第16話 悪徳商法!?


「ここは.......なんだ!?」


「お前知らないのか?立ち入り禁止区域だよ」


 俺らがいるのはこのショッピングモールの地下にある本来はアスレチックなどの遊び場が建設予定だった所だ。監視カメラもなくてちょうどよいのでここを選んだ。


 Q.なんでこんな場所知ってるかって?

 A.俺に教えた馬鹿オタクがいるからです。


「ほら?さっさと来いよ?塵共」


「「「「「ぶっ殺す!!!」」」」」


「お前らみたいな馬鹿をまとめて相手するのはそれこそ馬鹿だ」


 俺はするりするりと竜崎に元に向かう


「な、何だコイツ!???」


「やぁ、赤髪ってカッコいいよね系男子君」


「てめぇ!!!!!調子乗んな!!!」


 そのままワンツーなんて素人みたいなこと動きだったので普通に捌く、後は


「これで良いってこと」


「は!?」


 俺は伸びきった腕を掴んで前と同じように地面に叩きつけた


 ドォン!!


「ぐ.......ぇ..」


 コンクリートに全力でぶつけるだけでこうなる。

 柔術が一番こういう馬鹿共を制しやすい。


「お前二度とすんなよ?ブチ殺す.....だっけか?」


 俺は目の間で垂れる竜崎の横を踏みつけた。


「その言葉を俺の前で軽々しく使うな」


「は...........はいぃ........ぅう........」


 俺は竜崎から視線を上げた。連れの奴らは萎縮して動けていない。あまりにも一瞬すぎたからだろうか?


