 オデオカに釘を刺し、研究区画を後にするウァイパー。

 それを目元の仮面を軽く触りながら見送るオデオカ。



「ええ、分かっておりますよ……」



 彼は仮面の下に不敵な笑みを浮べていた。

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