第14話 逆ナン!?
「っと待ち合わせ時間30分前、ここらへんのベンチで待てばいいか」
俺は久しぶりに気合が入った服装で来ていた。今回はただのデート(親睦会)といえど小学生を除けば始めてのデート、力が入るのは仕方がない俺も男なのだから。
中瀬さんが待ち合わせで指定したのは天乃原駅近くのショッピングセンターの前、まだ午前中だがやはり休日、結構人が多く同じ様に待っている人が何人もいた。その中には俺をチラチラ見てくる人もいるがそこは気にしないと決めている。
「まさか午前中からとは....普通はこうなんかな?」
経験の無い俺ではこの時間が一般的なのかどうかもわからない。今更ながら俺の内向的な性格はこういうところでもマイナスになる。
「はぁ.............」
「「「キャー!!!」」」
「え!?」
いきなり声がしたので恐る恐る視線を上げた。
「ねぇ!こっち見てるよあの人!!」
「うん!今ならいけるんじゃない!?」
「誘ってみよ!!3人で囲もうよ!」
先程の悲鳴をあげたのはまさかの三人の女の子。会話的に俺を誘う気なんだろう、確かこういうのを逆ナンって言うんだっけな。お気持ちはありがたいんだが今日は別件なんでやめてほしい。
少しずつ近づいてくる女の子達、少しずつ離れる俺。そんなやり取りがしばらく続いて
「もう下がれない...後ろは壁だ........」
もう俺には逃げるところがなくそのまま向かってくる女の子達を眺めることしかできなかった。
完全に包囲されたタイミングで女の子達の1人が俺に駆け寄ってきた
「こんにちは、カッコいいお兄さん」
「こんにちは.......何か用なのかな?」
「ちょっと私達と一緒にデートしませんか?」
「生憎だけど知人と会う約束をしているんだよね。だから下がってもらえると嬉しいんだけど」
「まぁまぁそう言わないでください。私達結構人気あるんですよ?人気の3人を独り占めって男の夢じゃないですか?」
「気持ちは嬉しいけど今は待ち合わせ中なんだ」
「むむ、つれませんね......こうなったら........」
え!?何しようとしてるのこの子達!?後ろの2人が近づいてきてるし何かする気なんじゃ......
「へへ、私こういうことするのは始めてですが....」
「仕方ないもんねぇ....おにーさんが悪いんだよぉ」
「私...始めてで緊張しますけど....がんばります」
「え?なぁちょっと落ち着こうよ」
「「「嫌です!!」」」
やばいって、俺もさすがに女の子に乱暴な真似はできない。どうするべきか......いやここはあえて
「いいよ、一緒に行こう」
「「「やったぁ!!」」」
「ただし30分間だけ、これが条件だけどいいかな?」
「私はいいですよ」
「私はもうちょっとほしいけど我慢します」
「私は何時でも大丈夫です」
「よし、それじゃあカフェでも寄ろうか?」
「「「はい」」」
すまん中瀬さん.....待ち合わせまでには終わらせるから!
