第12話 冒険団の招待状

 俺はユラを追いかけて、リビングに飛び出した。


「ちょっと!! 何でこんな所にスライムが居んのよ!!? さっきから早口でなんか言ってくるし!!」


「ユラ!!」

 

 俺は、興奮状態のユラをソフィアから引き離した。


「は!! これは失敬!! 嬉しすぎて我を忘れてしまったっす」


 正気に戻ったユラは三人に謝罪する。


「はぁ……?」


 ソフィアは唖然としていたが、後の二人は再開を喜んでいた。


「あの時、シリウスが守っていたスライムだ!! 元気そうでよかったよ!!」


 エミリアは満面の笑みでユラに抱き着いた。


「えへへ。こんなに喜んで頂いて光栄っす」


「当たり前だよ!! 二人ともわたしの友達だもん」


 ユラも満更でも無さそうだ。

てか、いつの間に友達認定されてたんだ!? 俺達!?


「そうだ!! 二人ともうちのチームにおいでよ!! 歓迎するよ!!」


 いきなりのチームスカウト来たー!!

しかし、俺は仕事をしている身だ。

流石に仕事をほっぽり出す訳にもいかない。


「良いんじゃないか?」


 俺が断ろうとした時、なんとブラッドさんが入団を進めてきた。


「ブラッドさん!!? 仕事はどうするんですか!!?」


 すると、ブラッドさんは笑顔で言った。


「冒険団に入って依頼をこなすと、それだけ賞金も貰える。それはうちの給料よりも相当高いし、君の生活がより豊かになると思う」


「君はまだ若い。これから色んな経験を重ねて成長していく。そんな時期を、ただ魚を捕まえて売りさばくだけに使わなくてもいいんだよ」


「前に、君の行動力は社会で重宝されるって言ったけど、協調性の求められる冒険団で活動する事は君には適正だと思うよ」


 確かに、俺はアニメとかをよく見ていたから、こういう冒険者とかには憧れていた所もあった。

ブラッドさんがそういうなら……


「わかった。考えてみるよ」


「本当!! やったー!!」


 エミリアは子供の様に喜んだ。

コイツ、笑うと天使の様に可愛いんだよな。


「よし、次の集会は明日だ。場所は後で教えるから、ぜひ見に来てくれ」


 次の日、俺とユラはオリビアに教えてもらった通りに、グロリアの集会場所に到着した。


「ここで良いんだよな?」


 そこは、とっくに廃墟となった、教会のような場所だった。


「へぇ~! ここがグロリアの集会場所なんすね~! わくわくが止まらないっす!」


教会に入ると、集会に集まっていた団員たちの視線が、俺達に集中する。


「コイツが、例のこの街に潜む大型モンスターか」


「良い体格してるし、一見強そうに見えるけどな」


「総帥に気に入られた訳よ。何か凄い奴に決まってるわ」


 みんな、ヒソヒソと俺を見て話していた。


「やあ!! 君たちが、総帥が友人と認めた者たちか!!?」


 その時、一人の男が近づいて来た。

赤髪に、赤い目をしたエルフの青年だった。


「ああ、そうだ。エミリアに呼ばれてここに来たんだ」


 俺がそう言うと、青年はハハハッと高らかに笑った。


「総帥を呼び捨てとは、なんという大物だ!! 俺は君の様な者は好きだぞ!!」


 なんか、気に入られたみたいだ。


「あなたは、グロリア冒険団一番隊隊長!! ”獄炎のガリュウ”の異名を持つ、ガリュウ!!」


 ユラがそう叫ぶと、ガリュウはやかましいくらい大きな声で宣言する。


「君は、彼の友達か!!? 丁度いい!! 君たちは皆俺の友達だな!!!」


「光栄っす!!! ガリュウ隊長!!!」


 なぜかユラもノリノリで応じる。

やかましいが気さくな奴だな。


「ガリュウくん。あなたは誰でも友達だというんだから」


 誰かが話に割って入ってきた。

薄茶色のボブヘアーに、たれ目で水色のきれいな瞳をした、エミリアより少し背が高いくらいの美少女だった。


「こ、この人は!! グロリア冒険団四番隊隊長!! ”雷鳴のマイン” とも呼ばれる、マイン・ミル!!」


 また、ユラが紹介する。


「でも、総帥たちが気に入ったという事は、あなた達は只者では無い様だね」


 マインはそう言うと、俺たちに近づいてきた。


「あなた達の事は、総帥からよく聞いてるよ。シリウスくん、ユラくん、よろしくね」


 マインは、笑顔でそう言った。


「お、おう」


「緊張しなくてもいいんだよ。みんな最初はそうだから」


 マインは手を口元に抑えて、無邪気に笑っている。

この娘すげぇ可愛いな!! 正直タイプだ!! くん付けで呼ばれただけで昇天しそうだぜ!! 俺はこういう優しげな娘が良いんだよ!! 総帥も可愛いが、おっかない雰囲気があるからな。


「オイオイ、久しぶりの集会だと来てみれば、客が醜いモンスターとはなぁ!!!」


 後ろから声と同時に蹴りが飛んできて、俺は蹴り飛ばされた。


「何すんだ!! テメェ!!」


 見ると、六メートル以上は有りそうな、スキンヘッドの巨人の男が、鋭い眼光で睨みつけていた。


「ああん!!? 文句あんのか!!? 醜悪なモンスターが!!」


 男はそんな事をほざくと俺を殴り続けた。

コイツ、なんてパワーだ!! クソッ身動きがとれねぇ!!


「シリウス!!!」


 ユラの叫び声が聞こえるが、そんな事を聞く良しも無く、男に殴られ続けた。

そんな男を止めたのはマインだった。

バインドで男の片腕を拘束した。


「辞めてグランドくん!! 彼は今回の集会のゲストだよ!!」


「黙れ!! モンスターってのはなぁ!!! 全員駆逐しなければいけねぇんだ!!!」


「じゃあ、今の事を総帥に言いつけてもいいんだね?」


マインのこの一言で、男は白けたのか、頭を掻きむしりながら、舌打ちをして行ってしまった。


「ごめんね。グランドくんはね、昔、母親をモンスターに殺された過去があってね。モンスターには人一倍恨みがあるんだ。許してあげてほしいな」


 可愛い君の頼みなら良いぜと心の中で思いつつ、俺は頷いた。


「グランドって!! あの五番隊隊長のグランド・シルバっすか!!? ”大陸のグランド”の異名の!!?」


 ユラのこれでもかと言うグロリアへの知識に


「うちの事、何でも知ってるんだね!! 凄いね!!」

 

 と、マインは関心していた。

ユラは満更でもなく照れていた。

お前、そこ替われ!!!


「何、騒がしいね」


 今度は誰だ? また、誰か来たぞ? コイツは子供か? どう見ても、冒険者になれるぎりぎり位の年だな。

黒髪のツインテールに、緑の瞳の少女が騒ぎに気付いて、近づいてきた。


「この少女は!! 冒険者になって二か月でグロリア冒険団に入って、三か月で三番隊隊長に任命された天才ルーキー!! ”暴風のサラ”こと、サラ・ウィン!!!」


つまり、五か月でここまで出世したのか!!? 見かけによらず化け物じゃねぇか!!



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