第15話 またか!?

 中瀬さんの激昂が土下座やらなんやらを経て冷静になったところであの女の子達と別れた。

 彼女もさっきのことを引きずっているようで、少ししおらしくなっていた。


「すみません....折角のデートなのにいきなり幻滅させるようなことしてしまって」


「気にしなくていいよ、原因は俺だしね。それに幻滅だなんてしないよ?それだけ想ってくれているのが分かるからね」


 彼女は俺の言葉を聞いて恥ずかしかったのかそっぽを向いてしまった。だけど照れているのがバレバレなんだよね、耳が真っ赤に染まっているし。


 だから少しイジメたくなる。俺はそっぽを向いている彼女の傍に近寄って耳元に息を吹きかけた。


「ふぅぅ〜」


「ひぁぁぁあああ!!」


 顔を真っ赤に染めながら何か言いたそうにモジモジしている様子は普段の彼女じゃ考えられない。

(ガチで惚れてるんだな..........俺に.......)


「な、ナニをするんですか!!セイ君酷いです!」


「いやぁ、可愛かったから....ってこれは話しかける為の口実で、本当は仕切り直しをしたかったんだ」


「仕切り直し......ですか?」


「ああ、ちょっと白けちゃっただろ?だから今出会った想定ということで」


「なるほど............良いですね!」


「じゃあ言わせてもらうけど.......服似合ってる」


「ほ、本当ですか!?」


「うん、とっても可愛いし大人っぽい」


「悩んで選んだ甲斐があって良かったぁ......」


 今のは冗談でもお世辞でもない。確かに似合っている。いつものストレートな黒髪をお団子に纏めており綺麗さよりも可愛さが勝るようになっていた。そして黒のぴっちりとしたワンピースとサイドレースのピンクのスカート、黒タイツが可愛さに大人っぽさを加えていた。


「そういうセイ君も似合ってますよ?」


 今日の俺の服装は白の無地Tシャツに黒ジャケット、ジーンスにスニーカーという特に特出すべきものは無い無難な服装だ。安定に勝るものはない。


「でも、私的には...........そうだ!」


「何か思いついたの?」


「ここでセイ君の服を買いましょう!ついでに私の買う服も選んでもらいますけど」


「え!?まぁ俺はいいけど」


「じゃあ早速行きましょう〜!」


 彼女はそう言うと上機嫌に腕を絡ませてきた。俺が驚いて下がろうとするもギュッと挟み込まれていて離す気がないのが分かる。


「これくらいは良いですよね?デートなので」


 澄ました様に言う彼女だが顔が真っ赤なのが丸わかりだ。つくづく顔に出る人だなと俺は苦笑した。


「ああ、行こうか」


 右手に感じる柔らかい感触を噛み締めながら俺達は歩き出した。





 ❖☖❖☖❖



 一通りの買い物を済ませた俺たちは今昼食を食べにフードコートへ歩いている。


 購入した服を自宅に送ってもらう際、住所を書こうとするところを横から彼女が目を見開きながらガン見していたので、俺が記入を終わるまで外で待ってもらうことにした。何故か彼女はぶーぶー言っていたが流石に住所をバラすのは確定身バレルートに突入するので無理なもんは無理と断った。


「ぶーぶー」


「いつまでそうしてるんだ?愛梨?」


 さっきの買い物中にそう呼ぶことに決まった。同じクラスの女子を呼び捨てで呼ぶのは慣れてないので結構照れる。


「私はもっと親密な関係になりたいんですぅ」


「唇を尖らせても何もないからね?」


「でもぉーーー」


「それじゃあ早く昼食終えて時間を有効に使うのはどうだ?」


「大賛成です!さぁ早く歩いてセイ君!」



「あはは、やる気スイッチ押しちゃったかな。まぁ楽しそうだから良いんだけどね」






 そうここまでは良かったんだ。


 少し未来の俺から言わせると


「お前やりやがったな」


 って感じ


 そもそもフードコート回って自由に好きなものを買おうだなんて言ったのが間違いだった。というかフードコートをみたいな広くて見通しが良い所を選んだこと自体が間違いだったかもしれない。


 そんな今の状況を簡単に説明すると


 中瀬さんが俺をしている中、俺がを食っている


 というものだ。

 何故こうなってしまったのか?