❖☖❖☖❖
「それでどうして俺を誘ったんだ?」
ショッピングモール一階に位置するカフェのテーブル席にてコーヒーを飲みながら俺は質問をした。
「私達3人いつも一緒に行動してるんですけど、学校でも外でも変な男ばっかり寄ってきていつも嫌な思いをしてたんです。でもあなたを見た時にこの人は大丈夫だって思ったんです。なぜかはわからないけど」
「こんな機会めったにないし、何かの縁かもしれないし、どうせなら行け〜!って結論になりました」
「そんな私達の都合に時間を取らせてしまって本当にごめんなさい!」
「「「ごめんなさい!」」」
「う、うん良いよ。俺は気にしてないから」
「「「ありがとうございます」」」
俺の一言二言聞いてワイワイしてくれるのは嬉しいんだが、こっからどうしよう。とりあえず色々聞いておけばいいか
「君たちって中学生?」
「はい中学生です。でもよく分かりましたね?これでも結構大人っぽいって言われるんですよ?」
「いつも人を見る仕事をやってるからかな?」
受付だから色々と目が肥えるんだよな
「お兄さんって何かやられてるんですか?」
「まぁバイトっていうかカフェで受付とかやるから自然と目が肥えるんだよね」
「お兄さんの働いているカフェ行ってみたいです」
「私も行ってみたい!」
「私も都合が合えば行ってみたいですね」
「俺の働いている姿見ても何も面白くないぞ?」
「そんなわけ無いですよ。お兄さんモテそうだし、ただお兄さん見るためだけに来てる人とかいるんじゃないですか?」
「ははは、カモネ」
「待ち合わせされてる人って女性の方なんですよね?」
「ああ、そうだけど」
「どこで知り合ったんですか?」
「............バイト先だな」
「ほらーやっぱり引っ掛けてる!」
「お兄さんって........」
「バイト先での出会いですか.....」
「勘違いしてそうだけど別に俺は付き合ってはない。ただ誘われただけだ」
「へぇーじゃあ言い寄られてるってことですか?」
「まぁそうだな、でも付き合う気はないよ?」
「相手の子タイプじゃないとか普通に好きじゃないとかそういう理由ですか?」
「いや彼女は超絶可愛くて性格も良い人だよ」
「付き合わない理由がないじゃないですか」
「俺はしばらく彼女を作る気はないんだ。例え言い寄られているとしてもね」
「.........私分かった気がします。なんでお兄さんには嫌な感覚がなかったのか」
「え?分かるもんなのそういうの?」
「お兄さんは完全に一線を引いてるんですよ。付き合っている付き合ってないの境界線をしっかり分けて行動を割り振ってるんです。だから私達は変な手を出されることも警戒しなかったんですよ多分」
「最後の一言で信憑性薄まったけど、一線引いている....か」
”一線を引いている”
この言葉がまるで喉に絡まった痰のように残り続け、俺の脳内を這いずり回っていた。
❖☖❖☖❖
「本当にありがとうございました!お願いしたのはこっちですけど連絡先も交換できて嬉しいです!」
「私も交換したかったよぉ」
「私も欲しかったな」
「へへっ!じゃんけん勝ったのは私だから!」
なんで俺の連絡先が景品になったんだろうか......あれよあれよすぎて覚えてない。中学生のテンションに追いつけない.......
「そろそろ時間なんじゃないですか?お兄さん」
「ああ、カフェに寄る時にここにいるって連絡しておいたから多分すぐ」
「セイ君〜〜!!!おはよ〜〜!!」
「っと噂をすれば」
「ごめん、ちょっと待たせ.............誰?」
「あ、まず」
なんか中瀬からオーラみたいなものが見える気がする。気のせいであって欲しいんだけど。
「ねぇねぇセイ君......別に悪いようにはしないから教えてほしいんだけど..........その女達は......何?」
やばい前見た時の堕天オーラより禍々しい!命名するなら怒天オーラというべきか
「まさか私とのデートがあるっていうのに他の子とイチャイチャしてたわけじゃ.......ナイヨネ?」
やばいぞ......オーラが黒になった。
早く誤解を解かないと....
「いやこれは!」
「違いますよ!私達が誘ってそれに応えてくださっただけで別に何もしてません!連絡先とか交換しただけですから!」
「あ?セイ君....レンラクサキッテ.......ナニ?」
「えっ........それは....」
「お説教だよ?セイ君」
俺はその場で土下座した。
その後、我に返った中瀬さんに色々謝られたが俺は普通に許した。
うん....中瀬さん.....怒らせたら駄目だ
❖☖❖☖❖
<同時刻>
「あれは...........中瀬?一緒にいるのは前陰キャ眼鏡が言ってた好きな人ってやつか?」
偶然ショッピングセンターに来ていた彼は前好きだった知り合いの顔を見つけた。
「丁度いい、恥かかせてくれた仕返しはあのイケメン野郎に払ってもらうとするかぁ」
彼はスマホを取り出し迷いなく電話をかけた。
「兄貴、ちょっとシメたいやつがいるんだけどよ人寄越してくれねぇか?」
『いいぜ、いま暇してる奴ら寄越す。やるからにはしっかりボコしてけよ?』
「ああもちろん、取られた八つ当たりだからな」
電話が切れ彼は笑う。
その笑みは二人に注がれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます