第25話 俺......大丈夫かな

「お前あれ知ってたか?」


「周知の事実だろ、逆に知らないのが驚きだわ」


「あんなにSMプレイにノリノリとは......」


 俺は朝のSHRが終わった後、すぐさまノリィに事実確認をしに行った。


 よく考えてみよう。


 いくら氷の女王様と言われていても?例え奴隷組などという高校生にあるまじき組織があるとしても?本人の態度がほんっっっっっの少しだけ荒いとしても?




 流石にSMプレイをノリノリでやるとは思わないだろ?



「あの奴隷組の奴らな、筋金入りの根性で奴隷になった後もアプローチを続けたんだ。お願いします!一回だけ!先っちょだけ!ってな」


「お.......おう、もう何となく分かったんだが」



「それで観念した女王様は一回だけ手を出した、一発の平手打ちだ。後はもう言う必要はないよな?」



「あ.......ね......九条さん......哀れ」



 ドンマイ九条さん


 目覚めたもんはしょうがない




 しょうがないんだ





 ❖☖❖☖❖





「なあこの状況になった原因を簡潔に述べてくれないか?なぁ?」


「えっとぉ........俺のせいですね」



「具体的には?」


「俺が昨日.......無責任に誘ったからです」



「誰を?」



「黒の女神様を」


「その通りだ、-100点をあげよう」



「ねぇねぇ、何の話をしているの?」



「「いやぁ別に何も〜!」」


「じゃあ色々教えてください!二人は小さい頃からの知り合いなんですよね?」



 俺たちの目の前でふんすかと息を吐きながら興味津々に俺たちの身の上話を聞いてくるのは黒の女神こと中世愛梨その人だ。


 最近妙に距離が近いと思っていたが、とうとう俺たち二人の会話にまで入ってくるようになった。きっかけはノリィかもしれないが、誘ったのは中瀬さん本人だ。


(おい!これどういう会話にすれば良いんだよ!」


(任せときな!秘伝自動応答モードを使う!)


(なんだか良く分からないが頼んだぞ!」


(おうよ!キッチリ呼んだ落とし前つけるぞ!)


(何時になく頼もしいな!別人か!?)


(俺がもう1人いるならお前はどうなってる?)


(...........頑張ってくれ)



「あの〜?二人共?」



「「あ、はい!」」


(お前に任せるぞ!いいか絶対にやり過ごせ!)


(任セロリ!)




「はい!小学校からの付き合いですね!」


「へえ〜じゃあ典明さんは加賀美さんのことをなんでも知っているんですね〜」


「そりゃもちろん!親友なので何でも相談乗る仲ですよ!」


「そうなんですか〜、じゃあもしかして加賀美さんの秘密とか知ってるんですか?」


「はい!もちろん!アイツのことなら何でも知ってますよ!!」


「それならすこーしだけ質問がしたいんですけれどよろしいですか??」


「そりゃ!もちろん!喜んで!!」


「加賀美さんってイトコとかいますか?」


「従姉妹ですか!1人いますよ!」


「その人って何歳くらいですか?」


「確か現役大学生の20歳だった気が「ストォォォォォォォォプゥぅぅぅぅぅぅ!!!」..........へ?」




(おいおいおいおいおいおいおい)


(何でございましょう......加賀美さん)


(お前自動応答って正解の答えしか言わねぇじゃねか、思いっきりボロ出てたぞ)


(馬鹿な!俺の演算に狂いはなかったはずだ)


(まず計算式以前の問題ということに気づいたほうが良いぞ)


(なるほどね......つまり無理難題引っ掛けたお前が悪い)


(なわけねぇだろ.......落とし前払うのはお前だろが)


(いや〜流石に難易度が高いと思わんかね?)


(それはない、ここからは俺がやるわ)


(言ったな?痛感しろ力量の差を)



「二人共?さっきからヒソヒソ何話しているのですか?変ですよ?」


「あ、ああ中瀬さんの話題も聞きたいなって」


「そうですか.......なら私のデートの話でもしましょうか」


「は.......はい.......上手くいったみたいですね」


「はい、最高の一時でした。彼がに暴漢を倒している所を見た時はカッコよくて惚れ直してしまいました。それにきつねうどんを美味しそうに食べている所も凄く可愛かったです」



「へ.........へぇ」


 まずい、色々まずい


 竜崎を前と同じやり方で倒した点ときつねうどんに興味を示していた点を俺と関連付けている..........



