第26話 落差!?
朝はデートの日の予定変更に失敗し
登校してからいきなり奴隷組の
偉そうな奴らに絡まれて
いきなりノリィが髪を切ったと思ったら
昼には中瀬さんが来襲して
後はバイトだけかと安堵した途端にこれだ。
俺が尊敬するクールな男だったhazeさんは
実は女の子で
その正体が......四大アイドルの一人
九条架純だった......
いやもういいって!もうお腹いっぱいだって!!
そもそもの話
友達が実は男じゃなくて女でしたってオチが受け入れられると思うか!?
まぁ多分ノリィだったら飯ウマ!飯ウマ!って連呼すると思うけど俺は違う
普通に
俺が『へぇ~そうなんだ』と割り切れる範囲を遥かに超えている。
そう何度も脂っこい飯食べられるはずないだろ
今言われたこと全部忘れて帰りたい......
「あなた本心が顔に出過ぎてるわよ?」
「え?俺そんな変な顔してるか?」
「ええ、『今すぐここから帰りたい』って顔してるわね。少しは隠す気を出したらどうなの?」
気付いているならもっと早く言ってほしい。多分だいぶ前からこの顔のまんまだった気がするんだが
「むしろ本心を察してくれたなら言葉通り帰してほしいんだけど」
早く行かないとバイトで何を詰められるか分からん。給料下がってまともなテンションで仕事出来た事一度も無いのに。
「さっきまでの従順さは何処行ったのかしら?ですますが消えているわよ?」
「忖度って知ってるよな?」
テキトーにイエスマンしていたらいきなり冷水ぶっかけられた俺の気持ちを汲んでほしい。これでも中瀬さんの時よりショック大きいんだぞ?
「スレイヴズに絡まれていたところを名誉を犠牲に助けたんだからそれ相当な対価は必要よね?」
「やっぱ俺に救ってもらった事忘れてるよな......」
「報酬はいらないって言ったのは誰かしら?」
「ぐっ.....そ、そもそもあんたがあんな
俺がそういうと九条さんは心外なという顔をしてこちらに詰め寄ってきた。
「良い?私は別にファンクラブなんて求めてないのよ!いくら帰れだの消えろだの姿を見せるなだの言っても彼らは『ご褒美ですぅ!』って言いながらまた近づいてくるのよ?私がどんな思いで彼らを跳ね除けてると思っているのよ!!だいたい性癖が曲がっているですって?彼らをさっさと帰すために嫌々身に付けた技術を私の本心からくるものだと勘違いしないでほしいわ!!しかも彼らは私の言った言葉を都合よく解釈して、すぐに人員を集めて奴隷組という組織を作って私が全く対処しきれない状態まで進行させておきながら、なおかつメンバーには生徒会長やら、PTA会長の息子とか!面倒な人達を誘いすぎなのよ!私の一存でどうにかできる問題じゃないわ!!それにー」
「分かった!!分かったから!な!な!」
一度触れただけで愚痴が止まらない......バーゲンセールはやめてくれ。
「そう......ね、少し言い過ぎたかもしれないわ」
咄嗟のフォローで一応事なきを得たが
「じゃあ早速始めるわよ?本格的に恋愛相談」
まだ相談は始まってすらいないのである。
❖☖❖☖❖
「あんた遅かったわね、そんなに架純ちゃんとのお喋りは楽しかった?」
恋愛相談(強制参加型理不尽メンタル破壊作戦会議)を終えて急いでカフェまで直行して
受付についてからの最初の一声がそれだった。
めっちゃニコニコしてるけど目が笑ってないし変なオーラ出してるし、『私別に怒っていないけど?全然怒ってないけど今日のこと全部吐くまで帰さないからね』という確固たる意思を感じる。
でも今はそれどころじゃなくて
「いや別に仲良くお喋りしてたわけじゃない!ただただ土曜日の用事についてちょっぴり話していただけだって!!別に暴力もないし!そこまで重大なことを話していたわけじゃないし、九条さんの理不尽にぶち切れることなんてなかったし!!」
だいたい嘘だが本当のことも混じっている。
何がとは言わないが......
「私はね......一人で大変だったのよ......」
美玖は絞り出すような声で話し始めた。
「大変?きょう別に平日だし一人で十分に捌ける人数だとおもー」
「セイ目当ての客が多くて............」
「あ.......はい」
「『今日はあのかっこいい店員さんいないんですか?』とか『彼の入れるコーヒーが飲みたくてねぇ.......」とか『少年は休みかな?ラブコメの波動を感じないんだ』とか.......」
「はい......すいませんでした」
「架純ちゃんと長々と話していたのは正直気に食わないし、お客さんのことで色々と大変だったから今すぐにでも謝罪会見を開いて断罪されて欲しいんだけど......」
「は、はい.......」
「でもそれじゃあ可哀想だし......だから」
「だから?」
美玖はそういうと腕を大きく広げて俺の目をじっと見てきた。たまに見せるこの態度、どっちが本当でどっちが嘘なのかは分からないが正直俺はどちらでもいい。どちらの美玖も俺にとっては同じ美玖だからだ。
「お願い.......セイからギュッとして?」
「俺......から?」
「今日は私大変だったから.......ご褒美欲しいな」
「っ!.........」
考えてみれば、美玖が俺にスキンシップを求めてくることはあっても美玖がお願いして俺がスキンシップをすることは無かった。
俺からとなると妙に恥ずかしい気持ちが湧いてくる。
「で、でもお客さんが」
「そ.......そうね。ここだと目線が辛いわね」
美玖もやはり周囲の目線が気になったようで上げていた腕をゆっくりと下げた。当然だろう、何せピークは過ぎているといえどまだかなりの人数が店内でくつろいでいるからだ。
「で、でも......」
美玖は俺の隣にひょこっと移ると、俺の手を自分の手と掴んできた。
「な!お前.......」
「別にいいでしょ?昔はよく繋いでたんだし.......」
「昔って......いつのこと言ってんだよ」
俺たちが手をつないでいたのは小学生低学年くらいの時だ。あの頃はまだ俺の方が背が低かったから精一杯手を伸ばして美玖の手を掴んでいた。それを見越してかわざと背伸びしてきたのを覚えている。
「今も昔も......何も変わらないでしょ?」
そう言った美玖は手を繋ぎ直し、指と指が絡まりあうよう恋人繋ぎに変えてきた。
「なっ......おい美玖!」
「いいでしょこれくらい.......別に見えてないし」
カウンターは結構高めになっているので胸元くらいまでしかお客さんからは見えない。だから手元で恋人繋ぎをしていても誰も気づかないのだ。
「指まで絡めるのは......」
「これだけでいいから.......これだけで」
美玖は俺とは目を合わさない。だが微妙に手が震えているし、何となく美玖の体温が熱く感じる。それだけで勇気を出して行動してくれているのが良く分かった。
「分かったよ、美玖が甘えたいならそれでいい」
「............ありがと」
そうして俺たちは
バイトが終わるまで手を繋いでいた。
注文が来たとき以外ずっと
バイトが終わって名残惜しそうな顔をしながらも
手を放した美玖は
売れ残っていたアーモンドクッキーを取ってきて
いつものお礼ということで数袋くれた
後で調べたところによると
ナッツ系はストレス緩和や睡眠の質
の向上効果があるらしく
今の俺にはぴったりの食べ物だったらしい。
今日色々ありすぎて疲れてたけど
美玖のおかげで明日も何とかなりそうだ。
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