第29話 マインの回想(転生後)

 わたしはこの世界で生をうけると、もう後悔のない人生にしようと誓った。

だから、昔のわたしは、今と比べてかなり尖っていたかなっと思う。

なるべく人との関りを避ける為に、あえて不愛想に振る舞った。

これ以上大切な人を失いたくなかったから。


「なんだアイツ、愛想のない奴だな」


「いつも本ばっかり読んでるし、気味悪いよね」


 前世と合わせて、九十年以上生きていたから、自分の事はわかっていた。

もし、誰かと関係を持ってしまったら、わたしはその人を好きになってしまう。

愛情を持ってしてしまう。

それで、その人を失ったら、わたしはもう耐えられない。

だから、学園に入っても、極力自分の世界に入って、人を遠ざけた。

わたしは一日の大半を、読書か自己鍛錬で過ごしていた。

そんな時、わたしは運命を変える出会いを果たす。


「何読んでるの?」


 その少女は、わたしの読んでいる本に興味津々で話しかけてくる。


「魔導書……」


 わたしはいつも通りそっけなく返す。


「一緒に呼んでもいい?」


 何なのこの娘? やたら馴れ馴れしいな。


「少しだけなら……」


「本当に!? やったー!」


 この少女は中等部なのに、幼い子供の様に無邪気に喜ぶ。


「わたし、エミリア・オズワルドって言うんだ。よろしくね」


「マイン・ミル……よろしく」


 それからと言うものエミリアはわたしにやたらと絡んできた。

休み時間だけでなく、昼食中や、放課後の時も毎日だった。

あまりにしつこいのでわたしは尋ねた。


「さっきから、わたしに何の様なの?」


「え? 友達でしょ。話しかけるのは当然だよ」


友達!? いつからわたし達友達になったの!? 


「でもマインちゃんも友達作んないの? 結構楽しいよ?」


 この娘、なんでそんな簡単に友達作れると思ってんの! もうこれ以上大切な人が出来るのは懲り懲りだよ!!


「わたしの事なんか何も分かんない癖に、軽々しく友達呼ばわりしないで!!!」


「アインちゃん!!!」


 わたしはそう吐き捨てると、走り去ってしまった。


「何やってるんだろう……わたし」


 もう人とは関わらない。

そう誓ったはずだったが、いざ突き放してしまうと罪悪感が残った。


「あら、これはこれは可愛いマインちゃんじゃない」


 するとそこにはクラスのリーダーの女子が取り巻きを連れて絡んできた。


「何?」


 わたしは睨みつけながら、そう返した。

すると、その女子に突然ひっぱたかれた。


「あんた、ちょっと可愛いからって調子乗ってんじゃないの?」


「は?」


 突然因縁を吹っ掛けられて、わたしは状況を読み込めない。


「キョトンとしてんじゃないわよ!!! ゴールドくんをたぶらかしたのはアンタでしょうが!!!」


 ゴールドくん? ああ、クラスで女子からもてもてのあのイケメンか、


「知らないよ……わたしは彼には興味ないし、話した事も無い」


「その態度がムカつくのよ!!! どうなるか分かってんでしょうね!!!」


 リーダー女子はそう言うと指をパチンッと鳴らした。

すると、冒険者だと思われる男たちがぞろぞろと現れた。


「コイツらは、あたしが用意した冒険団、カステルの面々よ!!!」


「あなた……!」


 前から思ってたけど、この娘卑怯だよ!!! 女だけじゃわたしに勝てないからって、こんな小細工して!!!


「仕方ないな……」


 わたしは、飛びかかってきた男の一人を、蹴り飛ばした!!


「グハッ!!」


 吹き飛んだ男は壁に激突した。


「たかが振られた腹いせで、取り巻き集めて奇襲……」


「あなたが彼に好かれなかった理由がよくわかるよ」


「だってダサいもん」


 その言葉にぶち切れたリーダー女子と取り巻き達は、一斉に殴りかかって来る。

わたしは最初は押していたものの、多勢に無勢で徐々にやられ始めた。


「クッ……やっぱり一人じゃ厳しいかな」


 その時、一人の小さな足音が近づいてくる。


「あ~あ、ついにわたしを怒らしちゃったねぇ……」


 なんと、そこにはさっきわたしが突き放した、エミリアが現れたのだ


「エミリアちゃん!!! 何で!?」


「友達だって言ったでしょ?」


 噓でしょ、わたしあんな酷い事言ったのに……


「駄目だよ!!! エミリアちゃん!!! 逃げて!!!」


 しかし、エミリアに男の一人が絡んでいく。


「おいおい、誰か来たと思えばガキじゃねぇか、丁度いいぜ、コイツもやっちま……」


≪ドゴッ!!!≫


 何が起きたの? 男がエミリアの胸倉を掴んだ瞬間、一瞬でワンパンされた。


「マインちゃんを傷つけけたのは誰? 今すぐ出てきて」


「わたしが殺すから」


 エミリアの目は、さっきまでのニコニコしたものとはかけ離れ、おぞましい殺気にあふれていた。


「あなたは一体……」


 わたしはつい尋ねた。


「わたしはグロリア冒険団総帥!!! エミリア・オズワルド!!! これから世界一の冒険団を作るの!!!」


 そして、エミリアは総勢二十人はいるであろう相手を、全てボコボコにした。


「な、なんだコイツ、化け物だ!!!」


「冗談じゃねぇ!!! 殺されるぞ!!! 逃げろぉぉぉ!!!」


「ちょっと!!! 待ちなさいよ!!!」


 こうして、リーダー女子と取り巻き達は退散していった。

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