「だから思ったんです、加賀美さんって実は......」




 や、やばい!!本当にバレているのか!!??




「加賀美さんて

 

   セイ君の遠い親戚か何かですか!!?


                      」


「えっ!?」


「え!?そうじゃないんですか?」



 なんだか意味が分からない、突然核心に迫ったと思ったらまさかの従兄弟とは


 まぁ結果的に難は逃れているし、前よりはバレにくい展開かもしれない。


 これは勝った!第◯部完!!!!!



「い、いや〜そうそう!!!そうなんだよ!」


「やっぱり!!従兄弟って似ますもんね!!!」



「いや〜そうなんだよね(従兄弟って似るのか?嘘でしょ?)」



「セイ君と似てると思ってたんですよ。やっと分かってスッキリしました」



「あっうん........ってもう良いのか話は?」



 彼女は席を立ち俺たちを見下ろした。その顔はどこか満足気でいつもみたく綺麗なのだが.......少し妖艶というか蛇っていうか......不気味に見えた。



「知りたいことが分かったので十分です。ありがとうございました」



「お、おう。じゃあまた後で」


 彼女は最後に会釈だけして自分の席に戻っていった。まあ一難去ったというわけで



 さぁ断罪タイムだ



(おいおいおいおいおいおいおいおい)


(...............聞こえないぞ)


(俺.......くぐり抜けたが?どうだ感想は?)


(ただ返答しただけじゃねぇか俺の方が凄い)


(運じゃない、俺の実力だ)


(プッチンプリン........DVD.......18)


(お前困ったらそれで脅すの卑怯すぎないか?)


(何度でも言うがいい、これが力だ)


 断罪タイムを強制終了されたが、無事に中瀬さんとの接触をくぐり抜けることが出来た。しかもいい方向に俺の正体を持っていく事ができたのが一番デカい。




 今日のバイト後は良く眠れそうだ。








「あともう少し証拠があれば........分かるのに」





 教室の誰かの呟きは周りの音に紛れて消えた。





 ❖☖❖☖❖




 夕刻、外は肌寒く、往来へ落ちる物の影が心もち長くなった。


 なんて俺の柄じゃない。

 今俺は放課後の校舎裏にいる。


 呼ばれたんだ、九条さんに.........。




 当然のように入っている

 バイトに関しては電話をした.......が



「もしもしー?」


『どうしたの?あんたから連絡してくるなんて』


「ちょっとバイト遅れるっていう報告を」


『はぁぁぁ!?ふざけんじゃないわよ!よほど重要な要件じゃないかぎり許さないからね!』


「別に前来店した九条さんに呼ばれただけだぞ?」



『ちょっと!架純ちゃんに呼ばれたですって!??その話詳しく聞かせなsブチッ...........』



 えげつない追求が目に見えていたので俺はすぐさま終了ボタンを押して通話を切った。今日のバイト行きたくないんだがどうすればいいだろうか



「ちょっと!?聞いているのかしら!?」



 それじゃ現実に戻ろう。




「はい、聞いてます........」



「今から私の恋愛相談に乗ってもらうわ!!そして土曜日の作戦会議よ!!!」



「はぁ........どうぞ続けて」



「まず初めに!私と彼との繋がりはそんなに太いものではないの!」



「はぁ.......そうなんですか」



「そして彼とは一度.......いやこの姿を含めても三度しか会ったことないわ!」


「聞いてる限り無謀だと思うんですけど」



「黙って聞いてなさい」


「はい........(理不尽定期)」



「彼とは同じゲームのプレイ仲間というだけ」



「へぇーゲーム友達ですか、いい趣味ですね」


「黙って聞いてなさい」


「はい.........(理不尽定期パート2)」



「彼とは同じクランのメンバーとしていつも切磋琢磨しているわ」



「へぇー九条さんが認めているんですね」



「ええ、SEIは私の相棒よ」




「え!?」



「え?」




「え!?」



「え?」




「あの......俺帰っていいですか?」



「駄目よ、まだまだ話は長いわ」



「そうですか〜.......ちなみに九条さんはゲームだとなんて名前なんですか?」



「一応、架純を霞と見立ててhazeとしているわ」



「はぁ...........」




「何か言いたい事でもあるのかしら?」





「やっぱ俺帰っていいですか?」



「駄目って言ってるでしょ?」




「はい.........」




 もう俺..........今度霊媒師行こう




 なんか取り憑いてるって.........うん



 そして




 さらば俺の憧れのhazeさん.......

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