第11話 予想外の再開

 そして、俺たちはブラッドさんの自宅に到着した。

ブラッドさんの家は、昔の日本を思い出す和風な感じで、壁は木で出来ており、屋根には屋根瓦がついていた。

入口の門をくぐると、大きな庭があって、俺達はそこを通って玄関へと向かう。


「着いたよ。さぁ、遠慮なく入って」


「お邪魔します!」


 玄関の高さは四メートル位で、三メートル位の身長のブラッドさんは普通に通れる。

実際に魚人の男性の平均身長は三メートル位で、前世の人間と比べるとかなり大きい。

そういえば闘技場の時のブロンズも魚人みたいだったな、どうりで体が大きい訳だ。

でも、同じくデカかったオリビアには『えら』がついて無かったな。

魚人の血が混ざってるという事か?

しかし、それ以上の身長の俺は、少しかがまないと通れないな。


「本来は普通なんだろうけど」


 そして、廊下を通った先には、広いリビングの様な場所があった。


「お帰りなさい! お父さん!」


 台所には、ソフィアが立っていた。

そして、俺を見るなり突っかかってくる。


「ちょっとモンスター!! なんで家にいるのよ!!?」


 ああもう、ダリィな。

こういう事があるから、あまり気乗りしなかったんだ。


「悪いな!! お前のお父様から直々にディナーのお誘いがあったんだよ!! だから有難く泊まらせて貰ってんだよ!! お父様には感謝しているが、お前なんざ眼中にねぇんだよ!!」


 すると、ソフィアはブラッドさんを問い詰める。


「こんな奴を泊めるって!? お父さん!! どういう事!!?」


「僕に聞かれても……」


 おいおい! 自分が話とくって言ったじゃねぇかよ!! タジタジじゃねぇか!! 一応予想していなかったと言えば、嘘だけどな。


「お父さんから聞いたわ!! あんた野宿してるんだってね!!? どうせどっか適当な所でウンコとかしてるんでしょ!!? モンスターだもんね!!?」


「失礼だな!! 公衆トイレぐらい使ってるわ!! デリカシーの無い女だな!!」


「まぁまぁ君たちその辺で……」


「アンタは黙ってて(黙ってろ)!!!」


 俺たちの口論はヒートアップ。

ブラッドさんは完全に頭を抱えていた。


「なかなか夕食が出てこないと思っていたら、喧嘩か?」


「もう、お腹ペコペコだよぉ」


 誰かが階段から降りてくると思ったら、今の声って、まさか!!


「エミリアとオリビア!!!」


 二人は俺に気付いたようで、すぐに駆け寄って来た。


「シリウス!!? 本当に久しぶり!!」


「ああ、まさかこんな所で再開するとはな」


 まさか、ソフィアの言っていた友達が二人だとは思わなかった。

本当に予想外の再開だった。


「え!!? どういうこと!!? 何で二人がコイツの事知ってるの」


 ソフィアは俺達の面識に動揺している。


「二週間前に私たちが任務で、MFGを行っていた団体を取り押さえたが、その時に団体の主である、主犯格のブロンズと闘っていたのがシリウスだ」


「え!!? ブロンズは元A級冒険者だと聞くわ!! それとタメ張ったという事!!?」


「まぁ、結局ボコボコにされてたけどねぇ。わたし達が割って入んなかったら死んでたしね」


 二人の説明に呆然とするソフィアだが、俺が特に気になったのが、彼女がブロンズの事を知っていた事だ。

何であの場に居なかったソフィアがブロンズの事を知っているんだ?


「ごめん!! みんな!! ちょっとトイレを借りるぜ」


 俺はそう理由をつけてトイレに入ると、 鞄の中で眠っていたユラに尋ねる。


「ユラ!! 聞いてくれ!! 今、エミリアとオリビアに会った!!」


 そう聞いた途端、さっきまで眠そうにしていたユラが、はっと生気を取り戻して尋ねる。


「マジすか!!? まさかこのタイミングで二人と再開できるなんて!! でも何で二人はブラッドさんの家に?」


「ブラッドさんの娘のソフィアと友達みたいなんだ。今日、遊びに来たみたいだ」


 俺の答えに、ユラは突然鞄から飛び出した。

 

「ソフィア!!? まさか、あのグロリア冒険団二番隊隊長のあのソフィアっすか!!?」


マジかよ!! アイツ冒険者でもあったのか!!


「え!!? ソフィアはその冒険団の隊員の一人なのか!!?」


「隊員どころじゃないっす!! 彼女は恵まれた体格とフィジカルを持っていて、その上、強力な水属性魔法を使いこなすオールラウンダーっす!! 二つ名で”海神のソフィア”とも呼ばれてるっす!!」


 ユラは興奮して話がかなり早口になっているが、要するにソフィアはその冒険団の偉いさんなんだな。


「こうしちゃいられないっす!! 居ると分かれば、会いに行くっすよ!!」


「おい!! ちょっと待てって!!」


 ユラは俺の制止を振り切り、一直線でリビングまで向かっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る