第24話 帰っていいよね!?

 俺の気持ちを良く考えてみてほしい


 全く知らない男から呼ばれたと思ったら

 聞いたこともない組織から謎に命令をされるわ

 ブヒブヒと人語を概して無い奴も居るわ

 最近の忙しさといい

 俺何かに取り憑かれているんじゃないだろうか?


 俺の朝の平穏を返せ、マジ頼む


「何だ.......そんなことか、」

「選ばれし人間が分からないのでしょう」

「ブ.........ブヒブヒ///」


「選ばれし人間?それが?俺から見れば『自分を豚と勘違いしている痛い奴』にしか見えないんだが」


「豚を馬鹿にするな!!豚は神聖な生き物だぞ!」

「そのとおり!豚を馬鹿にするのは許さない!」

「ブヒブヒ!」



「豚が神聖?宗教的な関係ってこと?」

 豚が神聖って言われてもパッと思いつかない。

 宗教的な問題で豚が神聖視されている国もあるが

 コイツらから宗教的な違いを感じない。


「彼は我らスレイブス内でも1人しかいない正式な豚認定をされているのだ。全団員が彼に羨望を抱いている、勿論私もだ」

「豚と呼ばれるなんて.......くぅ!羨ましいです!」

「ブヒィ////」


 豚に羨望?そんな事考える奴なんて

 ドMしか.......あ〜はいはい


「私も豚と蔑まれながらヒールで踏みつけられたいものだ。だがムチで叩かれるのも極上に近い」

「私は首輪とかされてみたいですね!四つん這いとか最高に気持ち良いに決まってます」

「ブヒィ!!ブヒヒヒヒ」


 ハァハァ言いながら興奮して体をよじっている。

 もう間違える訳がない、こいつらは


「お前らってドMの奴隷組だな?」


「奴隷組だと?そんな俗な言い方はやめてほしいね」

「そうだ、実に不快極まりない!」

「ブヒ!!!!」


奴隷組スレイブスってそういう事ね)

 本当はスレイじゃなくてスレイなんだけど


「我々がお嬢様の奴隷であるということを名前から誇ることが出来る......」

「身も心も服従スレイブする......最高の名前です」

「ブヒィ......ブヒブッヒ」


 本人達が納得してるからいいとして

 あともう1つ知りたい事があるんだよな


「豚が崇高なのは分かったけどよ、なんでソイツは豚になったんだ?自ら志願でもしたのか?」


 俺がそう言うと、筆頭奴隷3人はいきなり遠い空を見つめるような表情になった。


「あの運命の日は......」

「涙無しには.......」

「ブヒブヒ......っすね.....」



「お前喋れるじゃねぇか!!!!!」



「「「話の途中だろう(ブヒィ)!!」」」


「あっはい、すいません」


「そうあれは、日差しが強くて最高に気持ちいい日だった......」



(あっまだ続くのね)






 〜時は数ヶ月前に遡るのだ〜






「今日こそ!今日こそ俺たちを下僕にしてもらうぞ!」

「勿論ですよ!まだまだチャンスはあります!」

「そうっす!いけるっす!」


 我らはお嬢様の下僕になろうと日々アプローチをしていた。雨の日も風の日も休まずに


「これで何回目だ?」

「昨日で196回目なのでこれで197回目です!」

「放置プレイみたいで興奮するっすね!」


「「最高に興奮するな(します)」」


 その日のチャレンジは前日にこっぴどくお叱りを受けたせいかいつもより気合いが入っていた



(ええ.......ドン引き)


「今日はイける気がするな!」

「昨日のおかげで感度ビンビンでしたからね」

「昨日もお嬢様の顔写真付きの等身大人形を見ながら貞操帯付けて〇ったっす!」



 我らの感度コンディションは最高に近く絶好調、正に今日絶対下僕になれると信じて疑わなかった


(ええ........ドン引き)




「お願いします!お嬢様!我ら3人をお嬢様の下僕として扱ってくださいませ!」

「お願いします!お嬢様!我らは感度ビンビンなんです!」

「お嬢様!踏みつけてくださいっす!」



「お断りします、帰ってください」



 いつもの如く断られるが今日の我々がその程度で引き下がる訳が無い。勿論そのままアプローチを続行した


「お嬢様?その鞄私がお持ちしましょうか?、お返しはムチでお願いします!」

「お嬢様?それでは鞄で体が疲れてしまいます!どうか私の上にお座りください!」

「お嬢様!僕の体弄りたくないですか?最高っすよ?」



「良いです!結構です!早く帰りなさい!」


(ええ.......ドン引き)


 どれだけ逃げても我々は追いかけ続けた。高校生の服を着ているのに職質もされた。たがそれでも我らは止めなかった



「お嬢様!少しで!少しでいいんです!踏みつけて下さい!もし良かったらムチも!」

「お嬢様!もう夕刻です!私が明かりになりましょうか?」

「お嬢様!そんな怖い顔しないでくださいっす!ほら!ブヒブヒーなんちゃって!」



「あなた達しつこいわ!!踏みつけろ?ムチで叩け?私を何だと思っているの!?恥を知りなさい!!!」



「「「!!!」」」」


「あぁ!やってしまった......」



「「「ありがとうございますぅ♡」」」


(えぇ.......えぇ.....えぇ......ドン引き×3)



 久しぶりの冷たい言葉に我々は少しトリップしてしまった。それ程までに我々は飢えていたのだ


「久方ぶりの罵倒たまらないですなぁぁぁ」

「最高にハイって奴ですよぉぉおおお」

「ブヒブヒブヒィー!!!!」


「あなた達......救いようがないのね」


「「「!!いぃ♡最高です!!」」」



(ええ.......もう帰っていいか?)

(まだ聞け!ここからなのだ!)



「お嬢様!どうでしょうか!我々お嬢様の為ならば!火の中水の中進む所存であります!」

「椅子にでも机にでも床にもなれます!」

「豚が欲しかったらどうぞっす!俺がなるっす!」


「はぁ......もういいわ勝手にしなさい」


「「「!!......ということは!?」」」


「もう豚でも何でも私に関わらなければどうでもいいわ、それだけ守るならもうついてこないで」


「「「あっあっあっ.......」」」


「さようなら、と他の2人の人」


「「ありがとうございます!!!」」

「ブヒィィィィィィ!!!!!!」



 こうして我々はお嬢様の、希望していた下僕より更に隷属度の高い奴隷になることが出来たのだ!

(僕は豚になれたブヒ!)








 〜そして現在に戻る〜




「「「というわけなのだ(です)(ブヒ)」」」


「ええ.........ドン引きするわ」


 もうドン引きしすぎてついていけていない。

 スコア発表のお時間ですとか言われたら


 ドン引き×7!Good!

 よく頑張ったね!ハイスコアだよ!


 なんて出そうである。もう帰りたい。


「というわけで話がズレているが!」

「我々お嬢様の奴隷として!」

「ブヒブヒッブヒブヒィブヒィ」

 訳:お嬢様の周囲を舞う蟲は退治しなきゃならないっす!


「とりあえず俺は別に九条さんとは仲良くない、一緒に登校したがあれは手違いだ。俺は目線がキツくてさっさと離れたかった」


「それが嘘であれ本当であれお前には決定的な証拠がある」

「その通り、だから我々は許さない」

「ブヒィ!!ブヒィ!」

 訳:俺が喉仏噛みちぎってやるっす!


「証拠?別に何もしてないが」


「「「これだ!(ブヒィ!)」」」


 彼らはそういうと俺にスマホの画面を見せてきた。映っているのは......


「俺と中瀬さんね.......」


「そうだ!この横にいる彼女は黒の女神様だぞ!」

「お嬢様だけでなく女神様まで!」

「ブヒブヒィ!!」

 訳:これは重罪に当たるっす!!


「嘘か誠かも分からない情報で踊らされるのはもう痛いほど知ってるから!落ち着けって!ただの相談相手になってるだけだって!」


「信じられるはずがないだろう!お前のが出回っているのは知っているだろう!」

「裏付けするのには十分すぎる情報でした」

「ブヒィってんじゃないっす!」

 訳:しらばっくれるな!!


「はぁもういい「何しているのかしら?」よ......」




 この震え上がるような悪寒、鬼のような気迫......

 俺はゆっくりと振り返った

「九条......さ「あなた達何をしているの!」え?」


 そういうと九条さんは3人に近づき



「あなたにはこれね」


 懐からムチを取りだし......ムチを取り出し?

 振り上げてモブ1君の体にぶつけた




 バシン!!!!




「おひよぉおおおお♡」

 彼はまるで絶頂したかのような声をあげて倒れた。


「ええ.....なにこれ」



「あなたにはこれだったわね」



 鞭を懐に戻した彼女は次にモブ2君へ近づき


「きたきたぁ!!お嬢様!どうぞ!」

 壁に手を着いてお尻を高く持ち上げたモブ2君へ



 バシン!!!!



「あひいいいいいい♡」

 九条さんのそのモデルのように長い脚での回し蹴りを喰らわせた。


「最後は豚さんね」


「ブヒィ♡ブヒィ♡」


 彼女は豚君に近づくと

 何やら手招きをして座らせた


「豚のくせにだらしないわね!立ちなさい!」


「ブヒィィィィィィ!!!」


 四つん這いの豚君の上に座りふんぞり返っていた


「豚の癖に生意気ね!もっと役に立ちなさい!」

「ブヒィ!ブヒブヒィ!」




「え?何このカオス」


 俺は何も言わず教室へ戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る