「なぁ?お前らはどうする?」


「「「「「「..............」」」」」」


「じゃあ、こいつのせいってことで終わりに」


「ざけんじゃねぇぞ!!!!!」


「ん?何まだやるの?」


「竜崎弟がやられたんだぞ!!黙っていられるか!!こちとら竜崎の兄貴に送り出されとんじゃ!ここで退けるかってんだ!!!!」


「そうだ!その通りだぜ!!」


「ああ!こんなやつが何だってんだ!!」


「お前ら行くぞ!!!」


「「「「「おぉぉ!!」」」」」


「無駄に主人公的なムーブやらないでくれる?」


「1人やったからって調子乗るんじゃねえ!!」


 いきなり1人突っ込んできた。腕の時計を見てもちょっと予定よりオーバーしているので早く戻らないとマズイ。


「もういい。お腹空いてきたし早く済ませるわ」




 3分後



「はい、終わり」


 10人いた暴漢共は一人残らず地に伏している。即落ち二コマ的なトントン拍子で倒れていったので思ったより骨がなかった。


「おい!お前ら意識あるよな?そこ並べ」


 意識がある奴を正座させ、ない奴は叩き起して正座させた。今俺を目の前に暴漢10人が横一列になって正座している。逆にイジメみたいに見えるからちょっと不安なのは内緒。


「で、お前らなんで俺を標的にした?」


「「「「............」」」」


「答えろ.......おい!海老反り頭!」


「は、はい!!!」


「お前にもう一度聞く...なんで俺を標的にした?」


「そ.....それは...竜崎の兄貴の弟が中瀬?って奴を取られたって言うもんで兄貴に報復の手伝いをしろって指示をされて.....」


「なるほどな」


「「「「...........」」」」


「ってなるか!!ふざけんな!!!」


「「「「ヒィィ!!!」」」」


「お前らのどうでもいい事のせいで俺以外にも迷惑してる人がいるんだよ!!!」


「「「「すいませんでした!」」」」


 俺の苛立ちを抑える様に息を揃えたように10人全員が土下座してきた。やっぱり俺がいじめているように見えるようで嫌だ。


「まぁそれはいい。お前らには体で反省してもらったし元々竜崎の自分勝手な行動が原因だからな」


「「「「........」」」」


「でもな.........発言を間違えてんだよ」


「「「「.........」」」」」


「ぶち殺すだっけか.....テキトーに言いやがって無責任な奴らだ」


「「「「.........」」」」


「お前らに為になること教えてやるよ。殺すってのは脅迫罪に当たるんだ。2年以内の懲役か30万円以下の罰金のどっちかがお前らに課せられる可能性がある」


「「「「.........」」」」」


「もちろんこれは証拠がなきゃ無理な話.....だが初めからをするのがわかっていれば十分用意はできるよな?」


「「「「!!!!」」」」


 俺は懐から録音が開始されているスマホを取り出した。これを見た途端コイツらの顔が青ざめていくのが分かる。


「お前らは揚げ足取りすぎなんだよ。特に何も考えずに発言しやがって......取れよ....」



 あいつらは取らなかったけどな



 俺の瞳にはガタガタと震える暴漢共の様子だけが映っているのではるか後方から俺らをひっそりと覗いている誰かさんの姿には気づいていなかった。





 ❖☖❖☖❖




「遅れてるな.....急ぐか」


 あいつらを教育した後は、脅すだけ脅してもう二度とちょっかいをかける事をしないようにキツく言っておいたのでお咎めは無しにした。まぁ面倒な処理は1人だけ残した奴に頼んどいたから大丈夫だと思う。


 それより問題は


 時間を取られすぎたこと


 一応トイレに行くと連絡はしたがそれ以降は一切送ってはいないので余計な心配をかけているかもしれない。誘った人間が心配させてはかっこ悪いだろう。


 しばらく走るとフードコートに着いた


「ふぅ.....着いた」


 俺は入口から近めの席にいるであろう中瀬さんを探した。


「あれかな」


 彼女は椅子に座って水を飲んでいた。

 机の上に昼食がないのは何故なんだろうか?


「愛梨〜〜!遅れてごめん!」


「へ?あ、あはは大丈夫ですよ〜」


 妙に反応がたどたどしく見える、まるで何か後ろめたいことでもあるかのように。

 それに少し頬も赤いし息も上がっている、走ることでもあったのだろうか?


「愛梨大丈夫か?頬赤いぞ?」


「え!?あぁこれは....熱い緑茶を飲んじゃって」


「机の上にはなにもないけど」


「えっえっと...すぐ飲んで捨てちゃったから....」


「なるほどね、でも悪いな待ってもらうなんて」


「いえ大丈夫ですよ......大変だったんですよね?」


「あ、ああ大変だったよ」


「それじゃあ早く昼食を買いに行きましょう」


「そうだね、行こうか」


 俺たちは席を立って店を巡り始めることした。



「こうして見ると本当に店が多いな」


「そうですね......ここまであると逆に迷います」


 心做しか俯いて何か考えているようにも見えなくもないが目を合わせるとすぐに明るい雰囲気に変わったので気のせいだろう。



 しばらく歩いていると興味深いものを見つけてしまった。


「な.......これは......」


「どうしました?どこをそんなに見つめ..........て」


『本日限定!!きつねうどん!!油揚げ二倍!!!数量限定!!!!』


 ない........絶対にこれじゃない


 これを昼食に選ぶことは博打にも等しい。俺が学校とカフェにて別人になっていることは言うまでもないことだが、彼女だけがどちらの俺にも関わりを持っていて俺が学校できつねうどんを食べている姿を見ているのだ。だからできるだけ俺を連想させるようなことは控えるのが普通.......だがそうじゃない。


 俺がきつねうどんを食べているのはコスパの良さに他ならなかった。しかし今ではきつねうどんの深淵に触れてしまい日常生活まで侵食された。つまり何が言いたいかというと


 きつねうどんは大好物イレギュラーなのだ


 正直中瀬さんが居なかったら一択で食べていた、だが今回はその中瀬さんがいる。博打してまできつねうどんを食べるのはリスキーがすぎる。


 俺は唇を噛みながらうどん屋から踵を返して別の店を探しに............ってえ?


「このきつねうどん美味しそうですね!油揚げも二倍だなんてお得で!美味しくて!!」


 なんか袖引っ張られたと思ったらまさかのセールス。いつの間に回し者になったんだ中瀬さん、目が血走ってるよ。


「え?美味しそうだけど今は別に.....」


「うどん想像よりずっと美味しそうですよ!ほら!食べたらすぐハマっちゃうと思いますよ!」


「だから別に.......」


「ほら!!!!数量限定!!!!」


「だから..........」


「食べたいですよね?そうですよね!!」


「ちょ聞いて」


「食べたいって言うまで動きませんから!!!」


「...................食べたい」


「それじゃあ並びましょう!!!」


「はい.............」


 こうして俺は顔が可愛くて質の悪いキャッチセールスに捕まってしまった。


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