第30話 マインの回想(冒険団入団)~最終決戦

「マインちゃん、立てる?」


 エミリアはすぐに優し気な表情に戻り、手を差し伸べてくれた。

彼女はわたしなんかよりも強かった。

わたし以上に鍛錬してきたんだろうな。


「ありがとう……」


 すると、エミリアはわたしにこう尋ねてきた。


「あなた、凄く強いよね? 普通の女の子ならすでにやられてるよ」


「あなたみたいな強い娘が、何で冒険者やって無いの? 友達に自慢できるんだよ?」


 この娘、そんなにわたしに友達作ってほしいの?


「あなたには関係ない……」


「そんな事は……!!」


 わたしは耐え切れなくなって、自分の事を話してしまった。


「わたし、前世の事覚えてるの……」


「前世でわたしは、夫とたった一人の息子を失った」


「すべてを失ったわたしは、ずっと一人で生きていくって決めた」


 エミリアはわたしの話に、呆然としていたが、真剣な表情で聞いていた。


「これ以上!!! 大切な誰かを失いたくない!!! だから、わたしは誰かを好きになりたくないの!!!」


「だからもう、わたしに関わらないでよ……」


 わたしはつい、今世の親にも打ち明けていなかった、今までの思いを全てぶちまけた。

そして、無言で聞いていたエミリアが口を開く。


「わたしは逝かないよ」


「え?」


 わたしは衝撃で、さっきまで止まらなかった涙が一瞬で止まった。


「このわたしが、あなたより先に死ぬと思ってるの?」


「友達残して、先に居なくなるなんて、そんな事絶対しない!!」


「だって、わたし強いから!!」


 エミリアはそう宣言すると、わたしに歩み寄ってくる。


「だから、わたし達の仲間になってほしいな」


「実は前から見てたんだ。あなたが鍛錬頑張ってる所!!」


 あれは暇だったし、以前から息子の影響で異世界系のアニメに憧れてたから、やってただけなんだけど……


「大丈夫!!! わたし達は死なない!!! だからあなたの力を貸して!!! マイン・ミル!!!」


 確かにわたしは大切な人が死ぬのを恐れている。

でも、あなたは大丈夫かな?


「わかった……約束だよ」


こうして、わたしはエミリアの仲間となったー-


 そして、現在に戻り、わたしはポセイドンと斬撃戦を繰り広げていた。

前はグロリアの為に、総帥の為に戦っていた。

そして今は雄心、あなたの為に戦っている。

いつだってわたしは大切な人の為に戦ってきた。

誰も失いたくないから……? 違う、みんなを守りたいからだ!!

それは、わたしの居場所でもあり、みんなの居場所だから!!

わたしは最後の力を振り絞って、リバイアサンに立ち向かう!!!


「マイン!!! 援護するぞ!!!」


 そこへシリウスがポセイドンを殴りつけてわたしに加勢する!!


「ちょこちょこと鬱陶しいんだよ!!!」


 ポセイドンはわたしと戦いながらも、横から援護するシリウスを水撃で蹴散らしていく!! しかしシリウスはどんなに水撃で怪我をしても諦めず攻撃を続ける。


「もうやめて……!!! お願いだから逃げて!!! このままだとあなたもやられてしまうよ!!!」


 わたしはボロボロになりながら特攻する息子を見てられなかった。


「今のアンタは俺の同士だ!!! 今は親子とか関係ねぇだろ!!! だから俺にアンタを守らせろ!!!」


「……!」


 まさか、ここで息子に説教されるとは思わなかった。

でも、嬉しくて涙が溢れた。

確かに、この世界で出会ったのは一か月前だし、息子と分かったのも昨日の話だ。

だけど、雄心は確実に成長している!

前を向いて、未来に向けて歩き出している!

だから、この子の未来を導いていくこと、それが、わたしに残された最後の役割だ!!!


「一緒に戦おう!!! シリウスくん!!!」


「おう!!! そうこねぇとなぁ!!!」


 わたしは涙を拭うと、二人で特攻した!!!

わたし達は勝つ!!! みんなで絶対に生きて帰るんだ!!!

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