 ことの発端は数十分前まで遡る。



 <数十分前>



「よし、じゃあ.....あそこの席に座ろうか」


「賛成です!」


 ここのフードコートはチェーン店が多く揃っていてハズレがない。こういう何を頼んだら良いのかわからない時役に立つ。◯ックとか◯亀製麺とかが特に便利だ。


 俺達は手短にあったテーブル席に腰をかけた。対面に座る感じなので、お互いの顔がよく見える。


「こんなこと夢みたいです」


「夢?二人で食事すること?」


「いえ、それもそうなんですが、セイ君と二人でデートしてお買い物をして一緒に食事もできるってことが、本当に........本当に嬉しくって」


「まだ途中だよ?今は楽しむ時間に回そうよ?」


「はい、分かりました!」


「それじゃあ.......愛梨は何が食べたいの?」


「私はなので軽い物ならなんでも大丈夫です」



 何を言っているんだろうか?この人は?

 いつも超高カロリーなメニューを3人前とか食ってる癖に少食?

 絶対後で足りなくなっておやつおやつおやつって末期症状が出るパターンだろ?


「...............ぅぅ」


 いや声漏れてるし、我慢してるのバレバレかよ


 こうなったら.............


「少食?ははは、嘘でしょ?それ」


「ギクゥ!なんで分かったんですか?」


「普段受付やってると目が肥えるからってのもあるけど.....」


「あるけど?」


「今日は君だけしか見えてないからね?」


「...........はい///」


「だから遠慮しないでたくさん食べて?君がおいしく食べる様子を見ていたいし」


「じゃあ私!色々頼んできます!!」


「切り替わり早いね」


「では、またこの席で〜!!!」


 ちょっとキザすぎること言ってしまったことで心のダメージが深刻だが、彼女が嬉しそうな顔で店を巡っているので無茶してよかったと思っている。


(正直あんなイケメン風意識して言ったの始めてだからな、超恥ずかしかったし)


 まぁそのことは一旦置いておいて







「おい?ストーカー、食事の邪魔だから消えろ」


 俺は後方に向かってそう言い放つ。すると先程までにテーブル席に座っていた中の1人がここに歩いてきた。


 そいつは被っていた帽子を取ると俺を見下してきた。どこかで見たことのある顔と特徴的な赤色の髪。


「よぉ?イケメン君デート楽しんでるか?」


「竜崎..............」


「ん?俺を知っているのか?別にお前に知られても嬉しくもないがな」


 なんでコイツがここにいるのかは分からんが恐らくこのデートを邪魔しにきたんだろう。


「いやぁ愛梨がお前のことベタベタ気持ち悪い赤髪男って言ってたから覚えてたんだよね」


「ああ???舐めすぎだろ大概にしろや!!」


「何を舐めるんだ?お前どこ舐めさせる気だ?キモいなお前」


「よくもまぁこの状況で減らず口叩けるもんだ。感心するわ....」


 竜崎は後ろに指示を出すとぞろぞろとテーブル席のやつらがこちらに歩いてきた。


 結構人数いる......10人くらいかな?


「コイツらは全員お前に恥かかせるために連れてきた喧嘩慣れした奴らだ。お前みてぇなヒョロガリなんてサンドバックの代わりにすらならねぇよ?」


「何言ってるのかさっぱりわからないがお前らは絨毯ってことだろ?」


「は?何言ってんだお前?」


「だから、お前らが俺たちの絨毯になって上歩かせてくれるんだろ?」


「てめぇ、この状況でよくそんな口聞けるな!!!ブチ殺すぞ?」


「わざわざその言葉を言うとはな......」


「あ?」


「お前らついてこいよ、教育してやる」


 俺は自信たっぷりにそう言い放つ


 この時の俺は後ろに気がついていなかった




「あれ?竜崎君?なんでここに?」


 

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